重要な情報は手の届く範囲内にこそある/実行力を引き上げる人事のツボ
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業種
企業経営
- 種別 レポート
重要な情報は手の届く範囲内にこそある
株式会社日本経営 / 波多野 裕太
1次情報を貪欲に拾いに行く
経営者は毎日のように意思決定を求められます。そして、意思決定にあたり、「データ」は欠かせないものです。社員やお客様に関する定性データから、売上や利益などの経営に関する定量データまで、経営者のもとにはさまざまなデータが集まってきます。
一方、本当に重要な意思決定において、経営者が「データのみで経営判断をしているか?」と問われると、答えは言わずもがなNOだと思います。
むしろ、業績の良い会社の経営者ほど、自らの目や耳といった五感から得られる1次情報を大切にしている印象を受けます。つまり、データなどの2次情報で勘所を抑えながらも、最終的には”野生の勘”を大事にしているということです。最後のひと押しを決める1次情報を貪欲に拾いにいくからこそ、良い経営ができるのだと思います。
私のお客様の経営者には、意識して普段同じ道を通らないようにしている方がいます。身近な視覚情報についても、新鮮なものが入るよう拘っているということです。
現場の困りごとは現場にこそある
ところで、この意思決定にあたって、「これで、人を動かすことができるか」「このプランは、皆を巻き込んでいけるか」ということは、意思決定を大きく左右します。
私の支援先の人事部長で、人事制度改定にあたって社内外のキーマン一人ひとりと飲みに行き、根回しのために動きまわってくださった方がいました。
現場の困りごとは現場にこそあるという信条のもと、生の声をすくいあげ、根回しと合意形成を着実に行っていただきました。組織が大きくなり、複雑になるほど、同じ方向を向いて前に進むためには調整や合意形成に時間がかかります。
このように、意思決定する以上は合意形成にいたり、実行に移す必要があります。この合意形成についても、1次情報をどれだけ拾えるかが、解決の糸口を見つけられるかを決めます。
特に、人や組織間に軋轢や摩擦がある場合ほど、1次情報を拾いに行く姿勢が肝心です。1次情報は事実だけではなく、関係者の心情や想いを含みます。人を動かすときこそ、1人ひとりの心情に寄り添い、人情に訴えかけることが大切だと思います。
重要な情報は手の届く範囲内にある
意思決定において、「野生の勘」と「現場の合意形成」が必要で、それには「1次情報」にいかに触れるかが重要だと述べてきました。
では、この1次情報はどこにあるのでしょうか?
私は半径5mの手の届く範囲内にこそ、重要な情報が溢れているのではないかと思います。これは経営者に限った話ではありません。
例えば営業職であれば、半径5m以内で繰り広げられる様々な場面を注意深く観察し、リアルタイムで情報をキャッチすることで、スピード感と競争力のある営業活動が可能となります。
私の場合、月に1度研修業務で訪問するお客様がいます。30人程度の管理職の表情を前から見渡すと、今の組織状態がなんとなくわかります。研修終了後に「皆様、おつかれのようですね」とお声掛けすると、「実はこんなことがあって」と、重要な情報を教えていただけます。
このように、1次情報は実は目の前にあるのです。改めて半径5mの手の届く情報に気づくセンスをどう磨き、どう活かすか、今一度考えてみると、大きな経営のヒントが隠れているかもしれません。
このレポートの解説者
波多野裕太(はたのゆうた)
株式会社 日本経営 コンサルタント
東日本の企業に対して、人事制度の導入・見直し、組織文化・風土の改革、人事改革を通じたグループガバナンスの構築、キャリアパスの作成などの業務に携わる。顧客層はスタートアップから上場企業までを幅広く支援。
「笑顔溢れる組織作り」をモットーに、現場に深く入り込んだ支援で定評がある。明るいキャラクターと起爆剤としての熱量が武器。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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