ニーズにあった強みを設定するために有効な4つの視点
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
SWOT分析で「売り」の精査を(前編)
- 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントを現場のコンサルティングの実例を踏まえお伝えする。
- 事業所の「売り」を顧客に伝わる「売り」に昇華させる方法とは。
独りよがりな強みでは地域に受け入れられない
前回、差別化戦略の核心である「売り」の掘り起こしを行った。
しかし、ここで出された「売り」とはあくまでも「自事業所の強み」でしかない。
もちろん、自身の強みを明らかにしなければ差別化戦略の入り口にも立てないので、それはステップとして最重要であることは間違いないが、とはいえ、それが市場のニーズに応じたものであると限らないのも事実である。
つまり、どれだけ自事業所の得意なサービスをPRしても、要らないものであれば誰も「使おう」と思ってもらえないのである。
介護事業の、特に介護保険サービスの差別化戦略とは、端的に言えば地域包括システムの中で要介護者の困りごとに対する解決方法の選択肢に入ることである。
日常生活で○○ができないので助けてほしい、というニーズに対して「私たちの介護サービスを使えば解決します」と提案できるからこそ、選んでもらえるのである。
逆に言うと、要介護者のニーズに対する解決策にならなければ、どのような強みであってもサービスとして選ばれにくい。
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選ばれるサービスを自施設の「売り」にする
では、自分たちの「売り」が選ばれるサービスになるためにはどうすべきなのか。
そのひとつの方法としては、「SWOT分析」と呼ばれるフレームワークを使うことが一般的であり、ここではその方法について解説する。
SWOT分析は認知度の高いフレームワークであり、検索すれば容易にシートを入手したり使い方を学ぶことができる。
ここでは、フレームワーク自体の解説は簡略化し、あくまでも介護サービス事業所ではSWOT分析をどのように使うのか、どのような結論を導くべきなのかという視点について説明していく。今回と次回の全2回にわたりお伝えをする。
SWOTのフレームには何を書き込むべきか
SWOT分析の基本的なフレームとは右図のような4つのマス目になっているものである。
それぞれのマスに差別化戦略につながる情報を整理していくことで、効果の高い戦略を考えたり、材料があるのに気づかなかったことに気づきを得るために使われるものである。
まずは、このフレームに必要な情報を書き込んでいくところからはじめてみよう。
介護サービス事業所の「売り」を作るという視点で考えた場合、SとOのマスが何よりも重要となる。
Sとは自事業所の強みを書き込むマスになる。ここには、前回掘り起こした強みを書き込んでいく。当然、ひとつではなく複数のことを書き込んでいく。
また、サービスの好事例だけでなく、設備の良さ、法人の姿勢などを書いてもよい。
いずれにせよ、ここから地域に受け入れてもらえる差別化の材料が選ばれる。書けるだけ多く書くことが望ましい。
Oの部分には、同じプラス要因でも外部のことを記載する。
通常は社会環境などが記載されるが、ここでは地域における介護ニーズについて中心に書くことをお勧めしている。
○○で困っているお年寄りがいる、○○のようなサービスを探している要介護者がいる、などである。
地域ニーズを表す内容になるべきなので、いくつも同じ声が上がっている内容であるほど良い。
いずれにせよ、考えただけで出てくるものではないので、情報がなければ法人内や地域のケママネジャーに聞いて回ることも必要となる。
SWOT分析については、次回(後編)に続く。次回は今回のような手順で洗い出した情報を整理して結論を導き出す手順について解説をしていく。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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