聞き中心の営業トーク
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
営業トークの重要性について考える
- 介護施設における稼働率向上実務のポイントシリーズ。
- 今回より営業力強化の取り組みの集大成として、営業トークの具体的手法について複数回にわたりお伝えしていく。
介護事業所における営業活動では営業トークは必要ないのか
本シリーズでは介護事業所向けに特化した営業力強化の取り組みについて様々な視点から紹介をしてきたが、一般的な「営業力強化」のイメージから浮かびやすいと言える「営業トークの手法」については言及をしてこなかった。
それは、介護事業所における営業職強化の本質は介護サービスの質を高め、それを必要としている方に向けて知っていただく、使っていただくためにどう表現するのか、地域包括ケアシステムの中でどう生かしていくのか、という点にあると捉え、中身を磨くこと、利用者ニーズに寄り添う考えを大切にすることなどを優先的に選んでお伝えしてきたためである。
しかし、介護事業所における営業力強化分野において、営業トークの手法が重要でないかと言えば、決してそのようなことはない。営業トークを磨くと聞くと、どうしても口八丁手八丁で、相手を意のままに操るような「しゃべる」技術というイメージが先行してしまいがちで、介護を必要としている高齢者や同業たるケアマネジャーなどに対してそのような技術を駆使して意としないサービスを押し付けていくのはいかがなものか、というように考えられてしまう方も多いのではないだろうか。だが、介護事業所における営業において求められるトーク技術とはそのようなものではなく、むしろ「しゃべる」のではなく「聞く」ことに特化した技術であると言って差し支えない。つまり、相手の思考を「しゃべり」によって操るのではなく、「聞く」ことによって気づきを得てもらうことに、その真髄があると言えるのである。
そして、介護の営業の本質があくまでも相手のニーズに寄り添うものであると理解した今だからこそ、そのニーズを知るための技術としてトークが生かされるのである。
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「聞く」ことにより得られる気づきの重要性とは
まとめると、会話の中で「聞く」ことにより相手の気づきを引き出し、今のニーズに対して何を必要としているのか気づくことにより、適した介護サービスを使っていこうと思ってもらうことが営業トークの役割であると言えるのである。しかし、果たして話を「聞く」ことにそこまでの効果があるものなのだろうか。やはり、「しゃべり」によって大切なことを伝えた方が気づきは多いのではないのだろうか?
残念ながら、営業で「しゃべる」ことにそこまでの期待をすることは難しい。なぜならば、人は興味のないことに熱心に耳を傾けることはできないためである。こちらがいかに熱弁を振るったとしても、相手に興味がない、必要と感じられていない話題であれば、伝わらないどころか、むしろ大切な時間を浪費させられる「ノイズ」として悪感情の対象にすらなってしまう可能性が高い。それでは、営業トークの役割としてはまったくの逆効果である。
このような例がある。ホーソン工場の実験という 100 年以上前の事例だが、生産性の悪い工場について、原因究明のために 2 万人の職員に対してヒアリングを実施したというものである。ヒアリングでは、ありのままの情報を得るために相手に好きなように話してもらったところ、原因は分からなかったが、その後工場の生産性は向上した、というのである。
この実験の見方は様々あるが、少なくとも工場の職員は自ら話すことで何らかの気づきを得て、銘々が少しずつでも改善の取り組みを自主的に行ったことが積み上がり、生産性向上という成果に繋がったということだ。つまり、第三者から示唆を得るよりも、自らの気づきを基にした方が行動に繋がりやすいということを表していると言える。
改めて今回より、自らの気づきを促す「聞き」中心の営業トークについて考察していく。次回から、営業が苦手な方でも実践しやすい聞き手の営業手法についてお伝えをしていく。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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