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家業から企業へ―事業承継を成功させるカギは創業者の「想い」の言語化にある

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

「自分が現場を離れたら、この会社はどうなってしまうのか」
事業承継を検討し始めた経営者が突き当たるのは、こうした拭い去れない不安です。多くの中小企業は創業者の情熱とリーダーシップによる「家業」スタイルで成長を遂げますが、この「人」に依存した運営は、承継を意識した瞬間に大きな壁となります。社長の経験や勘が意思決定のすべてである状態では、判断基準が言語化されず経営がブラックボックス化してしまうからです。

その結果、次世代は判断基準を見失い、人だけで回してきた組織のあり方が、承継後の再現性を阻む深刻な課題へと変わります。

この属人的な家業を、組織で動く「企業」へとアップデートすることこそが、事業承継の成否を左右します。本レポートでは、経営の近代化に不可欠な「4つの経営機能」の整理を通じて、創業者の想いを仕組みへと移し替え、永続可能な組織へと進化させる具体的な道筋を解説します。

「家業」と「企業」の決定的な違い

「家業」とは、創業者の感覚で判断が回り、社長がいないと意思決定が止まり、ルールよりも“人”で運営されている組織の状態を指します。良くも悪くも社長個人の力量に依存しており、スピード感はあるものの再現性に乏しい運営形態です。

一方で「企業」とは、以下の3要素を備えた組織を意味します。

  1. 判断基準が言語化されている
  2. 役割と権限が整理されている
  3. 誰が経営しても一定の品質で運営できる

このように、仕組みによって自走する組織を意味します。

事業承継に向けて本当に必要なのは、この状態へと会社を転換させることなのです。
しかし多くの家業のトップは、「何から手を付ければよいのかが分からない」という悩みを抱えています。
そこで非常に有効なのが、私たちが支援の軸としている「4つの経営機能」という整理フレームです。

家業から企業へ変わるために必要な「4つの転換」

家業から企業へ進化するとは、創業者の個人能力に依存した経営から、構造で再現できる経営へと転換することです。
私たちは、この進化には次の4つの構造的転換が必要だと考えています。
実はこの4つの機能は、単なる整理フレームではありません。
経営の属人性を解きほぐし、再現性ある組織へと進化させるための“構造的な転換ポイント”そのものです。

  • 【方針】暗黙知を言語化する転換
  • 【戦略】感覚経営をロードマップに基づく戦略経営へ変える転換
  • 【役割】社長個人への依存から、役割と権限の分担へ変える転換
  • 【行動】個人の力量による成果から、仕組みによる組織成果へ変える転換

これらの転換を体系的に整理し、実行可能な形にしたものが、次に解説する「4つの経営機能」です。

事業承継の土台をつくる「4つの経営機能」

組織が継続的に成長し続けるためには、次の4つの機能がバランスよく整っている必要があります。

①トップ方針(社長の頭の中にある“判断軸”の言語化)

何を大切にする会社なのか。お客様に対してどのようなスタンスで向き合うのか。社員に何を求め、どんな価値観を重視するのか。これらは本来、経営者の中に明確に存在しています。しかし多くの家業の会社では、それらが「なんとなく」のまま運用されています。事業承継で最初に必要なのは、社長のイズムを組織の共通言語に変えることです。ここが曖昧なままでは、どれだけ優秀な後継者がいても、組織は迷い続けてしまいます。

②戦略・計画(感覚経営から、共有できる目標へ)

3~5年後にどこを目指すのか。重点的に取り組む分野は何か。どんな順番で会社を成長させていくのか。これらを明確に言語化し、組織全体で共有できるロードマップとして整理することが、家業型組織から企業型組織への大きな転換点となります。

③役割・権限(社長に集中した権限の棚卸し)

家業型の組織では、重要なことはすべて社長が決める構造になりがちです。
しかし、承継後にその重圧を解消するためには、以下の整理が不可欠です。

  • 部門の役割の明確化
  • 管理職の職責整理
  • 権限委譲の設計

ここを整理しないまま後継者に交代しても、結局は次の社長がすべて抱え込む”構造が続いてしまいます。

④実行プロセス(成果を再現する組織運営の仕組み)

どれだけ良い方針や戦略があっても、現場で実行されなければ意味がありません。

  • 成果を出すためのノウハウ共有
  • 情報共有の仕組み
  • 管理職のマネジメント力向上
  • 行動を促進する仕掛け

これらが整って初めて、組織としての再現性が生まれます。

まず取り組むべきは「制度づくり」ではない

また、多くの家業型の経営者が誤解しやすいのが、「家業から企業へ変えるためには、まず何かしら仕組みや制度を入れなければならない」という発想です。しかし実際には順番が逆です。

土台となる経営方針や創業者の想いが固まっていない状態で制度だけを導入しても、それは箱だけが立派で中身が伴わない状態になり、現場には形骸化したルールだけが残ってしまうからです。

制度はあくまで、4つの経営機能が整理された後に初めて活きてくる“次のステップに過ぎません。大切なのは、いきなり仕組みを入れることではなく、以下のプロセスを通じて「経営者の考えを言語化する土台」を整えることです。

  1. 社長の想いを言葉にする
  2. 経営の方向性を整理する
  3. 役割と権限を明確にする
  4. 実行の流れを整える

このプロセスこそが、「家業から企業へ」の本当の第一歩なのです。

第三者の視点が「想い」を「仕組み」に変える

しかし、これらを社内だけで進めるのは容易ではありません。

  • どこから手を付ければよいのか分からない
  • 経営者自身では言葉にしきれない
  • 客観的な視点がほしい

こうした声を、私たちは数多くの経営者から伺ってきました。そこで当社では、制度をつくる前に「4つの経営機能」を軸とし、まずはコンサルタントによるヒアリングから支援をスタートします。

事業承継とは、会社の歴史そのものとも言える想いを次世代へつなぐプロジェクトです。その想いを言葉にし、経営の軸を整理し、組織の共通言語に変えていく。それこそが「家業から企業へ」の本質です。私たちは、その最初の一歩である「4つの経営機能の整理」を通じて、泥臭く全力で伴走します。

事業承継は、“いつか”ではなく“今”からの準備が成功を左右します。
まずは50分、御社の現在地を一緒に整理するところから始めてみませんか。

本稿の監修者

松本 侑也(まつもと ゆうや)
株式会社日本経営 組織人事コンサルティング部

飲料メーカーで営業業務に従事した後、日本経営に入社。入社後、一般企業を対象とした人事コンサルティング業務に従事し、人事評価制度の導入・見直し、賃金制度の改革、階層別研修の企画・実施など、幅広い領域で支援を行っている。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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