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病院・クリニック市場の理解(医療業界への新規参入企業向けマーケティングの基礎 Vol.4)

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

本記事では、医療業界への新規参入を考える企業向けに、医療市場や最新の政策動向について解説します。第4回は「医療政策の理解~2024年度診療報酬改定~」をテーマに取り上げます。

[過去の記事はこちら]
 第1回 病院・クリニック市場の理解
 第2回 病院を取り巻く経営環境
 第3回 医療政策の理解~国が推進する医療DXとは~

自社商材を差別化現場や商材の価値を改善・高める
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第4回 医療政策の理解~2024年度診療報酬改定~

1. 2024年度診療報酬改定の改定率

2024年度の診療報酬改定では、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応」を基本方針とし、ほとんどの財源が「医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組み」に充てられました。診療報酬本体の改定率は+0.88%ですが、薬価や材料費を含めると全体では-0.12%となりました。このうち、+0.61%は看護職員や病院薬剤師などの賃上げに使われ、0.28%は40歳未満の勤務医師・歯科医師・薬剤師、事務職員などの賃上げに充てられます。合計で+0.89%が賃上げに充てられますが、生活習慣病の管理料や処方箋料などは0.25%のマイナスとなっており、診療所にとっては厳しい改定であったといえます。

出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定【全体概要版】」P2(2024/3/5)

2. 賃上げへの対応(ベースアップ評価料の新設)

厚生労働省は、医療従事者等への賃上げについて、2024年度に+2.5%、2025年度に+2.0%のベースアップを目標としています。これに伴い、看護職員や病院薬剤師など(40歳未満の勤務医師等や事務職員を除く)を対象とした外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)が新設されました。無床診療所で賃金増率が1.2%に達しない場合には、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)も算定可能です。また、病院や有床診療所では、入院ベースアップ評価料が適用されます。40歳未満の勤務医師・歯科医師・薬剤師、事務職員などへの賃上げ対応として、初診料、再診料・外来診療料、入院基本料等も引き上げられました。

3. 入院料等の通則の見直し

入院料等の通則では、以下の見直しが行われました。

身体的拘束の最小化
身体的拘束の最小化に関する基準を満たすことができない保険医療機関は、入院基本料、特定入院料、短期滞在手術等基本料の所定点数から1日につき40点が減算されます。

栄養管理体制の基準の明確化
施設基準に、標準的な栄養評価手法の活用や退院時も含めた定期的な栄養状態の評価が位置付けられました。

意思決定支援の基準
入院料の施設基準における意思決定支援の基準に、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を定めていることも要件化されました。

4. 医療DXの推進

今回の改定では、「医療DX推進体制整備加算」が新設されました。オンライン資格確認で取得した診療情報・薬剤情報を診療に活用する体制整備、電子処方箋管理サービスや電子カルテ情報共有サービスの導入が評価されます。

5. 医療・介護の連携

医療と介護のさらなる連携が進められています。介護報酬の面でも、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院に対して、3年以内に協力医療機関を選定し、日常的に連携することが義務付けられています。診療報酬では、新たに「協力対象施設入所者入院加算」が設けられました。この加算は、在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所、在宅療養後方支援病院、地域包括ケア病棟を持つ病院など、在宅医療のバックアップ機能を持つ医療機関が対象です。また、新設された「介護保険施設等連携往診加算」は、介護保険施設等で療養中の患者が急変した際に、その従事者の要請に応じて行う往診に対して算定されます。

6. 増加する高齢者救急への対応

中央社会保険医療協議会では、高齢者の救急搬送の受け入れについて議論が多く行われました。厚生労働省は地域包括ケア病棟での対応を期待していましたが、13:1の看護体制では現実的ではないとの議論から、「地域包括医療病棟」が新設されました。地域包括医療病棟は、高齢の救急患者を積極的に受け入れる急性期と、多職種によるリハビリ・栄養管理、意思決定支援、早期在宅復帰を目指す回復期の2つの医療機能を包括的に提供します。

出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定【全体概要版】」P45(2024/3/5)

最後に

2024年度の診療報酬改定は、賃上げ対応による医療現場の処遇改善を図るための評価料の新設など、医療従事者の賃上げや人材確保を重視した内容となりました。また、医療DXの推進や医療と介護の連携強化、高齢者救急への対応も重要なポイントです。
新規参入を考える企業にとって、これらの改定内容を理解し、自社の製品やサービスがどのように医療現場に貢献できるかを見極めることが求められます。

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本稿の執筆者

森實 雅司(もりざね まさし)/株式会社日本経営 メディアコンテンツ事業部

株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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