医療関連企業向け|医療政策トピックス(2024年11月)~ポスト2025年は外来・在宅医療・介護を含めた連携が重要!?~
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業種
企業経営
- 種別 レポート
本記事では、医療業界への新規参入企業向 ・医療関連企業向けに、直近の政策動向について解説しています。
1「ポスト2025年」に対応した新たな地域医療構想とは?
85歳以上高齢者の増加や医療従事者のマンパワーの制約といった問題が顕在化するなか、厚生労働省では、地域医療構想の更なる推進に向けて、「新たな地域医療構想等に関する検討会」を新設し、2024年3月から議論を開始している。
厚生労働省(新たな地域医療構想等に関する検討会)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_436723_00010.html
検討会の中では、「ポスト2025年」に対応した新たな地域医療構想は「入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護との連携等を含む、医療提供体制全体の課題解決を図るための構想」とされており、2040年に向けて、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含めた地域の医療提供体制の検討が焦点となっている。
今後の予定としては、2024年度末に議論の取りまとめ、2025年度には厚生労働省から新たな地域医療構想に関するガイドラインの 発出し、都道府県は2026年度に新たな構想を策定する流れが予定されている。医療提供体制の再編などの具体的な取り組みは2027年度に行われる第8次医療計画の中間見直し後が 予定されている。
2. 新たな地域医療構想の方向性
新たな地域医療構想の方向性として次の3つを 視点が掲げられている。
(1)地域の患者・要介護者を支えられる地域全体を俯瞰した構想
(2)今後の連携・再編・集約化をイメージできる医療機関機能に着目した医療提供体制の構築
(3)限られたマンパワーにおける、より効率的な医療提供の実現
(1)では、85歳以上の高齢者の増加に伴う高齢者救急や在宅医療等の医療・介護需要の増大など、40年ごろを見据えた課題に対応するため、入院に限らず医療提供体制全体を対象とした地域医療構想の策定、(2)では、病床機能だけでなく、急性期医療の提供、高齢者救急の受け皿、在宅医療提供の拠点など、地域で求められる医療機関の役割も踏まえた医療提供体制の構築、そして(3)では、医療DXや働き方改革の取り組み、地域の医療・介護の連携強化などを通じた生産性の向上による持続可能な医療提供体制モデルの確立、とされている。
背景にある具体的な課題としては、「高齢者救急の増加(特に軽症・中等症の高齢者救急)」「在宅医療需要の増加」「医療の質やマンパワーの確保(症例や医師の集約など)」「必要な医療機能の維持(特に過疎地域)」などであり、限りある資源を最適化・効率化し、地域完結型の医療・介護提供体制の構築を目指している。
3. 外来・在宅医療との連携
2024年11月の「第11回新たな地域医療構想等に関する検討会」では、外来・在宅医療・介護との連携等について議論が行われている。
検討会の資料では、外来患者数はほとんどの地域で既に減少局面にあり、診療所の医師の高齢化、人材確保、医師偏在等が課題となっていることが示されている。特に人口が少ない地域やへき地において外来機能の不足が懸念され、今後は、地域ごとに現状や将来の医療需要の推計を行い、将来の医療提供体制のあるべき姿を議論することが掲げられている。オンライン診療を含めた遠隔医療の活用、医師派遣、巡回診療等の推進等により、限られた資源で地域に必要な医療機能を確保することが求められている。
在宅医療については、需要の増加が見込まれ、2040年以降にピークとなるから 、地域の状況に応じて供給力を高める必要がある。在宅医療の圏域は従来の二次医療圏にこだわらず、市町村単位や保健所圏域等の地域医療及び介護資源等の実情に応じて弾力的に設定するとされており、適切な在宅医療の圏域の設定のもと体制整備が検討されることになる。在宅医療を行う医療機関の ICT活用や連携等による対応力強化、在宅医療を行っていない医療機関の参入促進、D to P with Nのオンライン診療の活用、訪問看護事業所の機能強化等が重要なキーワードとなる。
介護については、増加する高齢者救急への対応に向けて、老健も含む介護一説 や在宅等での適切な管理や医療機関との連携について議論が行われている。肺炎や尿路感染症、心不全や脱水等の適切な管理による状態悪化の予防や、医療機関に円滑に入院するための対応力の強化が重要になる。
これまでの地域医療構想では入院機能を中心に議論が行われていたが、今後は外来・在宅医療・介護を含めた構想の検討が進んでいく。施設間連携やICTの活用はどの分野においても地域課題を解決するための重要なテーマになっている 。
弊社ではこれまで累計で1,600件を超える病院の経営支援を行ってまいりました。その知見やネットワークを活用し、病院・診療所・介護施設を支える医療関連企業のご支援や新規に参入する企業の支援を行っています。弊社のメイン事業は病院経営コンサルティングであることから、あくまでも病院・介護施設などの立場に立ち、ヘルスケア業界で“真に役立つテクノロジー・サービス”に限ってご支援しています。
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本稿の執筆者
坂本 浩幸(さかもと ひろゆき)/株式会社日本経営 戦略コンサルティング部
森實 雅司(もりざね まさし)/株式会社日本経営 メディアコンテンツ事業部
株式会社日本経営
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