医療機関の人件費は、都市部の方が高いというのは本当でしょうか。~2025年度株式会社日本経営全国賃金調査より~/約3分で耳ラーニング
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業種
病院・診療所・歯科
介護福祉施設
- 種別 レポート
医療機関の人件費は都市部が高いと言われていますが、それは本当でしょうか。
その答えは、「職種によります」。
弊社の全国賃金調査を紐解くと、人件費の地域差や収益に対する比率を理解することは一筋縄ではいかないことがわかります。例えば、看護師の給与水準は物価の高い関東・信越エリアが最も高く、九州・沖縄が最も低いという、一般的なイメージどおりの結果です。
しかし、医師の場合は逆の傾向が見られます。弊社の調査によれば、医師の初任給における年収中央値は、関東・信越が約506万円に対し、九州・沖縄では約897万円と、地方の方が大幅に高いことがわかります。これは、地方における深刻な医師不足を背景に、高い給与を提示してでも医師を確保しようとする採用競争が起きているためと考えられます。
したがって、「人件費は都心部の方が高いのか」という最初の問いへの答えは、「看護師はYESだが、医師はNO」なります。
なぜ人件費率が高くなる?地方の病院が抱えるジレンマ
では、次の問いです。
同じ診療報酬体系の場合、人件費が(比較的)低い地方の方が利益を出しやすいのでしょうか。
この答えは明確に「NO」です。
問題は個々の給与水準そのものではなく、医業収益全体に占める人件費の割合である“人件費率”にあります。一般的に、この人件費率は大都市型の病院で最も低く、人口の少ない地域型(地方)の病院で最も高い傾向があります。
では、なぜ地方の病院は人件費率が高くなるのでしょうか。それは、地方の病院が「医師確保の高コスト」と「収益の限界」という構造的なジレンマを抱えているためです。
地方の病院では、医師を確保するために都市部よりも高い給与を支払う必要があります。しかし、高いコストをかけて医師を確保しても、地域の患者数には限りがあり、収益の伸びにはどうしても上限があります。このため、医師の確保にかかるコストが人件費率を押し上げ、経営を圧迫しています。
“「医師を確保できる力」をいかに構築するか”が重要な鍵
病院経営の真の課題は、給与水準の高低ではなく、「医師を確保できる力」をいかに構築できるかにあります。医師が集まれば診療体制が充実し、より多くの患者を受け入れられるようになります。その結果、収益が向上し、得られた利益を人材や設備に再投資することで医療の質が高まります。
この医師と患者が集まるという“好循環”を生み出すことこそが、病院経営の安定に向けた重要な鍵になります。
<参考資料>
・株式会社日本経営 「第5回(2025年度) 病院賃金総合調査」
・厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会 総-3「医療機関等を取り巻く状況について」(2025/8/27)
病院の人事制度・組織開発と言えば、日本経営!
今回の解説
馬渡美智(まわたり みさと)
株式会社日本経営 組織人事コンサルタント
従業員数500名規模の事業所で、総務・人事業務に従事した後、日本経営入社。労務管理体制の調査・整備業務、組織活性化支援、人事制度の導入・運用支援、管理職研修、職員研修等に従事している。自治体の医療人材の流出入に関する調査も実施。社会福祉協議会、各種団体等での講演やセミナーも多数行っている。社内においては、子育てをしながら経営コンサルタントとして働くモデル人材として活躍。社会保険労務士有資格者。
株式会社日本経営
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