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中期経営計画に基づいた経営の効用/日本経営のケイエイ

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

(株)日本経営での取り組みや私が考えていることなどを発信しています。
皆様の経営のヒントや新たなアイデアなどにつながれば幸いです。

中期経営計画に基づいた経営の効用

株式会社 日本経営 / 代表取締役社長 橋本竜也

中期経営計画に関心のある経営者や経営企画の担当者は多いのではないでしょうか。しかしながら、「作る価値があるのか?」「変化が激しいのに先のことなどわかるのか?」「作るとしたら正しいフォーマットがあるのか?」などの疑問も少なくないはずです。そこで、当社の実際の中期経営計画をご紹介するとともに、経営での活用について解説します。

コンサルティング会社の中期経営計画を皆様に公開

当社では、3ヵ年の中期経営計画を柱にして経営を進めています。どのような会社にしていきたいのか、どこに向かって進んでいくのか、何に重点的に取り組むのか、そして何を従業員に約束するのかをまとめた重要な内容ですから、丁寧に従業員と共有しています。
当社は10月が事業年度のスタートで、2024年10月 から新中期経営計画がスタートしました。この度、当社の中期経営計画の説明動画と資料をアップしましたので、よろしければご覧ください。

※上記ページより、動画視聴、資料をダウンロードいただけます。

中期経営計画に正しいフォーマットがあるわけではありませんので、一つの事例としてご覧いただき、ご参考にしていただける部分があれば幸いです。

未上場企業である当社が中期経営計画を公開している理由は、次の2点です。

  1. 当社の重点方針を知っていただき、協業や企画などの有益なご提案をいただきたいから。
  2. コンサルティング会社として、自社の経営手法を公開すべきだと考えているから。

中期経営計画を通じて当社を知っていただくことで、よりよいご提案をいただけたり、協力関係が作れたりすることを期待しています。そして、この動画については2点目のところです。当社はコンサルティング会社として、お客様の経営支援を担っているわけですが、お客様からすれば「日本経営の経営はどうなの?」という関心をいただくのは当然です。そこで、今回は当社の経営の根幹をなす中期経営計画を公開し、その効用について解説していきます。

中期経営計画は企業経営に必須なのか?

欧米では、中期経営計画を作成している企業は少ないと言われ、日本の独特な経営手法とも言われています。欧米企業は、短期利益にコミットする傾向が強いからだと思われるかもしれませんが、そうとは限りません。欧米企業がコミットしているのは、むしろ中期的なミッション・ビジョンの実現であり、そのためには細かい計画よりも日々の柔軟な取り組みを重視するので、詳細な中期経営計画を作らない傾向があると言われています。

一方、日本企業は、ミッション・ビジョンよりも中期経営計画の達成にコミットしがちで、柔軟性が低いと指摘されることもあります。とは言え、それも一律ではありません。詳細な数値計画を作成する企業もあれば、経営方針がまとめられているという企業もあります。これらのことから言えるのは、中期経営計画に対するイメージは人によって違い、だいぶ幅が広いということではないでしょうか。

こうしたイメージの違いもあり、中期経営計画を作成しても無意味だとか、なくても順調に経営ができている会社もたくさん あるという意見は少なくありません。もちろんその通りですが、だからと言ってそれは「中期経営計画を作ると経営が悪くなる」ということにはならないでしょう。

そのため、必要だと思う会社は中期経営計画を作成し、それに基づいた経営をすればよいと私は考えます。当社は、全従業員が経営の目的を共有し、同じ方向に向かって一人ひとりが自律的に仕事をしていくためのベースとして、中期経営計画はとても価値のある経営手法であると考えています。実際、中期経営計画に基づいた経営を徹底してから、当社では、明らかに成長力が高まっています。従業員とともによい会社をつくっているという実感も得られています。

中期経営計画の目的と効果

中期経営計画の目的は「企業の成長発展のために、全従業員の力を活かした経営をすること」だと考えています。この目的を踏まえて中期経営計画を作成すると、私は次の3点の効果があると実感しています。

①従業員の主体的行動が促進される

よくある従業員の不満の一つとして、「会社がどうしたいかわからない」「上層部が何を考えているかわからない」ということがあります。これは、裏を返せば、会社はどこに向かって経営されているのか、どのようなことを重視して経営しているのかといったことを従業員は知りたがっているということです。

なぜ知りたいのでしょうか?知っていれば、それに沿って企画を考えたり、情報収集したり、上司に提案したりすることができます。上層部の考えがわからなければ、どう動いてよいかわかりませんし、「これはやってもいいことなのか?」と迷ってしまい、場合によっては「うちの会社は大丈夫なのか」と疑心暗鬼に陥ってしまうことすらあるかもしれません。

中期経営計画の最大の効果は、それを共有することで、従業員が主体的に行動できるようになることだと考えています。少なくとも、主体的に行動したいと考えている従業員にとっては、非常に価値があります。経営層の思いもよらないようなアイデアや工夫が生まれてくるのは、本当にうれしいことです。

②従業員の誇りにつながる

従業員が、中期経営計画を自分事にできれば、一人ひとりの誇りになるでしょう。例えば、「役員たちが勝手に作ったもので、私たちには降りてきただけ」などと受け止められてはむしろ逆効果です。魅力的なビジョンを示し、その実現に向けてどのように進んでいくのか、何に重点を置いて取り組んでいくのかを示し、トップが魅力的に語れば、従業員の自分事化が進むはずです。大事なことは、よりよい会社になることを目指して本気で取り組んでいる会社だと実感できることです。中期経営計画にきれいごとを並べれば従業員が喜ぶということではありません。現実をリアルに直視し、それを踏まえて従業員、顧客、社会にとってよりよい会社にしていく計画を作成し、そこに全員が本気で取り組むということが大事でしょう。そうした会社には、人も集まってくるものです。

③ブレない経営ができる

中期経営計画を立てて、それに沿って毎年の年度計画を具体的に作成することで、ブレない経営をすることができます。これは、変化の激しい時代に経営をする中では、とても重要なことではないでしょうか。中期経営計画を作成するとそれに縛られてしまい、柔軟性にかけるのではないかという疑問もあるかもしれません。しかし、そうではありません。中期経営計画に沿って経営するということは、それがうまくいっているかどうかも検証しながら経営をするということです。うまくいっていればさらに強化することもあるでしょう。うまくいっていなければ見直しますし、場合によっては抜本的に変更することもあるかもしれません。こうした対応は中期経営計画があるからできるのであって、思い付きで行うわけではありません。そういう意味で、土台のあるブレない経営ができるのです。これは経営陣にとってはとても心強いですし、従業員にとっても安心できることではないでしょうか。

わかりやすい中期経営計画の構成

中期経営計画には決まったフォームがあるわけではありません。従業員が納得し、行動に移せる組み立てになっていればどのような形でもよいでしょう。当社においては、従業員が理解し、納得が高まるように、次のような構成で作成しています。

①ミッション・ビジョン
何を実現しようとしているのか、どのような会社にしようとしているのかを示す。
(従業員に、顧客に、社会に対するミッション・ビジョン)
②重点戦略
どのようにしてミッション・ビジョンを実現するのか、その事業戦略の柱を示す。
③組織体制・機能
戦略を動かしていく組織体制や会社の機能、役割を定義し、それら機能、役割の向上策を示す。
④実行力向上施策
効果的に戦略を実行するための各種施策やモチベーション向上施策、組織・人事施策を示す。

簡単に整理すると、どのような会社にしたいのか → どのような事業によってそれを叶えていくのか → 戦略をうまく進めるためにどのような組織にするのか → 組織が効果的に機能するためにどのような工夫をするのか という流れです。大きな構成としてこのようにまとめると、従業員にとってわかりやすく、腹落ちしやすいですし、何より経営陣が説明しやすい。つまり、ストーリーとして説明できることがポイントということです。

抽象度のコントロールは経営の腕の見せどころ

ところで、中期経営計画を作成するにあたって特に悩ましいことは何かといえば、どれくらい具体的にするかということではないでしょうか。この具体化のイメージの差が 、中期経営計画の必要性に対する認識の違いに影響しているかもしれません。つまり、数年先のことを具体的に示せないということです。

結論から言えば、具体的過ぎる中期経営計画は従業員の主体性を損なわせてしまう恐れがあります。なんでも具体的であるほうがよいと思いがちですが、具体的であればあるほど、従業員には考える余地がなくなり、指示されたことをするだけ、やらされ仕事という感覚にさせてしまう傾向があります。経営層が考えたことを実現するのが現場という経営スタイルではなく、全従業員の力を活かして企業成長を実現しようという経営スタイルであれば、ある程度抽象的である必要があります。

この抽象度のコントロールがとても難しく、腕の見せ所でもあります。当然ながら抽象的でありすぎれば、何もイメージできません。具体をイメージしながら抽象度を上げていき、もう一度具体に落とし込み、さらに抽象度を調整していく。一橋ビジネススクール教授の楠木建氏が「抽象と具体の往復運動」とよく言われていますが、まさにそのことなのだと思います。従業員がイメージでき、なおかつ自分の考えを入れる余白を残したギリギリの抽象度を攻める、この技術を磨く必要があるでしょう。

とは言え、あえて抽象度を残して作っても、「もっと具体的に説明してほしい」と従業員に言われることもあります。そうした意見に対して当社では、「皆さんには具体化する力があると信じているので、皆さんの考えを入れてほしい。イメージがつかめないということであれば、対話して、一緒に考えましょう。」と伝えています。

ところで、中期経営計画というと数年先まで見越した細かい数値計画をイメージする人もいるという話をしました。決まったフォーマットがあるわけではないので、これも中期経営計画と言えますが、結論から言えば、あまりよくないと思います。それは、抽象度がなさすぎるということもありますし、それこそ中期的な実績をそこまで具体化できないからです。具体化するために膨大な時間をかけるほどの効果は得られないでしょう。

中期経営計画は業績予測ではありません。経営目的、ミッション・ビジョンを実現するための重要方針書というくらいの捉え方がよいと思います。重要方針とは、何に力を入れていくのかを示したものです。

当社の中期経営計画の作り方とスケジュール

中期経営計画を作成するのにどれくらい時間をかけるべきか、トップダウンなのか、ボトムアップなのかなど、いくつかの論点があり、どのような方法をとってもメリット・デメリットがあると思います。そこで、最後に当社ではどのようなスケジュールで中期経営計画を作成したのかをご参考までにご紹介します。


2023年10月~2024年1月

役員が協議し基本案作成


2024年2月

役員と部長クラスで協議


2024年3月~5月

協議を踏まえ役員会で計画のブラッシュアップ


2024年6月

役員と部長クラスとの第2回協議


2024年6月末

中期経営計画完成


2024年7月

全従業員に発表、新年度経営計画作成スタート


2024年10月

新年度スタート


たたき台は私が作成し、役員と協議しながら作り上げていったのでトップダウン的な進め方です。ただ、部長との長時間の対話の機会を2回作ったので、部長クラスが中期経営計画を自分事化できており 、従業員への発表時には共有がスムーズでした。従業員への発表においては、終了後にグループディスカッション形式で、感想や疑問、不安の共有をして、自分事化を促しています。このようにかなり時間と手数をかけて作成していますが、中期経営計画が固まっているので、新年度の経営方針作成にはあまり時間をかけていません。中期経営計画の内容を単年度に落とし込むだけです。従業員との共有もスムーズで、新年度の始まりとともに、一丸となって新たな取り組みを始めています。

大変長文になりましたが、今回は当社における中期経営計画をご説明しました。ご参考になることがあれば幸いです。もっと詳しいことを知りたいという方、「本当にきちんと運用しているの?」といった疑問のある方、ぜひ当社の従業員にお問い合わせください。

※上記ページより、動画視聴、資料をダウンロードいただけます。

※これまでの記事は、こちらからご確認いただけます

このレポートの執筆者

橋本竜也
株式会社 日本経営 代表取締役社長
組織人事コンサルタント

1999年入社以来、人事コンサルティング部門にて、クライアントの人事制度改革に携わるほか、不採算企業の経営再建にも従事。コンサルティング実績は上場企業から中堅・中小企業まで150社を超える。「良い経営は人を幸せにする、悪い経営は人を不幸にする」を基本スタンスに、人事コンサルティングや経営顧問を行っている。
<著書>
「チームパフォーマンスの科学」幻冬舎2021年12月
「中小企業の未来戦略を具現化する!組織マネジメント実践論」プレジデント社2022年10月

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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