選ばれるために、同じ土俵に立たない工夫
-
業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
ウリを用いた広報資料の制作(後編)
- 介護施設における稼働率向上実務のポイントシリーズ。
- 制作した広報資料を配布先でさらに有効活用してもらえるようにする一工夫「営業ファイル」について解説する。
選ばれやすくなる広報資料を作ることとは
前回、前編においてウリをまとめるポイントを整理した。営業活動が押し売り的にならないよう、一言で自サービスのウリを覚えてもらうべく、①ウリを端的に、一言で説明できるようにまとめられる、②一言で伝えられたウリがなぜ実現できるのかの理由が整理されている、のふたつのポイントを押さえる必要がある。
これらは、売り込み文句を押し付けなくても簡単に自サービスのウリを覚えてもらいやすいということでも有効と言えるが、広報資料(主に事業所を案内するチラシ類)の作成にあたってはさらに重要性を増す。なぜならば、広報資料はウリ文句の伝達以上に使用する本人の意志に頼らないと活用されないので、訴求力の強い構成という一工夫で、見てもらえるか否かという大きな差が生じやすいためである。
介護事業所における営業活動における広報資料の役割は、ケアマネジャーなどの紹介者の事務所などで待機し、紹介者が介護サービスの紹介をしたいと思ったそのタイミングで手に取り、見てもらうことにある。新聞折込のような広告と異なり、それを見た時点での衝動的な購買欲を刺激する必要性はなく、代わりに基本的には資料を渡した段階では「見ておきますね」と預かられ、他事業所の同様の資料と同じファイルに差し込まれ、必要なときに複数の資料の中から選ばれるという使命を果たさなければならないのである。
そのような場合に求められるのは、一目で伝えたいことが理解できる表紙(表面)を携え、かつ詳しく知りたいと思い中身をめくらせる力があり、そのうえで詳細を見たらぜひ利用者に紹介したくなるような構成である。そこに、今回のようなウリのまとめが活用されることになる。
[PR]施設長のスキルアップブック 即実践!
介護サービスの質の高め方
施設長なら学んでおきたい本質は、介護事業所である以上、「介護サービスの質をどう高めていくか」ということです。誰もが気づいているのに、誰もが大きな成果を上げることができない。この難しいテーマに、本書では挑戦することにしました。第1章~第3章までお試しでダウンロードしていただけます。
選ばれやすくなる広報資料を作ることとは
別の視点の工夫とはどのようなものか。それは広報資料選択のプロセスにおいて、同じ土俵に立たない工夫をすることである。具体的には、広報資料は紙媒体のままお渡しするのではなく、ファイルに閉じた状態でお渡しする、「営業ファイル」の作成をすることである。
ケアマネジャーなどの紹介者の事務所では、たいてい、預かった資料は専用のフォルダや箱などに納められ、必要に応じてそこから探されるという形になる。その数多くの「資料集」の中に放り込まれてしまうと、どのような構成の工夫をしても、生き残ることは容易ではない。そこで、お渡しをする形状を紙ではなくファイルに納められた形にすれば、その他大勢の枠から外れることができ、純粋に選ばれやすい状態になるというものである。
営業ファイルとは、A4サイズの資料が納められるファイルであれば何でもよいが、できれば単独で書庫などに縦に納められてもらいたいので、背表紙のあるタイプであるとなおよいだろう。背表紙には法人名、施設名、サービス種別などが書かれており、紹介者が必要と思ったときに簡単に手を伸ばせる状態になっていることが望ましい。
このような営業ファイルは、訪問先に一つずつ配布するので多少の金銭的負担は大きくなるが、それで1件でも多くの紹介があれば元は取れる。そのうえ、2回目の訪問からは付け足す中身だけを持ち込めばよくなる。その場合、ごく簡素な1枚モノの資料であっても、営業ファイルの中の一部であれば役割を十分に果たせる。つまり、2回目からの資料作成はごくごく容易になるうえ、営業ファイルの追加資料を持ってきたという訪問の口実ができるので、それだけで営業訪問がしやすくなる効果もあるのである。
営業ファイル自体は市販のファイルに背表紙の施設名を書くだけなので簡単なので、ぜひ行ってみていただきたい。
次回は、テーマが変わり、効果的に営業をおこなう計画の在り方について考察をする。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。