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介護離職を減らす5つの視点とは/約3分で耳ラーニング

  • 業種 病院・診療所・歯科
    介護福祉施設
  • 種別 レポート

介護離職は深刻な社会問題となっています。総務省統計局「令和4年就業構造基本調査によると、1年間に「介護・看護のため」に離職した人は約11万人にのぼっています。

また、特に40代以降では、家族の介護が突然始まるケースが多いことも明らかになっています。介護による人材の流出は、医療現場も含めすべての企業にとって大きな損失です。

安心して制度を活用できる状態を常に維持する

こうした状況を踏まえて育児・介護休業法が改正され、2025年4月から段階的に施行されています。これにより、「仕事と介護の両立支援」のための雇用環境の整備が企業に義務付けられ、制度の個別周知や早期の情報提供、相談窓口の設置などが事業主の義務となりました。

この制度をうまく活用して介護離職を防ぐためには、制度を単に整えるだけではなく、必要とする人が必要なタイミングで制度の内容を把握し、安心して活用できる状態を常に維持することが重要です。たとえば、管理職や同僚が支援者として介護が必要となった職員をサポートできる職場づくりが求められます。特に40歳は介護保険の加入年齢であり、備えを始める節目です。このタイミングで制度や相談先を伝えるなど、定期的な情報提供を仕組み化することが効果的です。

また、制度があっても「相談しづらい」ことが利用の妨げになっています。そのため、第三者的立場の相談窓口の設置や、ICTを活用した匿名相談の導入などにより、相談への心理的ハードルを下げる工夫が求められます。

働きながら介護ができる「制度が生きている職場」へ

そのほか、医療法人においては、 訪問看護やリハビリ、ケアマネジメントなどの専門性を活かし、職員の家族介護を支援する福利厚生制度として制度化することで、職員の安心感と定着の促進につながります。 これからの時代は、「働きながら介護ができる社会」へと移行していきます。医療機関や介護事業所が率先して実効的な支援ができる体制を整えることは、組織全体の持続可能性にも直結します。

そのためには、上司が制度を正しく理解し、柔軟に対応できるよう、職員向けの研修体制を整えることも不可欠です。仕事と介護の両立支援に対する正しい知識と現場での対話スキルを備えることで、職員一人ひとりが安心して働き続けられる環境が生まれます。いま求められているのは「制度がある職場」ではなく、「制度が生きている職場」です。

<参考資料>

病院の人事制度・組織開発と言えば、日本経営!

今回の解説

馬渡美智(まわたり みさと)
株式会社日本経営 組織人事コンサルタント

従業員数500名規模の事業所で、総務・人事業務に従事した後、日本経営入社。労務管理体制の調査・整備業務、組織活性化支援、人事制度の導入・運用支援、管理職研修、職員研修等に従事している。自治体の医療人材の流出入に関する調査も実施。社会福祉協議会、各種団体等での講演やセミナーも多数行っている。社内においては、子育てをしながら経営コンサルタントとして働くモデル人材として活躍。社会保険労務士有資格者。

株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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