毎週の動画メッセージ /日本経営のケイエイ

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業種
企業経営
- 種別 レポート

(株)日本経営での取り組みや私が考えていることなどを発信しています。
皆様の経営のヒントや新たなアイデアなどにつながれば幸いです。
毎週の動画メッセージ
株式会社 日本経営 / 代表取締役社長 橋本竜也
全体朝礼から動画配信へ
当社では何十年も前から毎週月曜日の朝は全従業員で集まって、全体朝礼を実施していました。社訓の唱和から始まり、社長のスピーチ、連絡事項の共有などをしてきました。大阪の本社から拠点が広がっていくと、テレビ会議などを利用して朝礼を続けてきました。
ところが、コロナ禍が起こり、全体朝礼が実施できなくなりました。それを機に全体朝礼は毎週月曜日の動画配信になりました。私も2023年10月の社長就任以来、「Weekly Message」として毎週10分程度の動画を配信しています。見ている人は何倍速かで7,8分程度で見ていると思いますが。
社長就任以来、1年間は私が一人で担当していましたが、各役員の話も聞いてもらいたいので、今は橋本→役員A→橋本→役員Bという形で、私と他の役員が交互に担当しています。
共有することが大事
私は、経営陣が考えていることや大切にしたいことなどを全従業員と共有することを非常に重視しています。なぜなら、トップの方針や考えを知ることで、従業員は自分がどう動いたらよいかと考えることができるからです。あるいは、自分が進めていることの目的や意義を理解する機会にもなります。さらには、会社の良いことも良くないことも知ることで信頼感が生まれます。こうしたことにより、従業員は主体的に行動しやすくなります。つまり、経営者・経営陣が自分の考えや方針を共有することは、従業員の主体的行動の発揮につながるのです。
全従業員の力を活かしきれば、経営陣だけではできない企業の成長を実現することができます。人材という資産を活かして企業を伸ばしていくためには、経営のオープン化とそれによる従業員の主体性の発揮は、非常に重要なことだと位置付けています。
Weekly Messageで何を伝える?
ところで、どんな話をしているのかと聞かれることが多いのですが、以下のようなことを発信しています。
① 会社の方針(忘れないように折に触れて) ② 業績の状況(週次、月次) ③ 大切にしてほしい考え方 ④ 共有したいトピックス(成果、特筆すべき取り組みなど) ⑤ 社内の懸念事項、問題意識、注意事項 ⑥ 同じ話の繰り返し |
③の大切にしてほしい考え方では、例えば今までに次のような話をしてきました。
「自分で決める」「未来の自分に期待する」「顧客に敬意を払う」「経営の抽象度」「一つの契約の重み」
また、フジテレビのコンプライアンスの問題があった際には、2023年に発信している意思決定・行動の基本指針の次の部分について改めて周知しました。
「異性の顧客と一対一など、懇親のお誘いに不安を感じる場合は、たとえ相手が重要な顧客であっても断って構いません。」
考え方や方針などは意識し続けることは難しいので、いろいろな角度で繰り返し伝え続けています。
さて、中でも特に大事にしていることが、「⑥同じ話の繰り返し」です。 私が繰り返している同じ話は、「顧客は誰か、顧客にとってどのような価値があるかを考え続けること」「目的は何かを常に意識すること」です。経営者の方には、それぞれ大切にしている考えがあるのではないでしょうか。そういうことを発信し続けるのがよいと思います。
「橋本社長はいつもこの話だよな」と半ばあきれられるくらい徹底してちょうどよいと思って伝え続けています。それは、私が当社の経営において軸にしていることだからです。
方針共有が生んだ数々の成果
上記の通り、経営方針は折に触れて説明し続けています。経営方針発表会だけでは共有しきれないからです。そして、共有し続けると従業員が主体的に行動してくれます。
2025年4月15日に当社と台北医学大学の共催で「日台医療連携シンポジウム ~両国の強みで切り拓く未来~」を台北医学大学で開催しました。大きな関心を集めるイベントとなり、台湾の複数のメディアにも取り上げていただきました。
この取り組みは、重点経営方針の一つである「周囲から認められる専門性の向上」について従業員が考え、企画し、実現させてくれたものです。経営陣から指示したものではありません。ご存じの通り、台湾はDXが非常に進んだ国です。医療機関に強いコンサル会社として、日本の医療界にさらなる貢献ができるものと考えています。
その他にも大規模なプロジェクトにチャレンジして受託したり、部門間で連携してマーケット開拓を成功させたりと、現場の主体的な取り組みによる成果が実現できています。私は従業員からの報告に驚かされるばかりですが、こうしたことは従業員が経営方針や大切な考え方を共有してくれているからこそだと思っています。
何をするかを指示するのではなく、何を実現するのか、どういう方向に向かうのかを共有し、実行は現場の考えを活かすということが大切だと考えています。
撮影方法、視聴確認、浸透のさせ方
最後に少し実務的なことをご紹介します。まず撮影方法ですが、パワーポイントの録画機能を使ってスライドショーに録画し、それを動画に変換しています。そのため、特別な機材は使っていません。十分な動画をパワーポイントで手軽に作成できます。
ただ、私は10分くらいの動画を撮影するのに40分くらいかかっています。あの言い方はまずかったとか、もう少し表現を変えようなど、何度もやり直しているからです。毎週やっていますが、まだ一発撮りは実現していません。でも、パワーポイントは何度も途中からやり直せるので便利です。
次に、動画に変換したデータを自社開発のE-ラーニングシステムにセットします。これで、全従業員が自分のIDで視聴することができるので、誰が視聴したかを把握することができます。ただ、当社では任意視聴としているので、視聴していないからといってペナルティなどはありません。当社の視聴率は80%弱です。100%を目指したいところですが、そのためには、Weekly Messageを見たほうがより良い仕事ができると理解してもらうことが大事だと思っています。
動画を視聴したからといって、内容が共有されると思うのは甘いでしょう。見ただけということは当然起こります。そこで、特に部門長には、自部門の朝礼でWeekly Messageの内容に触れるとか、仕事の中で話題にあげたりすることをお願いしています。インプットとアウトプットを通じてただ伝えるのではなく、「共有」を深めていく必要があります。
皆さんも様々な形で発信をされていると思います。当社の方法が最良とは思っていませんが、何かの参考になれば幸いです。
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このレポートの執筆者

橋本竜也
株式会社 日本経営 代表取締役社長
組織人事コンサルタント
1999年入社以来、人事コンサルティング部門にて、クライアントの人事制度改革に携わるほか、不採算企業の経営再建にも従事。コンサルティング実績は上場企業から中堅・中小企業まで150社を超える。「良い経営は人を幸せにする、悪い経営は人を不幸にする」を基本スタンスに、人事コンサルティングや経営顧問を行っている。
<著書>
「チームパフォーマンスの科学」幻冬舎2021年12月
「中小企業の未来戦略を具現化する!組織マネジメント実践論」プレジデント社2022年10月
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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