ATDの学び②”はだかの王様”の言葉は部下に届かない/実行力を引き上げる人事のツボ
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業種
企業経営
- 種別 レポート
ATDの学び②”はだかの王様”の言葉は部下に届かない
株式会社日本経営 / 波多野 裕太
①「もう一度エネルギーをチャージする方法」に続き、ATD ICEに参加しての学びや、組織マネジメントを向上させる具体的なアクションを紹介するコーナーです。
第2弾は、「部下から上司へのフィードバックがいかに重要であるか」について、Jack Zenger氏によるセッション『与えることよりも求めて受け取ることのほうが良い理由』(原題:Why Seeking and Receiving Is Better than giving)から引用してお伝えします。
部下から上司へのフィードバックの重要性
部下を持つ上司の皆さんに質問です。
部下から意識的、意図的にフィードバックを受けていますか?
一般的にフィードバックというと、部下の成果を労う、評価する。あるいは、部下の課題を指摘し、改善のための助言をすることをイメージするのではないでしょうか。
上司には部下育成責任があるので、内容がポジティブであれ、ネガティブであれ、日々の仕事で部下に対して有用なフィードバックを行うよう意識していることでしょう。上司の部下マネジメントスキルを向上させるためのシンプルで強力なツールをお伝えします。
それは、部下からのフィードバックを求めることです。
Jack Zenger氏のセッションでは、様々な観点から、上司が部下からのフィードバックを求めることのメリットが説明されていました。
つまり、フィードバックを求めることで、部下との信頼関係が向上し、部下へのフィードバックが届きやすくなります。
他にも、部下にフィードバックを求めることで、
・チームメンバーのエンゲージメントを向上させること
・部下が動機づけされ、仕事のパフォーマンスが向上すること
が示されていました。
本記事のタイトルはアンデルセン童話の”はだかの王様”を例に出しました。
みなさまもよくご存知のとおり、はだかの王様は地位が高く、周囲からちやほやされて批判や反対を受けないために、本当の自分がわからなくなっている人のたとえです。
上司が一方的にフィードバックを与えてばかりでは、部下との関係性に甘えて仕事を振り返る機会がなくなり、自己中心的な判断が増え、知らず知らずのうちに部下との信頼を壊してしまうかもしれません。
結果、”はだかの王様”となった上司のフィードバックは、部下に届かなくなるのです。
”はだかの王様”を防ぐ方法は至ってシンプル。
「私に対して、何かフィードバックはありますか?」と自ら部下にフィードバックを求めることです。
どんなフィードバックがいいのか
Jack Zenger氏のセッションでは、上司側のフィードバックに対する誤解についても紹介されていました。
ネガティブなフィードバックばかり行われ、ポジティブなフィードバックが軽視されているのです。
現代の労務トラブルの1つ「パワハラ的な指導」についても、上司がネガティブなフィードバックばかりをするために、部下側との信頼関係を築けていないことが原因の1つだと思います。
魔法の比率であるポジティブ:ネガティブ=5:1のフィードバックを心がけることで、部下との信頼関係がより強固になり、結果的にネガティブなフィードバックが正しく伝わるのです。
私の、あるお客様では、「1on1をするときは、最後に必ず上司が部下からフィードバックを受けること」をルールとしてします。
最初は強制的にルール化しますが、段々と当たり前の文化として定着したそうです。
ぜひ、皆様も取り入れてみてください。
このレポートの解説者
波多野裕太(はたのゆうた)
株式会社 日本経営 コンサルタント
東日本の企業に対して、人事制度の導入・見直し、組織文化・風土の改革、人事改革を通じたグループガバナンスの構築、キャリアパスの作成などの業務に携わる。顧客層はスタートアップから上場企業までを幅広く支援。
「笑顔溢れる組織作り」をモットーに、現場に深く入り込んだ支援で定評がある。明るいキャラクターと起爆剤としての熱量が武器。
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