2019.02.05
相対的に物事を捉える
NKGRコンサルティング株式会社 執行役員 藤原ますみ
世の中が変わり、大きなパラダイムシフトが起こる
2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博。
世界的イベント開催国として、我が国は今後数年間で、大きなパラダイムシフトが起こると予想されています。
また、働き方改革の施行に伴い、若い人たちの働く事への意識は大きく変化していくことでしょう。
大きな時代のうねりの中で、私たちは世の中の変化に対して、どのような自分であればいいのでしょうか。
「相対的に物事を捉える」自分でありたい
私は、「相対的に物事を捉える」自分でありたいと思います。
相対的、とはどういうことでしょうか。
辞書的に例えれば、人事評価70点のAさんが、全員80点のチームの中にいます。相対的に考えると、評価できない人材です。
しかし、40点のBさんは全員30点のチームの中にいます。相対的に考えると、最も評価が高くなります。
相対的に考えるということは、そういうことです。
チームに恵まれた(?)ために、AさんよりもBさんが評価されることになります。
これはおかしな話です。ですので、人事評価においては、相対的に評価するのではなく、絶対的に評価することになっていると思います。
しかし、そもそも人が人を評価するとき、「絶対的な評価」など、できるのでしょうか。
世の中の評価とは、常に相対的
私はここで、松下幸之助氏の言葉を思い出すのです。
幸之助氏は、ご存知のとおり「世間は正しい」という言葉を遺されました。
これは、どう見ても相対的な評価です。
実際にお客様からの評価、周りの評価、世の中の評価とは、常に相対的です。
「そういうつもりではなかったのに」とか、「こんなに努力しているのに」とか思うシーンも、あるかもしれません。
自分に対する評価と世の中の評価に乖離があるとき、私たちはそれをなかなか受け入れることができずに、ときに懊悩します。
チームの中での評価にモチベーションを左右されるのは、
人生の無駄遣い
ところで、チームの中で、Aさんは評価できない人材です。チームの中で、Bさんは評価される人材です。
しかし、「世間」から見たときにはどうでしょうか。
世間から見たとき、それぞれのチームの中での評価は、意味を成しません。
BさんよりもAさんのほうが頑張っていることは、世間は分かっているのです。
でも、日本中、世界中には、Aさんよりも更に頑張っているCさんがいるのです。
世間はAさんさえも評価しません。Cさんを評価します。
世間を判断基準に置くとは、そういうことです。
チームの中での評価にモチベーションを左右されていても、そんなことは、人生の無駄遣いです。
目指すのはAさんでもBさんでもなく、Cさんなのです。
その分野で一目置かれる存在になること。
それでも評価されなければ、一流と呼ばれる存在になること。
この人と仕事をしたいと思わせる人物になること。
惜しまず協力してくれる仲間の期待に応えること。
世間が評価するようになれば、チームや会社での評価など小さな問題です。
恐れや不安に囚われるのでなく素のままの謙虚な姿で打ち込みたい
幸之助氏の遺した「世間は正しい」をもう少し詳しく紐解くと、次のように遺されています。
「長い目で見れば、世間は正しいものは正しいと必ず受け入れてくれる」
「恐れず安心して、正直にまじめに、まっすぐ仕事に打ち込めばよいのです」
この言葉に、私は幸之助氏の、働く人への限りない愛情を感じるのです。
確かに、世間の評価は相対的かもしれない。
しかし、恐れずにまっすぐに打ち込めば、長い目で見れば、必ず世間は受け入れてくれる。
自分にとっての「世間」が大きければ大きいほど、歳月の試練を受ければ受けるほど、「相対的」な評価は、「絶対」なものになります。
これは、働く人の評価だけではありません。経営にも当てはまります。家庭の幸せにも当てはまります。教育にも当てはまります。
自分の中の恐れや不安に囚われるのでなく、素のままの謙虚な姿で打ち込みたい。
働く仲間に、そのような成長を願って、接したい。
そのような努力が評価される世の中を実現したい。
一人ひとりが会社からの評価でなく、世間からの評価に目線を持ったとき、そのような一人ひとりを方向づけられるマネジメントとは、果たしてどのようなものか。
私はここに、一人ひとりの働き方、一人ひとりの人生を実現する組織や社会のマネジメントの、大きな可能性があるのだと信じたいと思います。
本稿の執筆者
藤原ますみ(ふじわら ますみ)
NKGRコンサルティング株式会社 執行役員
クリニック・病院・社会福祉法人の財務会計に従事し、有料老人ホームの立ち上げにも参画する。現在は、病院の財務・管理会計の導入を通じた経営改善も担う財務のプロフェッショナル。公的機関主催の研修でも講師を多数務め、数字に苦手な受講者でも「今までで一番分かりやすかった」と、絶大な支持を得ている。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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