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400床以上の病院が実践!看護師長を「改革のハブ」に育てる組織構造を変える実践ノウハウ

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

400床以上の大規模病院において、看護師長の育成と離職防止は経営指標に直結する最重要課題です。本レポートでは、これらの課題の根本原因である「組織構造」の変革に焦点を当て、看護師長の成長を医業収益の増加やコスト削減につながる仕組みと、看護師長が自律的な「改革のハブ」へと成長するNKリーンマネジメントの実践ノウハウについて解説します。

1.医療機関の成果を阻害する要因

看護師長の育成と離職防止が病院経営に直結する理由

大規模病院において、「看護師長の育成の難しさ」と「看護師の離職」は、単なる看護部の課題ではなく、病院経営の存続に関わる最重要課題です。看護師長が現場を動かし、チームを育て、改善し、経営とつながる「改革のハブ」としての役割を果たすことは、以下の経営成果に直結します。

  • 病床稼働率の向上:繁忙を理由に閉鎖していた病床を、本来の稼働状態へ回復させます
  • リソースの最適化:非効率な運用を是正し、コストの削減につなげます
  • 労働環境の改善:疲弊していた職場を働きやすい環境に変え、人手不足の解消と離職防止を実現します

看護部の改善がもたらす経済効果は大きく、例えば時間外労働の削減や病床稼働率の向上により、数千万から数十億円のインパクトを生んだ事例もあります。

2. 「うまくいかない改善」の根源にある組織構造

多くの管理職は懸命に業務に取り組んでいますが、現場では「誰も悪くないのに結果が出ない」という状況が生じています。これは、組織構造という「見えない仕組み・ルール・つながり」が、個人の行動を合理的に決定しているためです。

提案や自律性を阻害する構造

「管理職の能力が低い」のではなく、組織の中で合理的に学習した結果として、看護師長が「提案しなくなった」り、「一人で動かす」ようになったりします。これは、組織が持つ「見えない仕組み・ルール・つながり」によって、その行動が合理的であると判断されるためです。

  • 提案しない看護師長が生まれる理由
    提案しても上層部が即座に「それはダメ」と否定したり、実行中に口出し・方向転換が入ったりする経験が繰り返され、看護師長は「提案するほど損」だと学習してしまいます。結果として、指示に正確に従うことが組織内で合理的な行動と認識されます
  • 一人で抱え込む看護師長が生まれる理由
    フォローする時間が取れないため自分でやらないと間に合わない、あるいは依頼しても周囲が忙しくネガティブな反応が返ってきたりすると、「一人でやったほうが良い」と学習してしまいます

看護師の離職や看護師長の育成の難しさは、こうした役割と権限、情報、評価といった組織構造の悪循環が表面化した現象です。

3.組織構造を変えるNKリーンマネジメントの実践ノウハウ

組織の根本を変革し、看護師長を自律的な「改革のハブ」に育てるためには、知識のインプットだけでなく、組織構造に作用する実践的な改善活動が必要です。

株式会社 日本経営が提供する「NKリーンマネジメント」は、患者価値を軸に「改善」「マネジメント」「人材育成」を連動させます。

改善の「軸」となる患者価値の明確化

改善活動の方向性を決める唯一の軸は、「顧客価値(患者価値)の向上」です。NKリーンマネジメントの哲学は、「顧客価値の最大化とムダの徹底排除」を追求することです。

  • 患者価値の可視化
    現場の「しんどさ」ではなく、患者さんの受療プロセスを軸に、「待ち」や「移動」といった患者さんにとって付加価値のない時間(ムダ)がどこにあるかを特定します
  • バリューストリームマップ(VSM)
    この可視化に用いるのがVSM(Value Stream Map/バリューストリームマップ)です。これは、患者さんの経験する価値の流れを一覧で洗い出し、ムダを特定するツールであり、自分たちの工程ではなく、患者さんの工程が軸となります
    例:ある外来診察のケースでは、病院滞在時間96分のうち、患者さんが価値を体験したのは38分(全体の39%)でした。
  • 8つのムダの特定
    看護業務において、患者価値の向上につながらない作業(ムダ)を洗い出し、改善のターゲットとします
  1. 作りすぎのムダ(過度な記録、委員会担当など)
  2. 待ちのムダ(折り返しの電話待ち、申し送り時の待ち時間など)
  3. 運搬のムダ(物品を何度も取りに行く移動、片づけなど)
  4. 加工のムダ(診療科ごとに異なるルール、すべての業務に対するトリプルチェックなど)
  5. 在庫のムダ(山積みの備品、期日の切れた張り紙など)
  6. 動作のムダ(電子カルテでは見にくい、記録のためにナースステーションに戻るなど)
  7. 不良のムダ(情報不足のオーダーや記録、正しく伝達されない情報など)
  8. スキル・役割のムダ(看護師が物品管理、薬のセットを行うなど)

看護師長を育てる実践的な改善サイクル

看護師長に「現場のメンバーや周囲を巻き込むと成果が出る」という成功体験を積ませるため、以下のスケジュールと体制で改善活動を実践します。

  • 改善活動のスケジュール
    約8ヶ月間を1クールとし、約3ヶ月を1テーマとする改善サイクルを2回繰り返します。この活動を通じて、看護師長に理論に基づく実践とPDCAの徹底を促します
  • 現場の大切さ
    幹部も含め、「現地現物」の原則に基づいて現場に足を運び、「患者さんに何が起きているか」「現場で何が起きているか」を「見る」ことが不可欠です
  • マネジメントスタイルの転換:
    看護師長は、すべてを一人でこなす「スーパー看護師長」型(従来型)から、「メンバーを主役にし、チームへの変化を促す」ボトムアップ型へとマネジメントスタイルを変革します

看護師長を「一人にしない」改善推進体制の構築

改善活動を成功させるためには、看護師長を孤立させず、組織全体で支える構造が必要です。

  • 役割と機能の明確化
    改善活動における責任の所在を明確にするため、グランドスポンサー(GSP)(看護部改善の全体責任者)、プロセスオーナー(PO)(現場改善責任者)、スポンサー(SP)(病棟エリア責任者)、チャンピオン(CP)(現場改善推進責任者)といった役割を定義します
  • 幹部の関与とサポート
    幹部は、「看護部だけの問題ではない」と一声かけるなど、現場ラウンドやトレーニングへの参加、定期的な相談の場の設定などを通じて、看護師長をサポートします
  • コーチングと「見える化」ツール
    看護師長のマネジメントの向上には、理論に基づく知識・スキル・ツールを組み合わせた支援が必要です
    ・ディベロップメントコーチング:上司は看護師長に「問題と課題は何か」「あるべき姿は何か」を問いかけ、看護師長が自ら是正プランを考え実行できるよう促すコーチングを実施します
    ・進捗の「見える化」赤・黄・青の信号を活用し、進捗状況を可視化することで、「相談・調整が必要な状態(赤)」や「不安がある状態(黄)」を把握することで、必要な介入のタイミングを見極めます

まとめ

「400床以上の病院が実践する組織構造を変える実践ノウハウ」は、患者価値の向上を唯一の軸に、組織構造の悪循環を断ち切るNKリーンマネジメントの改善手法です。看護師長に成功体験を積ませ、「トップダウン」から「ボトムアップ」へとマネジメントスタイルを転換を促すことで、離職防止と病院経営の改善を同時に実現します。

病院の組織構造を変革し、継続的に成果を生み出す自走する組織の実現に向けて、
次の一歩を踏み出してみませんか

本稿の監修者

兄井 利昌(あにい としまさ)
株式会社日本経営 業務プロセス改善コンサルティング部 部長

米国認定リーンコンサルタント。これまで100床〜300床規模の病院の人事制度改革に携わる。人事制度を単なる管理のツールではなく、組織が期待する職員を引き上げ、更なる貢献を引き出す仕組みとするコンサルティングを行っている。また、研修など職員教育の領域では、それぞれの組織に合わせた研修を設計し、再現性と実効性を重視した研修を行っている。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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