適切なNOを言えるマネージャーを増やすために/実行力を引き上げる人事のツボ
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業種
企業経営
- 種別 レポート
適切なNOを言えるマネージャーを増やすために
株式会社日本経営 / 波多野 裕太
働き方改革により労働環境の改善が進んでいますが、その一方で、管理者層に過剰な負担がかかっているケースも増えているようです。
「ハラスメント防止法の施行」「ダイバーシティの推進」「働き方の多様化」などにより、個々の労働者のマネジメントがますます難しくなっています。
さらに、「若者の管理職離れ」が進行しており、管理職を目指す若者が減少していることも経営者の悩みの種となっています。
インタナショナル新書『罰ゲーム化する管理職』(小林祐児著)が話題になるほど、多くの企業で管理職が疲弊しています。
マネージャーに限らず、若手から経営層まで、働く全て人に共通する重要なリソースの一つは「時間」です。
1日の法定労働時間は8時間であり、これは全ての労働者に等しく与えられています。しかし、この8時間をいかに効果的に使うかということは、個人に委ねられる部分が多いのも事実です。
マネージャーへの過大な負担は組織や制度の構造上の問題でもありますが、マネージャー自身ができる最良の対応策は、自分が実現すべき成果を理解し、その成果に直結する取り組みにしぼって「時間」を使うことです。
別の言い方をすれば、成果につながらない取り組みには積極的にNOを言う必要があるということです。
YESばかりのマネージャーは疲弊する
一般的に、若手の頃は、「来るもの拒まず」で仕事に取り組む人ほど、成長スピードが速いのです。
「はい」か「YES」か「よろこんで」と返事をする人ほど、上司からもかわいがられ、よりチャレンジングな仕事の機会を得ることでしょう。
しかし、マネージャーが若手時代の勢いをもってYES返事ばかりしてしまうと、必ずと言っていいほど疲弊してきます。
なぜなら、時間というリソースには限りがあるからです。
時間は人間にとって有限な資源であり、1時間の会議に参加することにYESと言ったら、必然的に他のことにはNOと言っていることになります。
仕事に追われていると、1つのYES返事をしたがために膨大な時間を失ったことに気づかないことがあります。
皆に等しく与えられた一定の時間の中で、何かを選択したときには、それ以上に何かを捨てていることを自覚しなければなりません。
経営層やマネージャー同士でも、互いの時間を尊重することが求められます。
仮に、1時間あたりのマネージャーの人件費が1万円とします。
10人のマネージャーが毎週1時間の会議を開催する場合、月に40万円、年間で480万円のコストがかかります。
例えば、モノやITシステムに480万円の投資をするとなると、経営会議で厳密に審議されるはずですし、また、年収480万円の新しい従業員を採用するには、何段階かの採用プロセスを経て合否を厳しく判断するでしょう。
しかし、年間480万円の会議の場合は投資判断のプロセスを経ずに、「集まりましょう」の一言だけで開催できてしまうのです。
全ての会議に出席してはいけないというわけではありません。
目的が不明瞭、あるいは優先順位が低い会議にNOということで、限られた経営資源、すなわち「マネージャーの時間」や「気づかぬうちに投資しているカネ」を、より成果を最大化させるために必要なことに割り当てることができるのです。
適切なNOを言えるマネージャーを増やす方法
マネージャーが適切にNOを言うためには、何に対してNOを言うべきかを判断する必要があります。
マネージャーが何に対してNOと言うべきか。考え方は至ってシンプルです。
『YES・NOの判断軸は、「マネージャーが達成すべき成果」にあたる、管掌組織の目標達成に繋がることか否かです。』
ただし、管掌組織の目標達成にばかり気をとられていると、自部門優先・他部門軽視といった「部分最適」に陥りがちです。
マネージャーが影響を与える関連組織、さらには会社全体の目標達成も視野に入れることが重要です。
マネージャーが実現すべき成果については、等級や人事評価制度で明文化すると良いでしょう。
図のように、成果への意識が低い社員は、仕事や業務にのみに意識が向いていることがよくあります。
何を実現すべきか、自分の果たすべき役割の理解が深まるほど、効果的・効率的な時間の使い方ができます。
さらに、実現すべきことの達成度を評価する仕組み導入することで、マネージャーの意識が変わります。
また、マネージャーが正しく成果を理解するためには、経営者とのコミュニケーションが不可欠です。
経営者が組織の役割や機能、実現すべき成果を明確にすることで、結果として適切なNOを言えるマネージャーを増やすことができるのです。
自らが実現すべき成果を認識し、力強いYES/NOが言えるマネージャーを育成していきましょう!
このレポートの解説者
波多野裕太(はたのゆうた)
株式会社 日本経営 コンサルタント
東日本の企業に対して、人事制度の導入・見直し、組織文化・風土の改革、人事改革を通じたグループガバナンスの構築、キャリアパスの作成などの業務に携わる。顧客層はスタートアップから上場企業までを幅広く支援。
「笑顔溢れる組織作り」をモットーに、現場に深く入り込んだ支援で定評がある。明るいキャラクターと起爆剤としての熱量が武器。
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