お役立ち情報

地域共生社会における“好循環のビジネスモデル”

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

昨年(2024年)末に弊社お役立ち情報で以下のレポートを公開しました。

【地域共生社会を創造するための病院経営戦略】
~“4つの経営機能”を活かした医療MaaS・DXの実現~
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-finance-organization-quality-114097/

今回は上記レポートについて、経済産業省の「経済産業省におけるヘルスケア産業政策について」(※ⅰ)という資料を踏まえて、地域共生社会 (※ⅱ) におけるビジネスモデルについて論考してみます。

経済産業省のヘルスケア産業政策

上記弊社お役立ちレポートの中で、業界・産業という制度・分野ごとの“縦割り”を超えて、共有(シェアリング)していくことが求められ、従来の「医療×介護」という医療・介護複合体だけではなく、「農業×福祉」の農福連携など、“業界・産業を横断した取り組みが地域共生社会”となることを解説しました。また、その中で、2040年問題による生産年齢人口の急減少や昨今の物価高などを踏まえて、人的なリソース確保やコスト構造変革という面での実行プロセスを考えると、病院DXや医療MaaSなどが具体策になってくることを指摘しました。

この考えに至った背景には、前述した経済産業省の「経済産業省におけるヘルスケア産業政策について」の中で使われていた、以下のスライドの存在があります。

この図では、公的医療保険・介護保険での地域包括ケアシステムを中心に、「公的保険外の運動、栄養、保健サービス等」が周辺に存在し、「農業・観光等の地域産業やスポーツ関連産業等との連携」により、それらが地域医療・介護体制へ貢献し、新産業創出につながり、ひいては産業創出の基盤となる資金調達や人材育成などにつながることを示唆しています。

地域共生社会におけるビジネスモデル

この概念を弊社なりに再構成すると下図のようになります。

本レポートをお読みの医療・介護事業者の視点から地域共生社会を見てみると、産業創出の基盤としての人材確保・ノウハウ調達・資金調達という“インプット”をした上で、地域包括ケアシステムを中心に置きながらIX(産業変革)して地域共生社会を創出するという“プロセス”によって、法人の「パーパスの実現」や「ブランディング」という“アウトプット”が実現することになります。

また、昨今はブランディングが高まった法人への医療・福祉領域のクラウドファンディングも増えており、結果として“資金の還流という好循環”が発生するようになっています。このように“インプット⇒プロセス⇒アウトプットの好循環をどう作るか?”がビジネスモデルを構築する際のカギです。

以前のレポートでも触れましたが、弊社の医師マネジメントシステムではBSC (※ⅲ)を基軸にすることが多いです。このBSCは、“学習と成長の視点”⇒“内部プロセスの視点”⇒“顧客の視点”⇒“財務の視点”と因果連鎖し、最終の“財務の視点”で創出された利益が「人材投資(=学習と成長の視点)」や「設備投資(=内部プロセスの視点)」へつながっています。下図のように好循環のサイクルになっているため、弊社でもBSCを採用する理由となっています。

BSCの好循環サイクル同様に、地域共生社会における病院経営においても前記(「今後のヘルスケア産業で求められること」)のような好循環のビジネスモデルを実現することが、成功のポイントになります。その中で、実行プロセスベースでは、昨年末のレポートのように、病院DXや医療MaaS、さらには農福連携やメディカルフィットネスのような予防領域などが具体策になるでしょう。

ブランディングで“働き手から選ばれる組織”へ

上図の好循環ビジネスモデルは、資金調達分野だけではありません。病院経営における最大の懸念要因は2040年問題を踏まえた人手不足ですが、ブランディングは採用においても重要な論点です。昨年、弊社お役立ち情報で下記レポートを公開しました。

【人件費単価が“1.5倍”に!】
~最賃引上げが迫る“働き手に選ばれる職場”への組織変革~
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-finance-organization-quality-113493/

このレポートでも指摘しましたが、最低賃金が今後大幅に上昇するように外部環境が激変するだけではなく、いわゆる“Z世代”が代名詞となるような”働き手の価値観“という内部環境も大きく変わってきています。

上記レポートでもお伝えしましたが、組織マネジメントの領域でも、従来の“職員満足度”から“ワーク・エンゲイジメント”へトレンドが変わってきています。そのため、組織・法人は、従業員が安心して働くことのできる環境や、働きやすい環境を整備する必要があります。例えば、建て替えの際なども、従業員の就業環境の整備、特に宿直室や休憩室、トイレなどの環境が論点になってきます。こうしたハード面だけではなくソフト面としては、人間関係を含めた“心理的安全性”も求められます。

特にZ世代は、仕事の“意味合い”がモチベーションの源泉 (※ⅳ)になると言われます。以前のレポートでも、目的・意義から考えて、ものの見方・考え方を良い方向に促す“フレーミング” (※ⅴ)を紹介しましたが、Z世代以降の採用については、“意味合いを言語化して伝えるフレーミング”が重要になってきます。

実際、「新入社員意識調査2024」(※ⅵ)によると、新入社員へ行った「仕事をするうえで重視すること」という質問での回答第2位は、「人や社会の役に立つ、感謝される」という内容の“貢献”でした。地域共生社会の実現というパーパスは、“地域や社会に貢献できる”という法人のブランディングにつながり、ひいては採用にも好循環になると推察されます。まさに、フレーミングの上でも、地域共生社会の実現というブランディングは重要になるでしょう。

ビジネスモデルを機能化させるためのPXマネジメント

それでは、地域共生社会の実現というブランディングにおいて何が必要になるでしょうか。やはり、現在お勤めの従業員の皆さんのワーク・エンゲイジメントが高い組織状態になることだと思います。弊社では「経営力=戦略の妥当性×実行の徹底度」という公式を使って解説することが多いですが、ワーク・エンゲイジメントを高め、“活力”“熱意”“没頭”などの働きがいが高まることが、“実行の徹底度”へ影響してきます。

ワーク・エンゲイジメントを高めるためには、具体的にはどのように考えるべきでしょうか。昨年末に以下のレポートを弊社お役立ち情報で公開しました。

【“地域共生社会”を見据えた”PX視点でのKPIマネジメント”】
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-finance-organization-quality-114986/

このレポートでもお伝えしましたが、医療職の皆さんは医療や患者貢献というジョブに内発的動機の源泉があり、ワーク・エンゲイジメントの根底にはPXが存在すると感じています。PXを基軸とした組織マネジメント体制が、実行の徹底度の基盤になると思います。

持続する地域共生社会のビジネスモデルを構築するには、産業創出の基盤としての人材確保・ノウハウ調達・資金調達という“インプット”をした上で、地域包括ケアシステムを中心に置きながら地域共生社会を創出するという“プロセス”によって、法人の「パーパスの実現」や「ブランディング」という“アウトプット”が生まれ、さらにそれが好循環することが必要です。実行プロセスの具体策としての病院DXや医療MaaS、さらには農福連携やメディカルフィットネスのような予防領域に加えて、これらの取り組みを持続させることが必要です。そこで、PXを基軸とした組織マネジメントが、地域共生社会のビジネスモデルという好循環のサイクルを回し続けるためには求められるでしょう。

なお、弊社では医師マネジメントシステムにおけるKPI設定においても、今回お伝えしたような “PX視点でKPIを設定するフレーミング”を実現するような支援を行っています。また、「DX=D(デジタル化)×CX(組織変革)」という公式での病院DX支援も行っています。ご関心があれば、下記専門サイトをご覧ください。

【医師マネジメント専門サイト】
https://hhr.nkgr.co.jp/dmgt

【病院DX特設サイト】
https://service.nkgr.co.jp/dx

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※ⅰ https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/01metihealthcarepolicy.pdf
  出所:経済産業省「経済産業省におけるヘルスケア産業政策について」
※ⅱ https://www.mhlw.go.jp/kyouseisyakaiportal/
   出所:厚生労働省「地域共生社会のポータルサイト」
※ⅲ https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11920.html
   出所:グロービス経営大学院 MBA用語集「バランスト・スコアカード(BSC)」
※ⅳ 出所:尾原 和啓「モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書」
※ⅴ https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11970.html
   出所:グロービス経営大学院 MBA用語集「フレーミング」
※ⅵ https://www.recruit-ms.co.jp/news/pressrelease/0632561103/
   出所:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「「新入社員意識調査2024」の分析結果を発表」
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私たちは、医師マネジメントを高次化し
貢献行動促進」「モチベーション向上」「病院収益の向上」に貢献します

本稿の執筆者

太田昇蔵(おおた しょうぞう)
株式会社日本経営 部長

大規模民間急性期病院の医事課を経て、2007 年入社。電子カルテなど医療情報システム導入支援を経て、2012 年病院経営コンサルティング部門に異動。
現在、医師マネジメントが特に求められる医師数の多いグループ病院・中核病院のコンサルティングを統括。2005年西南学院大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、 2017 年グロービス経営大学院 MBA コース修了。

株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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