営業活動ができない理由を分析する
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
営業施策を前進させる営業計画(前編)
- 介護施設における稼働率向上実務のポイントシリーズ。
- 営業施策について考える機会の多い本シリーズだが、着実に実行する仕組みとセットでなければ絵に描いた餅となってしまう。
- 営業計画から管理の手法について考察を深めていく。
営業活動は実践・実行が最も難しい
本シリーズでは稼働率向上をテーマに、営業活動に必要な考え方、具体的手法、効果の高いツールの作り方などについてお伝えしてきた。手前味噌ながら、それらの取り組みについて理解を深め、一つ一つできるところから着手されていれば、貴事業所の稼働率は間違いなく上向きになっていくものと確信しているところである。
しかしながら、残念なことに、現場ではそもそも学びを実践に移すこと自体が困難であり、学んだノウハウが生かされないケースがほとんどだ。言うまでもないことだが、現場は忙しく、実践・実行に移せる時間がない。
今月から営業強化に取り組もうと意志を新たにしたとしても、利用者や職員がその意図を積極的に汲み取ってくれるわけではない。そのような時に限り、利用者の救急対応が必要であったり、職員の急な体調不良による欠勤、設備の故障、アポなしの来客など様々な出来事があり、対応に追われることで一日が終わってしまう。
介護現場は生ものだと言われたりするが、生きた人間が数多くそこにいる以上、常に想定外の出来事が起き、対応に追われていくことはやむを得ないことであるとも言える。
しかし、それを受け入れ、諦めてしまっては、営業強化の取り組みなどを実施する機会は永遠に訪れないだろう。私たちは、やると決めたことは石にかじりついてでも取り組み、必ず成果を出すという強い意志があり、かつその意志を実現させるために必要な時間捻出の術を持っていなければ、どのような改善の取り組みも成功に結び付けられない。
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営業活動ができない理由を分析するための営業計画
では、どうすればよいのか。
前述のようなイレギュラーな出来事が営業活動のための時間を潰してしまっているのであれば、それらが次に起きたとしても営業活動に影響しないような準備をひとつずつ丁寧に行っていくしかない。それが曖昧なまま「現場は生のもだから仕方がない」で済ませてしまっていることが、必要な時間を失い続けている原因となっているのではないだろうか。
この解決に、本シリーズでは営業計画を用いることをお勧めしているので紹介する。ここでの営業計画とは、営業担当者の行動計画を指す。端的に言えば、営業担当者の来月の営業活動(訪問先)を具体的日程にまで落とし込むことを言う。例えば、毎月 50 件の営業訪問を課しているのであれば、その 50 件の訪問先と訪問日を前月のうちに割り振ってしまうのである。そのうえで、営業計画は実施記録も兼ねる形にし、実際に訪問した実績を記載できるようにしておくことも重要である。まずはここまでを準備いただくとよいだろう。
訪問予定(計画)と実訪問先が書かれていると、実際に計画通りに実践できたか、そうでないかが一目でわかるようになる。何月何日に営業しようと思ったが、できなかった。その記録が残ることが重要なのである。
営業活動を振り返るのは月に一回、翌月になってからなどなので、営業に行かなかった理由がすぐに曖昧になってしまう。しかし、しっかりと記録に計画通りにならなかった日時が残っていれば、その日何故予定通りにできなかったのかが思い出される。
その出来事を振り返り、丁寧に「次に同じことが起きたときに誰に任せるのか、もしくは起きないようにするのか」を検討することで、ひとつひとつ時間を奪われる芽を摘んでいくきっかけになっていくのである。
次回は後編ということで、計画書の使い方の続編についてお伝えする。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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