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採用は誰がするものか!?

株式会社 日本経営 / 取締役 小畑 隆成

採用が難しい

これは業種、業態を問わず、また、新卒や中途などにも関わらず、あらゆる職場で共通になっている経営課題ではないでしょうか。

「人材こそが最重要経営資源」と考える当社でも、新卒採用やキャリア採用にはかねてより力を注いでいますが、採用市場の変化の早さと厳しさを一層感じているところです。

有効求人倍率の推移を見てみますと、リーマンショック後の2009年8月に歴代最低の0.42を記録して以来、右肩上がりに急上昇し続けており、2018年8月にはこれは逆に歴代最高となる1.63を記録しています。その後2020年、2021年はコロナ禍の影響により一旦の落ち込み(2020年6月に1.11)を見せているものの、足元では再び上昇に転じてきているのが見て取れます。

2009年から2018年のたった10年足らずの間に、過去に経験をしたことがないような「最低水準から最高水準」の倍率変化のスピードとなっています。

コロナ禍による環境変化を勘案しても、経済活動の再開とともに、再び強烈な売り手市場が継続することは容易に想像されるところです。

採用、定着、育成の順番とは

このような環境下において、「採用は、企業側がしているようで、実は求人者がしているものである」という考えを組織として真に持つことが大切だと思っています。

もちろんこれまでにも「選ぶのではなく選ばれる会社かどうか」という言葉は随所に言われてきたことですが、その「具現化の程度」が「採用力の程度」として、ひいては「企業競争力の程度」として大きな差になってきているように感じます。つまり、先述の「採用環境の急変化」に見合う以上のスピードで組織の変化を成しえているのか、ということです。

では、そのスピードや変化を「採用」、「定着」、「育成」という一連の施策において考えた場合、私はそこには順番があると思っています。もちろん、採用にも目先の課題がありますし、定着にも育成にも日々生じる様々な問題は尽きることはなく、実務においては全て同時進行だと思います。

次々に生じる課題に対して、それらの対処や対応策が講じられているものかと思いますが、根本的には「定着」→「育成」→「採用」の順番が軸ではないでしょうか。

何らかのご縁があり、会社にとっても「この方なら」と期待を込めて内定を出した人材ですし、求人者にとっても「この会社なら」と期待を込めて決定した会社です。双方にとって採用(就職)があったからには、ぜひとも定着し、成長し、活躍頂きたいと願うのはごく自然なことでしょう。

まずは、そうした貴重な人材がしっかり職場に定着し、そして成長が図られる会社であること、そのための経営判断や実行はいかにあるべきか、ということが一番に大事なことといえます。そうでなければ目に見えにくい教育費用等も含めて、多額な採用関連費用をかけながら、一方では人材が流出し続けているという状況になりかねず、それでは組織の発展は図られません。

軸は基本理念とビジョン

終身雇用の時代ではありませんし、雇用の流動化は日本の平均賃金上昇に必要なこととも言われ、社会的には様々な見方があると思います。また、「採用」、「定着」、「育成」と言いましても、それら一つひとつの改善には上げだすとキリがないほど多くの要因や前提条件が絡み、「組織文化」なども影響してくるため容易な話ではありません。このように記載しながら、当社においても「採用」の一方では「退職」も一定程度生じていますし、その理由もまた様々です。

改善を要する事項は尽きない日々です。複雑で容易ではない経営テーマであるからこそ「基本理念」と各事業部で掲げているビジョンを軸に、「真に従業員に選ばれる会社や組織になれているだろうか」を振り返りながら、「そのために必要な変化やチャレンジは何だろうか」ということを幹部と一緒に真摯に考え、地道に取り組める運営を目指し続けたいと思います。

それが、やがて新たな未来の社員(求職者)の目に止まり、興味を持って頂き、よい縁につながることを願っています。

このレポートの解説者

株式会社 日本経営
取締役 小畑 隆成

病院の人事制度構築やスタッフ教育、労務対応に加えモチベーション向上を軸とした収益改善、業務効率の向上等が専門分野。豊富なコンサルティング実績に加え、単科の専門病院や大規模病院グループ本部への出向経験から、現場の実務と結果の創出にこだわったコンサルティングに定評がある。全国の病院協会、医師会、金融機関等での講演も多数。2017年10月より株式会社日本経営取締役。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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