わずか15床の稼働制限が、年間約3億円の損失を生む!看護部を「経営のエンジン」に変えるリソース再構築戦略
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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
病院経営において、看護部は最大の組織であり、人件費という観点からも経営に大きな影響を与える重要な部門です。本来は、病床稼働を支える中核的な存在であるはずですが、多くの病院で「病床はあるのに、現場が忙しくて受け入れられない」という、看護人員に起因する稼働制限が発生しています。
経営層がどれだけ「稼働を上げろ」と号令をかけても、現場に物理的な余力がなければ、それは安全・安心を脅かすリスクでしかなく、強引な号令はさらなる離職を招きます。今、病院に求められているのは、単なる「現場レベルの業務効率化」にとどまらない、看護部を起点とした経営モデルの再構築です。
1.「病床を埋めろ」の号令が招く年間約3億円の収益機会の喪失
多くの経営幹部は「空床があるなら、前方連携を強めて受け入れを増やせ」と指示を出します。しかし、現場の看護師に時間的・精神的な「余力」がない状態で無理に稼働を上げようとすれば、ケアの質低下や離職の連鎖を引き起こします。
ここで注目すべきは、現場の「忙しさ」を放置することで、本来得られるはずの収益をどれほど「放棄」しているかという点です。例えば、わずか15床の入院受け入れ制限が発生している場合、試算では年間約3億円もの増収機会を逃していることになります。
【1床あたりの収益・コスト構造の試算】
15床 × 1床あたり年間収益2,000万円 = 年間約3億円の増収効果※
※試算方法:基準病床 50床に対し、現在稼働が30床、改善後の稼働が45床と仮定
| 経営判断の指標 | 算出根拠・詳細 | |
| 入院単価(1日) | 約6.5万円(急性期一般入院基本料+各種加算・処置) | |
| 1床あたり年間収益 | 約2,000万円(単価6.5万円 × 365日 × 稼働率85%) | |
| 15床制限の損失 | 年間 約3億円(15床 × 約2,000万円) | |
| 空床の固定費 | 「1床あたり 約3.5万円/日 (人件費、設備費などの固定分 年間約1,280万円の流出) |
つまり、「現場が忙しい」という理由で15床を制限し続けることは、経営的には年間約3億円の事業を放棄しているのと同義なのです。
経営者は、現場から上がる「忙しくて受け入れられない」という声を単なる感情論やマンパワー不足として片付けるのではなく、それが「億単位の増収ポテンシャル」を阻害する重大な経営課題であると再認識すべきです。
2. 成果を出すための「正しい順序」は“余裕”の創出から始まる
収益を上げるために稼働を上げるのは、実は最終ステップです。着実に成果を出している病院は、必ず以下の「順序」で改革を進めています。
STEP 1:
受け入れ可能な体制づくり(余力創出) 徹底したプロセス改善により、看護師の「付加価値を生まない作業(探し物、移動、二度手間)」を排除します。1床あたり年間2,000万円を生むべき専門職が、ノンコア業務に追われている現状こそが最大のコストです
STEP 2:
病床回転率の向上 現場に心理的・時間的な「余白」が生まれて初めて、退院支援や前方連携へ注力する余裕ができ、1入院あたりの単価や回転率が向上します
STEP 3:
収益の最大化(稼働向上) 現場が「これならあと1人受け入れられる」という確信を持つことで、初めて安定的な高稼働が実現します
「忙しいから改善できない」のは本末転倒です。「忙しさを取り除くこと」そのものが、増収に向けた最短の経営戦略となります。
3.人員配置の再構築に向けた「出口戦略」
診療報酬改定に伴い7対1から10対1へ転換した場合でも、従来と同じオペレーションのまま運営してしまい、「人員配置の適正化(人件費の抑制)が思うように進まない」という悩みを抱える病院は少なくありません。ここで必要なのは、無理な人員削減ではなく、戦略的な配置の適正化です。
ある事例では、まず業務改善により現場に余力を生み出した上で、「自然退職による欠員を補充しない(採用抑制)」という手法を取りました。2〜3年というスパンで計画的に人員体制を見直すことで、現場に過度な負担をかけることなく、看護師5人分、年間約2,750万円のコスト抑制に成功しています。
ポイントは、「人が減っても業務が回る仕組み」を先に構築していることです。仕組みがないまま人員を減らせば、残った職員の負担が増大し、疲弊や離職を招くという負の連鎖に陥りかねません。
さらに留意すべきは、空床であっても1日あたり約3.5万円の固定費が発生し続けているという事実です。収益を生まずコストだけを消費する「死んだリソース」を、NKリーンによって「稼働するエンジン」へ再構築することで、増収とコスト適正化の両面から経営基盤を強化することが可能となります。
4. 改善で得た資源を「未来」へ再投資するサイクル
改善によって生まれた「時間」と「原資」を、次にどこへ投じるかが病院の将来を決めます。
・テクノロジーへの投資:スマ-トフォンの活用やスマートベッドの導入などにより、さらなるノンコア業務の自動化を進めます
・人材育成への投資:単なる技術向上にとどまらず、病棟を経営的視点でマネジメントできる看護師長(リーダー)の育成に注力します。また、業務改善によって創出した余力を、認定看護師の資格取得や地域連携活動へと振り向けることで専門性を高め、「地域から選ばれる病院」としてのブランド力を強化につなげます
「余裕がないから投資できない」という停滞の構造を打破し、「改善によって余力を生み出し、それを成長に投資する」という正のサイクルを回していくこと。これこそが、看護部をコストセンターから「経営のエンジン」へと変革させる鍵となります。
5.まとめ
看護部は、病院経営を動かす最大のパワーを秘めています。「人が足りない、定着しない」という構造的リスクを、現場の作業改善という「守り」から、経営資源の再配置という「攻め」の戦略へと転換する。その一歩が、持続可能な病院経営への道を切り拓きます。
貴院の病棟に眠っている「数億円規模のポテンシャル」を、私たちとともに解き放ちませんか? NKリーンでは、貴院の現状に合わせた最適なリソース再構築を、現場に寄り添いながら伴走支援いたします。
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本稿の監修者
兄井 利昌(あにい としまさ)
株式会社日本経営 業務プロセス改善コンサルティング部 部長
米国認定リーンコンサルタント。これまで100床〜300床規模の病院の人事制度改革に携わる。人事制度を単なる管理のツールではなく、組織が期待する職員を引き上げ、更なる貢献を引き出す仕組みとするコンサルティングを行っている。また、研修など職員教育の領域では、それぞれの組織に合わせた研修を設計し、再現性と実効性を重視した研修を行っている。
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