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介護・福祉の処遇改善加算の一本化で何が変わるのか:制度の狙いと、経営が今新たに取り組むべき対応ポイント

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

2024年度介護報酬改定で実施された「処遇改善加算の一本化」は、介護・障害福祉分野の双方において、介護人材確保と介護職場の環境改善に向けた大きな転換点となりました。
一方で、「処遇改善加算の制度の目的は理解しているが、実際にどう運用すればいいのか」「過去の処遇改善加算における加算管理が複雑で、支給データを整理できていない」という介護事業者の方々の声も多く聞かれます。
本稿では、処遇改善加算一本化の背景と、介護経営対応の要点を整理したうえで、処遇改善加算の具体的な活用事例と、外部専門家による支援の活用方法について解説します。

1.介護・福祉の処遇改善加算の一本化とは何か

(1)統一された届出様式と三加算の統合

処遇改善加算の一本化により、届出様式が統一されたことで、従来必要であった複数様式の管理・作成が不要となり、提出書類の削減によって、事務負担は大幅に軽減されました。
この統一された様式は、一つの様式で三つの加算の届出が可能となり、特に複数事業所間で異なる支給ルールを運用してきた介護事業者にとって、会計処理や届出様式の作成・提出業務を簡素化する効果があります。経営層は、この統一様式を単なる行政への報告ツールとしてだけでなく、法人内部の賃金改善計画を明確に記載し、職員への説明責任を果たすための戦略的な文書として活用すべきです。その際、様式に記載すべき根拠となる内部資料の整備も重要であり、様式作成の簡素化を機に、削減された事務リソースを、より重要なキャリアパスや評価制度の再構築に振り分けることが求められます。

(2)介護・福祉の処遇改善加算を統合した狙い

処遇改善加算を統合した最も大きな狙いは、複数加算による介護制度の複雑化を解消することです。従来の処遇改善加算の制度では、加算ごとに賃金改善の対象職種や配分ルールが細かく設定されており、介護事業者内で異なる職種間に不公平感が生まれる一因となっていました。

処遇改善加算の一本化後は、すべての職種が一体となって処遇改善に取り組める仕組みとするとともに、煩雑であった計算や申請手続きを簡素化し、介護事業者にとってより明確で持続的な運用を可能にすることも目的とされています。
特に、政策目的として重視されているのは、職種間の処遇格差の是正や、処遇改善加算が複雑化する中で生じていた曖昧な運用を排除し、介護事業者全体での介護人材の定着促進です。賃金改善の恩恵を広範な職員に及ぼし、介護・障害福祉分野で働くことへのモチベーションを組織的に高めるための基盤づくりが求められています。

2.処遇改善加算の一本化に対し、介護・福祉経営に求められる対応のポイント

(1)「積み上げ」から「設計」へ

今回の介護報酬改定で経営層に最も求められる意識や考え方の転換は、「積み上げ」の発想から「設計」の発想への移行です。
従来は、制度の要件を満たすために各加算を上乗せして支給する、いわば「積み上げ」的な対応が主流でした。しかし、処遇改善加算の一本化後は、「介護事業者として、どのような人材をどう育成し、どう処遇するのか」という中長期の人事戦略に基づいた処遇体系の再設計が不可欠となります。この再設計のプロセスを通じて、介護事業者独自の哲学や育成方針を賃金体系に反映させる機会を得ることができます。

(2)配分ルールの明確化と説明責任

一本化後の新しい処遇改善加算の運用においては、介護事業者として賃金改善額の配分基準を明確に文書化することが必須となります。
これにより、「経験」「職責」「資格」「評価」など、客観的な軸に基づいた明確な配分基準を設定し、職員に対する説明責任を果たすことが求められます。この説明責任には、個別または集団でのQ&Aセッションなどを通じ、職員が抱く疑問を解消する努力が含まれます。なぜこの金額が支給されるのか、なぜ職種や等級によって差があるのかを論理的に説明できる透明性こそが、職員の納得感を高める鍵となり、この納得感が処遇改善加算を人材定着へと結びつけるための土台となります。透明性・公平性の向上は、結果的に労務トラブルの予防にも寄与します。

(3)介護・福祉のキャリアパスと評価制度との接続

処遇改善加算を単なる“制度対応”や“手当の支給”にとどめてしまうと、処遇改善加算の効果は一時的なものになりがちです。本当に効果的な運用を実現するためには、介護職員等処遇改善加算を介護キャリアアップの見える化と連動させることが極めて重要です。
具体的には、評価制度、研修体系、職責基準などを一体的に再構成し、「この先キャリアパスを進めば、これだけの処遇改善がある」という道筋を職員に示す必要があります。この一体的な再構成によって、「キャリア形成=処遇改善」という正の循環が組織内に生まれます。職員は、先が見えることで自身の努力やスキルアップが具体的な処遇向上に結びつくことを実感でき、これが長期的なモチベーション向上へとつながります。例えば、この後の活用例で取り上げるC法人のように研修受講や資格取得実績を評価要素とする仕組みは、この接続の成功例と言えます。

(4)介護における法的整備と統一届出様式への確実な対応

処遇改善加算の一本化は、単なる資金配分の見直しにとどまらず、介護現場における労働条件の根幹に関わる変更を伴います。したがって、経営層は賃金規程や就業規則といった労働関係法規の整備を確実に行う必要があります。処遇改善加算の配分基準を明確にした場合、その基準を反映させるかたちで、賃金規程の改定が求められますが、この改定は労働基準法に基づき、労働者代表(または過半数組合)からの意見聴取を経て行わなければなりません。特に、処遇改善加算を目的とする手当の導入や改変は、労働条件の不利益変更にあたらないよう慎重に進める必要があります。また、様式の簡素化により事務負担は軽減されますが、賃金改善計画の具体性については依然として高い水準が求められます。特に、介護職員に対する配分ルールが「経験」「職責」「資格」「評価」などの客観的な軸に基づいていることを証明できるよう、内部資料や考え方の根拠を整備しておく必要があります。届出は毎年行われますが、単に前年度踏襲ではなく、計画のPDCAサイクルを回し、その結果を翌年度の方針に反映させることが、行政指導のリスクを避け、人材戦略を定着させるうえでも重要です。

(5)処遇改善加算の一本化:統一届出様式による戦略的活用と事務負担の軽減

従来の制度では、支給データが各事業所や担当者ごとにエクセルなどに分散し、管理が煩雑化していました。この一本化により、特に過去にエクセルで複雑に管理されていた支給実態が整理され、そこから生じる労務トラブルのリスク低減にも寄与します。
経営層は、この統一された様式を単なる行政への報告ツールとしてだけでなく、介護事業者内部の賃金改善計画を明確に記載し、職員への説明責任を果たすための戦略的な文書として活用すべきです。統一様式による事務の簡素化は、これまで手つかずであった「処遇体系の抜本的な見直し」に着手する好機です。この機を逃さず、浮いたリソースを中長期的な人事戦略と連動した制度構築へと振り向けることが求められています。

3.介護・福祉事業所における介護職員等処遇改善加算の具体的な活用例

(1)例1:キャリア段階ごとの処遇体系を再構築したA法人

A法人では、以前は職種ごとに複雑だった加算配分を簡素化しました。
この法人は、「リーダー層」「中堅層」「新人層」という3階のキャリア区分を明確に設定し、それぞれの区分に求められる役割やスキルを具体的に明文化しました。そのうえで、再構成した加算額を各区分に対応した手当に反映しています。
これにより、介護職員は昇格の道筋が明確になり、「自分が次に何を達成すれば処遇が向上するのか」が視覚的に分かりやすくなりました。

(2)例2:手当ルールの一本化により説明負担を軽減したB法人

B法人が直面していた課題は、通所・訪問などの複数事業所間における支給ルールの不公平感と、現場の介護職員への説明負担の大きさでした。介護・福祉の処遇改善加算の一本化を機に、B法人では法人全体で処遇改善額の支給基準を統一し、職種別・等級別の一元的な手当ルールを作成しました。この処遇改善加算の統一化は、会計処理や届出様式の作成・提出業務が簡素化され制度の透明性が高まったことで、管理部門と現場双方にメリットが生まれました。

(3)例3:人材育成方針と連動させたC法人

C法人では、処遇改善加算を教育・研修体系と戦略的に連動させました。
具体的には、「研修受講・評価実績・資格取得実績」を、処遇改善配分を決定する際の主要な評価要素とする仕組みを導入しました。この仕組みは、処遇改善加算を単なる賃金アップの財源としてではなく、“学びや頑張りが処遇に反映される”インセンティブとして機能させました。結果として、職員は自主的にスキルアップに取り組み、さらには職員のモチベーション向上に直結しています。

4.介護・福祉分野で処遇改善加算を効果的に活用するための外部専門家活用例

(1)外部専門家による整理・設計支援

多くの介護事業者では、過去から処遇改善加算を積み上げるかたちで支給してきた結果、「どの加算を、誰に、どの基準で支給しているのか」が曖昧になり、管理が煩雑化しています。
こうした介護事業者に対して、外部専門家は以下の支援を行うことが可能です。

  • エクセルデータなどに分散している各種処遇改善加算の履歴・支給実態の整理
  • 法人方針と整合する処遇改善加算ルールの再設計
  • 職員のキャリアパス・評価制度との接続設計
  • 届出書類や配分ルールの明文化サポート

特に、「制度理解×経営分析×人事設計」を一体で支援できる外部パートナーの関与は、制度改定期の混乱を最小化し、複雑な移行プロセスをスムーズにし、法人内部での統一的な理解を促進するうえで非常に有効です。

(2)煩雑化を避けるための届出様式作成・管理支援

多くの介護事業者では、過去の処遇改善加算の「積み上げ」により、支給実態の整理や管理が煩雑化しています。外部専門家は、新しい統一様式に対応するための手続き指導に加え、様式に記載すべき根拠となる内部資料(賃金改善計画等)や提出書類の作成プロセスを支援します。
特に、エクセルデータなどに分散していた支給実態の整理から、配分基準の明文化、さらに不備のない様式作成までを一貫して支援します。この様式作成の支援にとどまらず、職員への説明責任を果たすための配分ルールの明文化や、届出様式提出後の運用定着までをサポートします。
これにより、不備のない届出が可能となり、加算の確実な算定と、複雑な移行期における混乱の最小化を実現します。

(3)職員説明・合意形成のサポート

制度改定を成功させるためには、経営層の決定だけでなく、現場の職員の理解と納得が不可欠です。この納得感こそが、処遇改善が介護人材定着に結びつくための土台となります。
外部専門家は、中立的な立場から説明会やワークショップを運営し、質疑応答(Q&A)を通じて「経営が伝えたい意図」と「現場の実感」を橋渡しすることで、納得感ある介護制度の導入を支援します。特に、介護事業者全体での公平性と透明性を高めることが重要であり、これにより、職員の疑念や不安を解消し、新しい介護処遇改善に対する納得感ある体制の導入を支援します。

(4)経営への継続的フィードバック

処遇改善加算の戦略的活用には、単に届出を行うだけでなく、実績報告を通じて、賃金改善の配分が人材育成や定着に与えた効果を詳細に分析することが不可欠です。この検証結果を翌年度の方針に反映させ、PDCAサイクルを継続的に回すことが求められます。
コンサルタントは、導入後の毎年の実績データを分析し、「加算活用による効果検証」と「翌年度方針づくり」を継続的に支援します。この継続的なPDCAサイクルを通じて、処遇改善が一時的な対応策で終わらず、人材戦略の一部として組織に定着していくことを可能にします。

5.処遇改善加算一本化後の戦略的対応:「積み上げ」から「設計」への転換と介護経営に必須の説明責任

処遇改善加算の一本化を成功させるためには、単に届出様式が変更されたという事実を受け入れるだけでは不十分です。重要なのは、制度の狙いを踏まえ、最新の介護経営戦略の中に介護職員等処遇改善加算の活用を位置づけることです。処遇改善加算一本化の最大の狙いは、複数の加算が存在することによる介護制度の複雑化を解消する点にありました。従来の「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の三つの加算は、それぞれ独立した目的や配分ルールを持っていたため、管理が煩雑化し、「どの加算を、誰に、どの基準で支給しているのか」が曖昧になりがちでした。新制度では、賃金改善の目的、配分ルール、届出様式が統一されたことで、より明確で持続的な最新の運用が可能となりました。

この新たな枠組みを活用し、経営層は中長期の人事戦略に基づいて介護処遇体系を「再設計」していく必要があります。これは、過去の制度のように処遇改善加算の額を単に「積み上げる」発想からの脱却を意味します。具体的には、介護事業者としてどのような人材を育成し、どのように処遇していくのかという最新ビジョンを明確にし、これを評価制度、研修体系、職責基準と一体的に接続することが求められます。介護処遇改善を単なる“制度対応”にとどめず、職員のキャリアアップの見える化と連動させることが重要です。

処遇改善加算の一本化後の配分ルールにおいては、「経験」「職責」「資格」「評価」などの客観的な軸に基づく説明責任を果たすため、介護事業者として賃金改善額の配分基準を明文化することが必須となります。これにより、職員の納得感が高まり、介護事業者としての公平性と透明性が向上します。C法人の事例が示すように、「研修受講・評価実績・資格取得実績」を配分評価要素とすることで、「キャリア形成=介護処遇改善」という介護職員のモチベーション向上につながる正の循環を生み出すことができます。

一方で、特に過去の処遇改善加算の管理が複雑化し、支給実態の整理が十分にできていない介護事業者においては、この再設計プロセスを誰にも相談せずに進めることは、困難を伴う場合があります。そこで外部専門家の活用が有効となります。コンサルタントは、まず過去の処遇改善加算の履歴や支給実態を客観的に整理・分析し、そのうえで法人方針に整合したルールの再設計、キャリアパスとの接続設計、そして届出書類の明文化を支援します。これにより、「制度理解×経営分析×人事設計」を一体で進めることができ、改定期の混乱を最小限に抑え、組織内部での統一的な理解(内部統一)を実現できます。

また、制度改定の成功には、経営陣だけでなく現場の理解と納得が欠かせません。第三者が中立的な立場から説明会やワークショップを運営することで、「経営側が伝えたい意図」と「現場の実感」を橋渡しし、納得感ある導入を支援します。外部の知見を活用しながら、組織全体で最新の介護処遇改善の本質を再確認することが、「働きがい」と「経営の安定」を両立する新たなステージを開く鍵となります。
「処遇改善加算の戦略的活用を含む『介護福祉の人事制度構築』や『現場の意識変容(組織開発)』など、3,000を超える実績・事例を持つ株式会社日本経営の知見を、貴法人の処遇改善加算対応と『よい経営』の実現にお役立てください。」


処遇改善加算の一本化については、すでに制度対応を進めている法人も少なくありません。
一方で、運用が落ち着いてきた今だからこそ、

  • 配分ルールが職員に納得されているか
  • 評価制度と処遇がきちんと連動しているか
  • 賃上げが採用・定着につながっているか
  • 人件費増を踏まえた収益構造が維持できているか

といった「制度対応の次の課題」が見え始めているのも事実です。
処遇改善加算は“取れたかどうか”で終わるものではなく、その後の運用が経営に直結します。

日本経営グループでは、介護・福祉施設の経営者の意思決定を尊重しながら、第三者の立場で現状整理から実行フェーズまでを伴走支援しています。

たとえば、

  • 処遇改善と連動した人事制度・賃金体系の見直し支援
  • 採用・定着強化に向けた組織課題の可視化と改善支援
  • 労務・加算運用の仕組み化(属人化の解消)
  • 人件費を踏まえた収益改善・経営計画策定支援

など、制度を「経営に活かす」ための支援を行っています。
「制度対応は済んだが、この運用で良いのか確信が持てない」
「現場に浸透しきらず、効果が実感できない」
そうした段階からでも構いません。
貴法人の方針に沿った形で、実行可能な打ち手を整理するところから、ぜひ一度お話をお聞かせください。

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