コンサルタントの視座・着眼「両親への親孝行」

2019.09.05

本当に価値ある仕事とは何なのか

株式会社 日本経営ホールディングス 専務取締役 銀屋 創

岐阜県の益田郡、畑仕事をしている両親

若くして両親を亡くした私ですが、結婚後は、妻の両親が実の父母のように接してくれ、本当によくしていただいています。

岐阜県の益田郡、現在は町村合併で下呂市になっているのですが、両親はそこで畑仕事をしています。

畑で採れたての旬の野菜が送られてきて、我が家は常に新鮮な野菜で一杯。仕事で出張のときには、私は一人でも訪れて、何の気兼ねもなく泊まらせてもらったりしています。

息子たちも緑や清流に囲まれた実家に帰るのが大好きで、盆暮れには毎年のように帰っていたのですが、大きくなってくるとクラブや学校行事が忙しく、昔のように皆が揃って集まることは難しくなってきました。

そういうわけで、私はWi-Fiのルーターやモバイル端末を購入しました。そこにSkypeやクックパッド、それからいろいろなゲームのアプリをインストールして、両親にプレゼントすることにしたのです。

初めてテレビ会議が繋がったときの反応は感動的でした。

妻も両親もそれはそれは喜んでくれて、今ではしょっちゅうテレビ電話で会話をしています。

別府に住む長男と繋げば三世代で会話ができますし、住んでいるところは違っても、我が家は十分なコミュニケーションができていると思うのです。

新しいお客様にも、Web会議システムでプレゼン

職場でも札幌・東京・大阪・福岡の各拠点はテレビ会議で繋がっています。最近ではこれを大きなモニター越しに繋ぎっぱなしにして、一つの職場のように運用しようという話もでています。

部下にスケジュールを聞いても、「午前中はお客様とテレビ会議です」などと言われたりしますし、移動中の社員と空港のゲートラウンジで簡単なテレビ会議をすることも少なくありません。

沢山のメンバーが会議に参加するような事業部では、テレビ会議のカメラを魚眼レンズにして全員の表情がモニターに映るように工夫したりしています。

最近では、初めてお会いするお客様にも、Web会議システムでプレゼンするようになってきました。画質も音質も高品質ですし、何よりもスケジュール調整がし易く、ご好評いただいています。

プレゼン内容はそのまま動画撮影できるので、ご質問いただいた内容も動画そのまま生の声で、上司や他部門の専門家に連携することができます。

忙しいという仕事の中身を分析する

何年も前の話になるのですが、私たちの職場では、自分の一ヶ月の投下時間が何に費やされているのか、本部から分析レポートが出されていた時期があります。

私は新入社員のときから、その分析をかなり熱心に研究していたのですが、ハッキリと分かったことがあります。

それは、「月間の投下時間の実に3割は、交通時間に費やされている」ということです。そのほかにも会議やドキュメント作成などがあり、お客様のコンサルティングに直接投下している時間は、3割ほどしかないのです。

コンサルティングという仕事は、現場から現場へ飛び回り、休みもなく働き続けるというイメージがあります。しかし、忙しいという仕事の中身を分析すると、移動時間や会議・ドキュメント作成に時間を取られていることが少なくありません。

日本の労働生産性は、 OECD加盟諸国の中で平均を下回ると言われたりします。

それは、成果をみて効果的な選択や決断ができてないことが原因のひとつだと感じます。過去からのものを維持したまま、そこに良さそうなものをドンドン追加していく。

街中いたるところに24時間営業のコンビニがあるのが典型です。

24時間営業が便利だった時代は確かにありましたが、生産性も上がらず人手不足に陥っている今日、「やめる」のか「減らす」のか「変える」のか。業務の効率化はこの3つしかないのであって、早晩、選択を迫られることになるに違いありません。「便利さ」か「生活の質」なのか?

そして、それはコンビニだけの問題ではなく、あらゆる業種において問われていることです。

「本当に」価値ある仕事とは何なのか

現場は明らかに変わり始めています。

皆が一堂に集まること。多くの時間を投下して、同じ時間を共有すること。目と目を見て、お互いが納得できるまで議論すること・・・それはそれで、価値あることだと思います。

しかし、一方で、世の中はすでに別の方向に向かっているということも、受け入れる必要があります。

私たちが今後考えていかなければならないのは、「本当に」価値ある仕事とは何なのかということです。

「本当に」価値ある仕事とは、一つには「技術」かもしれません。

しかし、世の中を大きな発展に導く「技術」とは、「再現可能なもの」を言います。

高速エレベーターにせよ、ウォシュレットにせよ、耐震技術にせよ、コンサルティングにせよ、「●●さんにしかできません」では広がりようがありません。

そして、「再現可能」な「技術」の多くは、再現可能であるが故に人間が行わなくても別のものに代替できる可能性があります。それでいいのです。イノベーションは、そのように生まれてきたのだと思います。

では、人間にしかできない「本当に」価値ある仕事は、何なのか 。

私はここに、働き方改革の本質があるのだと思います。

多様性が増して求心力を高めづらくなっている組織において、そこで働くメンバーにどのようなビジョンを発信するのか。

それは、「自分たちの価値ある仕事は何なのか」、「お客様にどのような価値を提供するのか」と問い続けることにに答えがあるのだと思うのです。

本稿の執筆者

銀屋 創(ぎんやはじめ)
株式会社 日本経営ホールディングス 専務取締役

1993年入社。医療機関の会計・財務コンサルタントを経て、病院経営コンサルティングの事業化を担う。2006年九州大学医学系学府医療経営管理学修士修了。グループ全体の全国展開、再生・M&A事業などを立ち上げ、2002年より東京支社に移動。2016年には東京支社長として東京支社移転。メディア事業・実業の開発・システム開発などを統括する。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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