施設長が突然退職、新任の若手施設長が潰れそう/介護福祉の人財成長のリアル
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
介護福祉施設では、職員の退職は日常茶飯事。しかし、まさか特養施設長が突然退職することになるとは、予想だにしていなかった。
現場に与えた衝撃は計り知れない。後任に期待の若手施設長を抜擢するも、引継ぎがままならない中で苦労とトラブルの連続。このまま続けては、手塩にかけて育てた新施設長が潰れてしまう…。
しかし、ある講座をきっかけに新施設長は自信を取り戻す。施設運営は良い方向に回り始めたのである。
特養施設長の突然の退職!
私が理事長を務めている社会福祉法人寺内会の特別養護老人ホーム「テラ緑地公園」は激震に見舞われている。
立ち上げから15年間施設長を務めていた坂本が突如退職となったのだ。
急な病で即日入院となってしまったことは仕方がない。しかし、後任の人選は心づもりがあっても、育成までは行えていなかった。
施設長を空位にしておくこともできない。30代介護現場出身の新任施設長・野村を大抜擢することにした。
まじめで素直。介護サービスの本質を理解し、ユニットリーダーとして利用者や家族からの信頼も厚い。
生え抜きの介護職員の中でもピカイチの有望株である。
ただ、40歳前に引き継がねばならない事態になるとは、正直思ってもいなかった。手塩にかけて育ててきた職員だが、計画通りにはいかないものだ。
新施設長就任後、トラブルの連続
野村本人の施設長業務に対する意欲は高いので、問題はない。
しかし…野村の施設長就任後、上がってくる報告はトラブルの連続だった。
「ご家族からのクレームをいただいてしまいました。ご請求の件で誤りがあったようです」
「稼働率は先月比で2%減少しています。入院とご逝去が続いたことが影響しました」
「先月の実績は単月の赤字でした。申し訳ございません。原因は…わかりません」
安易に野村を責めることはできない。
通常であれば前任と現任とで入念に行われるべき引継ぎが、全くと言っていいほど行われていない。
ユニットリーダーの知識と経験のまま、唐突に施設全体を管理することになってしまったのだ。
法人は特養以外には地域密着型通所介護ひとつ、居宅介護支援事業所ひとつしかないので、特養の施設長業務を教えられる者はいない。
私? 私も銀行を定年退職後、地元に帰り社会福祉法人を立ち上げたクチだ。介護に対する思いは強いつもりだが、施設長業務を指導できる知識も経験もないのである。
潰さないためには、交代しかないのか
クレームの対応などは理事長の私が行えばいい。数字が悪いことも少しくらいは大目に見てもいい。しかし、この状態を長くは続けられない。
なぜなら、まじめで素直な野村のことだ。成果を気に病んで神経をすり減らしているに違いない。野村が潰れてしまうことだけは、何としてでも避けなければならない。
施設長を外部から招聘し、交代するしかないのか…。
頭を抱えたその時、メールに書かれた文面が目に飛び込んできた。
「はじめて学ぶ施設長」
??
私は、もう一度、その文面を見直した。
はじめて学ぶ施設長
経営者の悩みはそれぞれですが、共通しているのは「施設長を含む管理者・リーダークラスの育成が十分でない」という課題を抱えている点です。これを突き詰めると「施設長を育成できる人がいない」という根本があります。
「これだ!」私は叫んでいた。
施設全体をどうコントロールするか
その後のことを、お話ししよう。
私は野村に「はじめて学ぶ施設長 オンライン講座」を受講を勧めた。野村も素直に喜んで、忙しい時間をやりくりして、一日も欠かさず参加してくれた。
回を追うごとに、野村は自信を取り戻し、目を見張るほどの急成長を遂げた。
前任の施設長から引継がれなかった部分は言うまでもなく、前任の施設長ではできなかった施設全体のサービス力の向上にまで着手していった。
すでに、押しも押されぬ、立派な若手施設長に育ってくれた。
野村は講座で、一体何を学んだのか。なぜ、これほどまでに変わったのか。
曰く、「施設長業務の全体像を理解することができる仕掛けが多く、広い視野で施設内を見渡すことができるようになった」と言う。
それまでは、自身が介護職員出身であることから、介護職員に交じって介護業務を手伝いながらの施設管理だった。各専門職や事務の動きなどを把握できず、その結果、トラブルを引き起こしていたのだ。
講座で学んだことは、全体を見渡す「見方」である。加えて、財務・サービス・稼働率・職員管理など、業務ごとに押さえるポイントを知ったことで、効果的に施設運営全体をコントロールできるようになった。その結果、力を入れるべきポイントに注力できるようになったのだ。
得意の介護サービス力向上に注力しながらも、稼働率を戻すことができたし、利用者や家族のクレームも見逃すことがなくなった。
同じ立場の相談相手を持つ
私の目には、もう一つ要因があるように思う。それは、相談できる施設長の仲間ができたということだ。
施設長は孤独だ。仲間が多いようにも見えるが、最後の決断と責任は自分が負わねばならない。
人知れず悩んだり、一人で抱え込んだ問題を処理しきれずに苦悩したことも少なくなかったはずだ。
講座を受講したからと言って、施設長がその責任から逃れられるわけではない。しかし、同じ悩みや課題をかかえる同じ境遇の施設長同士、分かち合い、理解してもらえる相手がいるというだけで、気持ちがずいぶんと楽になったのではないか…。
もちろん、施設長業務は「そつなくできる」ことがゴールではない。
当たり前にこなせたうえで、そこからどのような施設にするのかが、本当の施設長の役割であると、私は考える。
もともと野村ならそれができると信じていた。しかしきちんと道のりを示せなければ、本人の持つ力を引き出すことができないのだと痛感した。岸にたどり着くまでの渡し舟を用意してあげられなければ、その思いも無に帰してしまう。
「はじめて学ぶ施設長講座」は、私たちにとって渡し舟だった。そんな気がしている。
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