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病院・クリニック市場の理解(医療業界への新規参入企業向けマーケティングの基礎 Vol.1)

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

日本において高齢化が急速に進むなか、新たなビジネスチャンスを見出そうと、医療業界に新規に参入する企業が増えています。

一方で、様々な制約や特殊な市場環境により、医療市場で成功するのは容易ではありません。新しい製品やサービスを市場に投入する際には、医療業界の特色や政策動向を正しく理解することが不可欠です。

この記事では、医療業界への新規参入企業向けに、医療市場や直近の政策動向について解説します。

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第1回 病院・クリニック市場の理解

第1回では、病院・クリニック市場の現状を理解するために、以下のポイントに焦点を当てて解説します。

1. 医療費の推移

日本の高齢者人口の増加に伴い、国民医療費は年々増加しており、2021年度の国民医療費は45兆に達しました。国民医療費の内訳では、病院や診療所の医科診療費が32.5兆円で全体の約7割を占めており、入院が16.9兆円、外来が15.6兆円となっています。

2001年時点と比較すると国民医療費は13.9兆円増加しており、20年間で約1.5倍に増えていることがわかります。薬局調剤医療費は2001年から2021年にかけて約2.5倍に増えていますが、これは医薬品を調剤薬局で受け取る院外処方が普及したことに伴う影響となります。2040年代に日本の高齢者人口がピークを迎えることから、今後も国民医療費は増加すると考えられます。

2. 病院は減っている?診療所は増えている?

厚生労働省の医療施設調査によると、2022年の病院数は8,156、診療所数は105,182となっています。2002年時点での病院数は9,187、診療所数は94,819であり、この20年で病院数は1,031の減少、診療所数は10,363の増加となったことがわかります。

病院については、1986年の医療法改正によって病床数の総量規制が定められ、基準を上回る病床が整備されている地域以外では病院の開設・増床を許可しないことになりました。

このような背景や、医療費の適正化を目的とした診療報酬改定による政策誘導等により、病院の規模縮小、廃止、統廃合が進んでおり、病院数は減少傾向にあります。日本の病院の約7割は中小病院(ベッド数が200床未満)ですが、特に100床未満の小規模病院の減少が顕著であり、この20年間で813施設が減少しています。

昨今では少子化に伴う医療従事者の確保や働き方改革による医師の確保の問題が生じており、今後も中小病院を中心に病院の集約化が進むと考えられます。

診療所については、上述の通り、過去から現在において増加傾向にあります。ただし、診療所のうちベッドを有している有床診療所は減少傾向にあり、2022年時点で5,958(2002年時点16,178)となっています。首都圏など人口が比較的多い都道府県では診療所は増加傾向にありますが、一部の地域では診療所数が既に減少傾向にあり、地域差が生じています。

3. 患者数(病院)は増えているのか

日本の高齢化に伴い社会保障給付費が急増するなか、2010年から社会保障改革の検討が本格化し、平成24年(2012年)には社会保障・税一体改革が打ち出されました。2012年の診療報酬改定では2025年を見据えた改定が打ち出され、2010年から2024年の現在に至るまで8回の改定(2年に1回)がありました。一貫しているのは、機能分化であり、急性期を経過した患者を回復期、慢性期、在宅にスムーズにつなげるような改定が行われています。

病院の入院患者数の推移をみてみると、2022年の1年間で入院した患者数(新入院患者数)は約15百万人であり、2002年から約150万人増えていることから、高齢化や医療技術の発展に伴って入院需要が増えていることがわかります。一方で、入院患者の延人数(在院患者数)は2002年から2022年にかけて減少しています。これは診療報酬改定による誘導(機能分化の推進)や介護施設の充実により、1患者あたりの入院日数(平均在院日数)が短くなっていることが影響していると考えられます。

医療現場では、病床利用率の低下に伴い利益が減少している一方で、在院日数の短縮や新入院患者の増加に伴って現場の負担が大きくなっているのが実情です。また、少子高齢化による医療従事者の減少により、今後さらに負担が大きくなっていくことが予想されます。医療機関の経営状況や少子化に伴う効率化の必要性については別の記事にて紹介します。

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本稿の執筆者

坂本 浩幸(さかもと ひろゆき)/株式会社日本経営 戦略コンサルティング部

株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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