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介護施設の収益改善 経営健全化に向けた実践的アプローチ

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

高齢化が進む中で、介護施設の需要は増加していますが、その一方で運営コストの上昇や人材不足といった課題も深刻化しています。
このような状況下で、いかに収益改善し、経営を健全化するかは、施設の将来を左右する重要なテーマです。本記事では、介護施設の収益改善に向けた実践的なアプローチを紹介します。

「現状分析」で介護施設経営の真の姿を知る

経営の舵取りを行う上で、まず最も大切なのは、自施設の現状を正確に把握することです。

どこに向かって改善すれば良いのか、その道筋すら描けないからです。現状分析は、あたかも健康診断のような役割を果たします。外部環境や内部環境、財務状況、さらには職員構成など、さまざまな側面から自社の状態を多角的に調べることで、事業の「強み」と「弱み」を客観的に明らかにすることができます。

例えば、地域の人口推移を分析することで、将来的な利用者獲得の可能性を把握できるだけでなく、短期的な利用者確保のための戦略立案にも役立ちます。また、財務諸表を詳細に分析すれば、事業運営における生産性や安全性を客観的に評価でき、今後の具体的な施策を策定するための重要な指針を得ることができます。競合他社の価格帯をリサーチすることは、自施設の価格戦略を見直す上で不可欠ですし、稼働率を統計データと比較検証することは、収益最大化への鍵となります。これは、稼働率の低下は直接的に収益の減少を意味し、安定経営を揺るがす大きな要因となるためです。さらに、加算の算定状況や適切な人員配置、コスト構造の分析は、見落とされがちな収益改善の余地や効率化のポイントを明らかにしてくれます。経営層や管理職へのヒアリングを通じては、組織全体の管理機能における潜在的な課題を掘り起こし、改善の機会を見出すことが可能になります。これらの徹底した分析を通じて、事業の現状を深く理解し、具体的な改善見込みを客観的に試算することで、次に進むべき方向性が明確になるのです。

「行動計画」で未来を描く

現状を正確に把握できたら、次はその課題を解決し、理想とする「あるべき姿」へ到達するための具体的な行動計画を策定する段階です。この計画がなければ、改善活動は場当たり的になり、組織全体が同じ方向を向いて進むことができません。行動計画は、未来への羅針盤となり、組織が目指す漠然とした目標を、実際に取り組むべき具体的なステップへと分解します。

短期的、長期的な視点から「介護度の改善」「人員の適正配置」「職員の意欲向上」「稼働率改善」「コスト見直し」など、多岐にわたる施策を分類し、それぞれに新規利用者数やサービス単価、配置人数といった具体的な数値目標を設定します。例えば、特別養護老人ホームであれば入所率95%以上、デイサービスであれば稼働率80%以上といった明確な目標を定めることで、スタッフ全員で目標を共有し、共通認識を持って取り組むことができます。バランススコアカード(BSC)のような経営管理ツールを活用することは、財務、利用者、業務プロセス、学習と成長という多角的な視点から目標を捉え、組織全体に戦略を浸透させる上で非常に有効です。この段階で策定される行動計画は、単なるTo Doリストではなく、組織全体が一体となって目標達成に向かうための強力な道しるべとなるのです。

「実行支援」で計画を「成果」に変える

どれほど優れた計画も、実行に移されなければ絵に描いた餅に過ぎません。しかし、計画を実行し、それを成果に結びつける過程には、多くの「つまずき」が待ち受けています。だからこそ、改善活動を着実に推進し、組織に根付かせるためには「実行支援」が不可欠です。

そして、その実現のためには、PDCAサイクル(計画・実行・確認・是正)を継続的に回し続けることが重要となります。これにより、変化の激しい環境にも柔軟に対応でき、他社との差別化につながる独自の運営方針や手法を生み出すことが可能となるのです。

実行支援の具体的な内容は、稼働率向上省人化、そして経営力向上という三つの柱で構成されます。なかでも稼働率向上は、施設の収益に直結する重要な要素です。

稼働率を高めるためには、新規顧客の獲得と既存利用者の退所防止が欠かせません。そのためには営業活動の強化が不可欠であり、営業力強化支援では、コンサルタントが営業訪問に同行し、ノウハウを提供することで、外回り営業に不慣れな職員でも新規顧客を効果的に獲得できるようサポートします。こうした営業活動の強化が、結果として稼働率の向上につながり、施設の経営健全化に大きく寄与するのです。

省人化は、業務改善や業務量調査を通じて、職員の対応状況やタイム分析から生産性をチェックし、サービスの取捨選択を行うことで実現できます。これは、限られたリソースの中で最大の効果を生み出すために必要不可欠な視点です。

経営力向上では、業績管理や経営会議運営支援を通じて、組織全体の経営判断能力を強化します。日次、週次の収支をリアルタイムで把握し、困り事を共有することで、サービス力向上や売上最大化に向けた協力体制が構築されます。

実行段階では「担当業務に忙殺され目的を見失う」「変化や成果に気づかずモチベーションが低下する」「運用が形骸化する」「法人本部との連携が希薄になる」といった、様々な「つまずき」に直面することがあります。これらに対しては、定期的な進捗共有会議の開催、個別面談によるモチベーション維持、経営幹部による先行管理会議、そして各事業所と経営層間での密な情報共有といった取り組みを通じて、計画の着実な推進と成果への結びつきを確実なものにしていきます。

経営健全化に向けた取り組みを、確かな一歩にするために

介護施設の収益改善は、一朝一夕で実現できるものではありません。しかし、「正しく現状を把握し」「具体的な行動計画を描き」「組織全体でその計画を着実に実行する」という一連の取り組みを丁寧に進めることで、持続可能な経営基盤を築くことが可能になります。

私たち日本経営では、介護事業に精通したコンサルタントが、施設ごとの課題や状況に応じて、現状分析から行動計画の策定、そして実行支援までを一貫してサポートしております。収益改善に向けて具体的に何から始めればよいのか、今の取り組みが正しい方向に進んでいるのか、不安や悩みをお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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