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病院の事業承継事例/このまま出資金を持分放棄するのは、ちょっと待ってほしい。

2018.05.28

金融機関からのご紹介で、渡井は医療法人Y会の理事長とお会いすることになりました。理事長は75歳、まだまだ承継には早いからと、これまで医療法人の出資金対策など考えたこともありませんでした。しかし70台も半ばに差し掛かり、さすがにこのままではまずいと周りが心配し始めた矢先、新認定医療法人の話を耳にしたのでした・・・。

 

医療法人の事業承継。問題が表面化するのは、理事長が亡くなった後。

渡井はスピーディーに話を進めるため、事前に金融機関を通して必要データをお預かりして、簡易診断を行いました。

内部留保が多く、出資金の評価額はかなり高額となっています。このような状況になるまで対策が行われてこなかったとは、にわかには信じられませんでした。

税理士の矢野とともに長い廊下を抜けて応接室に通されると、理事長のほかに、奥様、息子さん(後継者)、事務長が勢揃いされています。問題を重要視されていることが、よく分かりました。

一通り挨拶を済ませると、さっそく矢野から無料診断の結果を報告しました。

理事長に万一のことがあれば、相続税は5億弱。親族にも出資金が一部分散しており、払戻請求をされるリスクもあります。

そして、それらの問題が表面化するのは、理事長が亡くなった後。相続税を払うのも、出資金の払戻請求に対応するのも、理事長ではなく、奥様と息子さん(後継者)なのです。

 

事務長の手に余る、医療法人とオーナー家との取引適正化。

自分が当事者だと言われて、奥様は言葉を失いました。

「相続税の話は聞いていましたが、そこまでとは思っていませんでした。なぜ、いまになってこのような話が振って涌いてくるのですか?」

息子さんが、口を開きました。

「母さん、うちは長生きの家系というのが、親父の口癖だからね。承継はまだまだ先の話、対策も後手に回ったのかもしれない。ただ、言い方を変えれば、これまで対策をしてこなかったからこそ、認定医療法人が活用できる。矢野さん、そうですよね。認定医療法人になれば、問題は解決できるのですよね?」

「制度が創設された目的は、全くその通りです。しかし、要件があります。その要件を、申請時だけでなく6年間維持し続けなければなりません。」

新認定医療法人の要件については、すでに事務長が調べておられました。

しかし調べていくうちに、これは自分の手に余ると判断されたようです。「法人関係者に対する特別の利益供与の禁止」はじめ、医療法人とオーナー家との取引を適正化しなければならないからです。

渡井からは、新認定医療法人のデメリットを、かなり詳しく説明しました。

「新認定医療法人を活用して持分を放棄するということは、医療法人の財産は創業家のものではなくなるということです。要件を満たすために、理事長報酬や非常勤役員への報酬の見直しはもちろん、場合によっては不動産の所有形態を見直したりしなければならない場合もあります。退職金も自由に支給はできません。規定に則って支給しなければなりません。意思決定機関を同族で固めることが出来るので、実質、オーナー経営ができるわけですが、代々、一族から理事長となるドクターを輩出していかなければならないでしょう。」

 

物心ついたときから、親父は家族を顧みず医療法人のために尽くしてきた。

息子さんの意見は、明白でした。

「医療法人が創業家のものだとは、これまで思ったこともありません。むしろ親父は、私が物心ついたときから、家族を顧みず医療法人のために尽くしてきました。出資持分を放棄することに、なんの躊躇もありません。」

奥様も同意されます。

「息子や孫たちの代には、仕事と家庭は分離できたほうがいい。そうでなければ誰も跡を継いでくれないと思うのです。それに、持分を放棄すれば、孫たちの中にドクターが2,3人出てきたときにも、財産を分けやすくなると聞きました。」

「医療法人で新しく診療所を開設して、それを分割する、という意味でしたら、おっしゃるとおりです。」

「将来まで見据えたら、持分を放棄するメリットのほうがはるかに大きいと、私は思います。」

理事長は黙って話を聞かれています。

次のステップは、予備調査。要件を満たすためにどのような整備が必要か、詳しく現地調査を行うのです。

日を改めて専門家を伴い、ヒアリングや現地調査を行うことにして、その日の打ち合わせは終了しました。

 

このまま持分放棄するのは、ちょっと待ってほしい。

予備調査が始まって2ヶ月が経過。

スキームとスケジュールの青写真が出来上がってきました。

ある日、主要メンバーとの打ち合わせが終了した後、渡井は理事長から呼び出されました。

「渡井さん、申し訳ないのですが、このまま持分放棄するのは、ちょっと待ってほしい。」

突然の心変わりでした。

 

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