ケアの基準書作成に舵を切り、介護職員のモチベーションアップを実現した事例

今のままでは、努力が報われず空回りする

久しぶりに電話を頂いて訪問したコンサルタントの沼田は、A理事長の初めて見せる弱気な発言に、驚かされました。

理事長:「ご存知のとおり、創業以来これまでずっと、私はトップダウンで皆を引っ張ってきました。次々と事業を拡大し責任を持たせることで、幹部や現場の成長環境を創ってきたつもりでした。しかし組織も大きくなり、人の入れ替わりがある中で、そのやり方には限界があるような気がしてきました。」

沼田:「そう考えるようになったきっかけが、あったのですね?」

理事長:「ともかく人が採用できない。無理に採用して、一年もしないうちに三分の一が入れ替わってしまう。なんとか踏ん張ろうとする中堅・ベテラン職員と、少しでも条件のよい職場があればさっさと移ってしまう新規入職の職員との間に、大きな溝ができている気がしてならないのです。」

沼田は、黙って出されたお茶を口にしました。

理事長:「これまで繰り返し職員に語りかけ、理念を共有し、去っていった者も多かったが、残った者がその理念に共感してくれていたからこそ、私たちの法人は成り立ってきました。しかし、これは処遇改善や働き方改革といった政策の影響も大きいと思うのですが、採用がうまくいかないことが続き、私たちが最も大切にしてきたことが、いまや足枷のようになって、報われない努力、空回りを生んでしまっているように思うのです。」

強気な発言が多かったA理事長の変わりように、沼田も問題の深刻さを理解しました。

職員の入退職データを預ると、日を改めて提案にお伺いすることとして、その日は一旦、事業所を後にしました。

入退職のデータを分析し、沼田は一つの仮説を持って、再びA法人を訪れました。理事長のほかにも、人事を担当するB課長にも同席していただきました。

沼田:「頂いたデータを分析すると、典型的な傾向が見られました。」

沼田の言葉に、理事長とB課長は顔を見合わせます。……

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