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同族と非同族/日本経営のケイエイ

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

「株式会社 日本経営」での取り組みや私が考えていることなどを発信しています。
皆様の経営のヒントや新たなアイデアなどにつながれば幸いです。

同族と非同族

株式会社 日本経営 / 代表取締役社長 橋本竜也

創業者 菱村和彦の逝去

2026年1月10日、日本経営グループの創業者である菱村和彦が亡くなりました。享年92歳。亡くなる間際まで本当に元気でしたので、私にとっても大きな衝撃でした。菱村は生前から、自らの死後の意向を文書で細かく伝えていました。その内容は、「社葬は行わない」「縁の深いお客様や取引先にもご連絡しない」「葬儀は親族のみで行う」という徹底したものでした。

私は何度もこの説明を受け、時に議事録を取るようにとまで言われていました。故人の意向を尊重し、お客様等には一切ご連絡せず、葬儀も親族で行われました。そのため、菱村が生前にご厚情を賜った方々には失礼であったかもしれませんが、何卒ご理解いただきたく存じます。

年末の電話

菱村はだいぶ前から経営を退いていましたが、グループ中核会社のトップ3人と毎月オンラインで話す機会を持っていました。会社の近況を伝えたり、菱村から経営者の心構えを説かれたりする時間で、業績等の実務的な話はありませんでした。

正直「少し面倒だな」と思うこともありましたが、まもなく創業60年を迎える会社にあって、創業者と直接対話できるというのは相当恵まれたことです。私はその幸せを噛みしめ、毎月の時間を楽しみにしていました。新卒入社時の菱村は既に64歳。厳しい人でしたが、私にとっては「いいおじいちゃん」のような感覚で慕う存在でした。

2025年12月28日、年末の日曜日に菱村から電話がありました。「私は今年いっぱいで日本経営グループのすべてから引かせてもらう。君たちが立派にやっているから心配ない。ますますいい会社にしてくれよ」と。すでに経営には関わっていませんでしたし、月1回の私たちとの近況報告のミーティングくらいだったので、改めてこのような話をするのは何なのだろうと思いましたが、詳しい事情を聞こうにも、いつもの通り電話では一方的に話されるので、年明けの面談の日を待つことにしました。

しかし、その直前に菱村は亡くなりました。創業者の直感か、虫の知らせか、妙に納得する最後でした。こうして日本経営の事業承継は、「よろしく頼む」という言葉と共に、完全に完了したのだと感じています。

日本経営は同族のような絆で結ばれた非同族経営

当社の歴代社長は菱村、小池、藤澤、平井、そして私。菱村は同族か非同族かで相当悩んだ末に後者を選び、かつ「同族のような強い絆で結ばれた非同族経営」を目指してきました。基本理念は「全従業員とその家族の幸福を追求する」から始まります。血縁ではなく信頼による連帯を重んじ、入社式やパーティーにご家族を招いたり、配偶者の人間ドック費用を補助したりし続けているのは、この理念ゆえです。

もちろん、同族企業であってもこのような制度を作ることはできますが、当社においては同族経営のような絆で結ばれた非同族経営という文脈の中にこれらの制度があります。この「なぜしているのか」ということがとても大事なのだと思います。

同族経営 VS 非同族経営

顧客である医療・介護施設や中小企業には同族経営が多く、どちらが良いかという議論もありますが、双方に良さがあります。当社はたまたま非同族を選択したに過ぎません。

ただ社長に就任し、その違いを深掘りする中で、私の経営に強く影響を与えていることの一つに「オーナーシップの有無」があると考えるようになりました。同族経営のほとんどはオーナーと経営者が同一で経営者がオーナーシップを握っていますが、非同族経営では経営者にオーナーシップがないことがほとんどです。それが「経営の時間軸」に大きく関わっていると感じています。

短期志向の経営者が企業をダメにする

およそ60年の歴史で5代目の私は、歴代社長の任期から考えて、自分の代も最長10年だろうと想定しています。すると「失敗は許されない」というプレッシャーから、大きな挑戦を避けたり、短期業績で帳尻を合わせたりといった短期志向に陥る誘惑が自然と生まれます。

対してオーナーシップを持つ同族経営は、20年、30年という長いスパンで経営を捉えられます。また、代替わりでダイナミックな若返りが起こり、経営革新が起きやすい点も魅力です。経営の失敗の大きな要因は短期志向です。変化の激しい時代こそ、長期的視野が欠かせません。オーナーシップのない非同族経営がこの誘惑に勝つには、仕組みが必要です。私は就任時、短期業績では役員報酬が上がらないルールを明確にしました。譲渡制限付株式報酬などの導入も、過度な短期志向を抑制する仕組みの一つです。

ミッションにコミットし、承継者としての使命に徹する

もう一つの肝要な点は、経営者が「何のために経営をしているのか」という企業のミッションに深く向き合うことです。同族・非同族を問わず、ミッションの実現は長期的視野なくしては不可能です。短期的な業績の変動に一喜一憂するのではなく、ミッションやビジョンの実現に対して健全に進んでいるかどうかという視点で自社の経営と向き合うことが大事だと思います。

当社のミッションは「マネジメントの力で社会に希望を」です。素晴らしい組織が溢れる社会の実現は、私の代だけで成し遂げられるものではありません。だからこそ私は、長い歴史の「承継者」としてバトンをつなぐ使命に徹したいと考えています。

具体的には、日本経営が持続的に成長できる構造を作ることです。事業やサービスが変わろうとも、顧客価値を追求し、変化を敏感に捉えて挑戦し、失敗にも素早く対応できる人・組織であり続けること。私たちの様々な制度や取り組みは、すべてこの「ミッションを果たすことと持続的成長の実現」という文脈の上にあります。

皆さんの会社でも、素晴らしい組織作りのための背景に様々な想いがあるはずです。いつかそんなお話を伺える機会があれば幸いです。

長くなりましたが、私の考えが少しでも皆様の経営の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

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このレポートの執筆者

橋本竜也
株式会社 日本経営 代表取締役社長
組織人事コンサルタント

1999年入社以来、人事コンサルティング部門にて、クライアントの人事制度改革に携わるほか、不採算企業の経営再建にも従事。コンサルティング実績は上場企業から中堅・中小企業まで150社を超える。「良い経営は人を幸せにする、悪い経営は人を不幸にする」を基本スタンスに、人事コンサルティングや経営顧問を行っている。
<著書>
「チームパフォーマンスの科学」幻冬舎2021年12月
「中小企業の未来戦略を具現化する!組織マネジメント実践論」プレジデント社2022年10月

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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