地域のニーズに応えるサービスに整える方法
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
SWOT分析で「売り」の精査を(後編)
- 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントを現場のコンサルティングの実例を踏まえお伝えする。
- 単なる強みをニーズに応える商品に整える方法とは。
SWOT分析を用いて運営の方向性を定める
前回、SWOT分析の初手として、SWOTの4つのマス目のフレームに情報収集をして書き込む作業についてお伝えした。そのうち、S(強み)とO(機会)について書き込むことができただろう。
前回お示ししたように、ここに自事業所の強みとなる事例と、地域高齢者のニーズが書き込まれることで、介護事業所としての本質的な「売り」を作る材料となる。
あらためて、ひとつでも多くの情報が書き込まれるように、情報収集を進めていただきたい。
続けてW(弱み)とT(脅威)も書き込んでいく。自事業所の弱みは書きやすい項目だろう。箇条書きにしていくつか挙げてみよう。
また、T(脅威)については、O(機会)と同様に地域の状況を書きこむ部分だが、ここでは競合他事業所の動向などを書き込むとよい。ライバルの掲げる強みやサービスの方向性を分析することもまた、必要とされる「売り」を作る過程では重要な手順となる。
このように情報収集を行い整理することは、自事業所の掲げる運営の方向性を定める際に非常に重要なステップだが、これだけでは分析をして結論を導き出した結果とはいえない。
必要な情報を揃えたうえで、それを活用して、単なる「事業所の得意なこと」を地域の方に受け入れられて喜ばれるサービスに昇華させることができなければ、せっかくの「売り」を利用者獲得につなげることができない。
そこで、SWOT分析では次のステップとして「クロスSWOT分析」を行う手順が入るのである。
ここまででピックアップした情報同士を掛け合わせ、異なる視点や新しい価値観を生み出そうとする取り組みである。
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SWOTからクロスSWOTへ
クロスSWOT分析のフレームは、SWOT分析同様に4つのマス目で表されるが、書かれる内容は異なる。
SWOT分析のマス目に書かれた内容同士を掛け合わせた内容が記載される手順となる。
左上には「強み×機会」を掛け合わせるマスがある。自事業所の強みと地域ニーズを掛け合わせた視点を得ることのできる重要なマスであると言える。
例えば、通所介護において、S(強み)には認知症対応に強い事例がいくつも書かれており、O(機会)には地域に入浴対応のできる通所介護が少なく受け入れ先に困っているというニーズが書かれていたとする。
すると、ふたつを掛け合わせると、自宅入浴で困りごとのある認知症の方が安心して利用できる入浴サービスと書き込める。
認知症対応の強みを活かし、認知症利用者でもスムーズに入浴に誘導できたり、自立支援を行うことができることを発信すれば、得意分野で地域のニーズに応えることができるサービスとなれる可能性が高くなるのである。
このように、情報をかけ合わせていきながら自分たちのできることの可能性をいくつも探り、その中から実現可能性の高いもの、高い成果を上げられそうなもの、地域ニーズに響きそうなものをピックアップすることで、独りよがりでない、必要とされる「売り」を作り上げることができるようになるのである。
対外的に発信できる「売り」が定まれば、次に考えるべきはそれを効果的に発信する手段、つまり広告物の制作についてである。次回はそのポイントについて解説する。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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