お役立ち情報

医療関連企業向け|医業外収益の可能性 ~社会医療法人の収益業務の傾向~

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

本記事では、医療業界への新規参入企業・医療関連企業向けに、お役立ち情報を配信しています。

1. 保険外収益の可能性

過去の記事でも取り上げましたが、物価高騰による費用の増加や少子高齢化による人手不足等の顕在化などによって病院の医業利益率はコロナ以降に大きく減少しており、病院を取り巻く経営環境はますます厳しさを増しています。帝国データバンクが発表したデータによると、2025年の医療機関の倒産件数は8月時点で43件、うち病院の倒産件数が10件と前年の年間倒産件数をすでに上回っており、経営への影響が顕著に現れています。費用が増加する一方で、保険収益の確保が難しくなっており、診療報酬改定に頼った保険収益のビジネスモデルは限界に近づいている状況です。

(参考)過去記事「病院を取り巻く経営環境」
https://nkgr.co.jp/useful/enterprise-strategy-110536/

こうした状況の中、医療機関は収益を確保するために保険外収益に注目し、新たな取り組みの開始や、既存のサービスの強化を進めています。具体的には、健診・人間ドックなどの予防医療、自由診療(美容医療、保険外リハビリテーション、遺伝子検査など)、施設利用料(個室料など)が挙げられます。

しかし、医療機関における保険外サービスは、まだ十分に開拓されているとは言えません。患者向けの自費サービスには多くの可能性があり、新たなサービスを展開する余地が多く残されています。医療機関の経営を安定させるうえでは、保険診療による収益だけに頼るのではなく、保険外収益を拡大していくことがますます重要になるでしょう。

2. 社会医療法人の収益業務の傾向

医療法人は医療法により収益業務を行うことができませんが、社会医療法人は病院等の業務に支障のない範囲で厚生労働省が定める収益業務を行うことが可能 (※1) とされています。ただし、社会保険診療等に係る収入金額が全収入金額の8割を超えることが必要 (※2) であるなど、一定の制限があります。

(※1) 医療法人の業務範囲:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000901066.pdf
(※2) 社会医療法人の要件:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001472935.pdf

社会医療法人の収益業務の傾向を調べるため、全国372の社会医療法人 (※3)(令和7年7月1日時点)のうち、インターネットで入手できた決算情報等 (※4) をもとに分析を行いました。

(※3) 社会医療法人の認定について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/igyou/about_nintei.html

(※4) 全国の都道府県からインターネットを利用して入手することができた254法人の情報に基づいて分析を実施。原則として令和5年度の決算情報を利用したが、48法人は令和5年度の情報が得られなかったため、令和4年度の情報を利用。

収益業務の傾向を分析した結果、収集した社会医療法人254法人のうち、全体の約42%が収益業務を行っていました。また、収益業務を行っている法人のうち、収益業務による収益が年間1億円以上ある法人の割合は10.4%、5,000万円~1億円の法人は9.4%、1,000万円~5,000万円の法人は41.5%となっていました。

全収益に占める収益業務の割合を調べると、収益業務を行っている法人の中で収益業務による収益の割合が全収益の10%を超える法人の割合はわずか0.9%であり、80%以上の法人で1%未満となっていました。実施している収益業務としては、不動産業(駐車場、法人所有物の賃貸など)が最も多く、次いで飲食サービス業が多く見られました。(詳細は非公開)。法人によっては、メディカルフィットネス、セントラルキッチン、教育・学習支援業などを提供しています。

上記の通り、社会医療法人は制度上、収益業務を行うことができる一方で、収益を上げている法人は一部に限られ、その多くは不動産業に集中しています。全体の収益に占める割合は低く、収益業務に取り組んでいない法人も多いことから、まだ未開拓の領域であり、今後成長の余地が大きい分野といえます。

医療機関の課題としては、保険収益以外のビジネスに関するノウハウ不足や、新規事業を推進する人材不足などが挙げられます。医療関連企業の持つノウハウや新たなサービスを活用することで保険外収益をいかに獲得していくかが重要となるでしょう。弊社でも、企業の皆様と連携しながら、将来の医療を見据えた新たなサービス創出に挑戦していきたいと考えております。保険外収益の分野に関心がありましたらぜひ弊社にご連絡ください。


弊社ではこれまで累計で1,700件(2025年3月時点)を超える病院の経営支援を行ってまいりました。その知見やネットワークを活用し、病院・診療所・介護施設を支える医療関連企業のご支援や新規に参入する企業の支援を行っています。弊社のメイン事業は病院経営コンサルティングであることから、あくまでも病院・介護施設などの立場に立ち、ヘルスケア業界で“真に役立つテクノロジー・サービス”に限ってご支援しています。

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本稿の執筆者

坂本 浩幸(さかもと ひろゆき)/株式会社日本経営 戦略コンサルティング部

株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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