中小企業こそサクセッションプランを/実行力を引き上げる人事のツボ
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業種
企業経営
- 種別 レポート
中小企業こそサクセッションプランを
株式会社日本経営 / 波多野 裕太
中小企業にとって、後継者の育成は企業の未来を左右する重要な課題です。
しかし、後継者計画(サクセッションプラン)というと、大企業や老舗企業の専売特許のように感じるかもしれません。実際には、中小企業こそ積極的に後継者育成に取り組むべきです。
持続的な成長を遂げるためには、社員一人ひとりが成長し、キャリアを通じて企業に貢献できる仕組みが鍵となります。
そこで、経営者や人事部の皆さんに問いかけます。
- 社員の成長を促すための計画はありますか?
- 社員が自らのキャリア成長に責任を持つよう、会社として支援していますか?
- 社員が何を望んでいるか、理解していますか?
”盲点”を埋める育成の仕組み
中小企業での後継者育成は、組織の規模が小さいからこそ、一人ひとりにパーソナライズされた柔軟な対応が可能です。
社員数が500名程度までであれば、経営陣は次期幹部候補の顔と名前、働きぶりが一致していることでしょう。
後継者として期待される優秀な社員は自らのスキル不足に気づく力を持っている場合もありますが、それだけでは不十分です。企業や上司の役割は、自分では気づくことのできない”盲点”を気づかせて、成長のためのフィードバックや挑戦の場を提供することです。
また、後継者候補同士が部門横断的なプロジェクトに取り組むことで、企業全体の視点を持ち、彼ら自身が「この会社で、この仲間たちと未来を築きたい」という思いを共有できる仕組みも重要です。
「チャレンジできる環境」に加え、「この会社だからこそ挑戦したい」と思わせる仲間の存在が、中長期的な組織貢献意欲を芽生えさせるのです。
組織全体で育てる文化
後継者育成は組織全体の取り組みであり、経営幹部や現場リーダーに限らず、全社員が自分の成長と能力開発に責任を持つべきです。特に中小企業では、社員一人ひとりの役割が組織の成功に直結しています。
例えば、経営陣によるサクセッション会議を通じて、育成対象者に必要な経験やスキル、知識を洗い出し、成長の機会を提供することが重要です。
新しいプロジェクトへの参加や、社外での研修機会を通じて、社員の視野を広げることができます。中小企業ならではのフットワークの軽さを活かして、個々の社員に合わせた柔軟な成長機会を提供することが可能です。
定期的な評価やフィードバックを通じて、社員のキャリア目標と企業のニーズを一致させる取り組みも欠かせません。
実際に私の部門で行っている取り組みを紹介します。
期初のキックオフ会議では、全員が「自分が得たいこと」と「他者が期待すること」を発表し合います。各メンバーが2分で目標を発表し、その後、13分間で他者からの期待を共有し、質疑応答を行います。
本人が得たいもの、そして周囲が期待することを明確にすることで、根拠のある配置や、プロジェクトチームの組成ができます。
また、中間期にはKPT(Keep, Problem, Try)のフレームワークを用いて振り返りを行い、達成度を確認しながら後半の軌道修正をします。
期末には、良かったプロセスやエピソード、改善すべきポイント、そして「最高の瞬間」をシェアすることで、組織全体の成長を促しています。
このような全社員を対象にした育成施策は、サクセッションプランの一環として、後継者候補だけでなく、組織全体の成長を支えるものとなります。スキルや経験に偏りがある社員には新たなチャレンジを促し、同一等級に長く在籍する社員には、キャリアのニーズを確認することも重要です。
柔軟で創造的なサクセッションプランで未来に投資する
中小企業における後継者育成は、単なる「次のリーダー探し」にとどまりません。むしろ、組織全体の成長を支える戦略的な取り組みとして捉えるべきです。責任者同士が横断的にディスカッションを行い、優秀な社員に新しいチャンスを提供する。そして、全社員が成長とキャリア開発に責任を持ち、組織の未来を共に築いていく文化を形成することが重要です。
中小企業こそ、柔軟で創造的なサクセッションプランを導入し、企業の未来に向けた強固な基盤を築いていきましょう。
このレポートの解説者
波多野裕太(はたのゆうた)
株式会社 日本経営 コンサルタント
東日本の企業に対して、人事制度の導入・見直し、組織文化・風土の改革、人事改革を通じたグループガバナンスの構築、キャリアパスの作成などの業務に携わる。顧客層はスタートアップから上場企業までを幅広く支援。
「笑顔溢れる組織作り」をモットーに、現場に深く入り込んだ支援で定評がある。明るいキャラクターと起爆剤としての熱量が武器。
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