カリキュラム刷新「次世代介護経営者・経営幹部養成塾」振り返り

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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート

2025年4月に「次世代介護経営者・経営幹部養成塾」の卒業式が行われ、感動のうちに閉幕しました。そこで、江畑直樹さん(株式会社ミライバ代表取締役社長)と、宇野明人さん(養成塾事務局長)にお越しいただき、今期の「養成塾」の振り返り会をしました。
介護経営・幹部養成塾、8か月におよびカリキュラムを刷新
― まず、「次世代介護養成塾」の8か月に及ぶプログラム、まことにお疲れさまでした。
江畑氏 今期も無事に修了することができ、胸を撫でおろしています。第6期の開催ということでスタートしてから6年目だったのですが、このような本格的なカリキュラムを続けてこられたことに、心から感謝したいと思います。
実は、この第6期は私たちにとっても特別な期で、カリキュラムを抜本的に刷新した年だったのです。より難易度の高いカリキュラムに挑戦したのですが、ご参加の塾生の皆さまもついてきて下さり、結果として感動的な卒業式を迎えることができました。
― 一言で言うと、どのようにカリキュラムを刷新したのですか。

江畑氏 前5回のカリキュラムももちろん本格的だったのですが、学んで習得するという割合が大きかったように思います。学びはもちろん欠かせないのですが、塾生を送り出してくださったトップの皆さんは、さらに踏み込んで「意識と行動に変化がでる」ことを望まれています。
学ぶだけでなく、変化する。そこに踏み込むことは、私たちだけでは実現できません。塾生の皆さまがついてきてくださらないと、成り立たないのです。本当にそれができるだろうか、うまくいかなければ、消化不良のまま達成感のない形で終わってしまいます。第6期はこのように、チャレンジの年でした。
宇野 抜本的に見直すために、コンセプトそのものから再構築しました。カリキュラムのご案内にも記載のとおり、「業界と向き合う」「地域と向き合う」「経営と向き合う」「チーム・部下と向き合う」「自分と向き合う」この5つの柱をまず立てました。このコンセプトのもとに、年間プログラムも大きく改編しました。
― 新しいカリキュラムは、「向き合う」がコンセプトなのですね。
江畑氏 現実には、目先の業務で手一杯で、そこに飲み込まれています。そこからがスタートです。しかし、次世代の経営を担う塾生の皆さまは、業界にも地域にも、経営にもチームにも向き合わなければならない。そして、自分自身にも向き合う。あなたはリーダーとしてどう向き合うのですか? そういうことが、常に問われるカリキュラムとなっています。
― 向き合う順番にも、意味があるのですか?
江畑氏 はい、順番が重要です。まずは業界や地域に向き合う。抽象的だし「自分事(じぶんごと)」にはなかなかできません。それでも世の中の動きを知り、頭の片隅に常においておく必要があります。
そして、経営・チームに向き合う。経営やチームの話になると、より具体的で学び甲斐があります。しかしまさに自分事なので、大きな葛藤もあります。そこで、ここに時間をかけて丁寧に扱うことにしました。
最後に「自分と向き合う」。この段階になると、ご参加者の皆さまに、まさに「変化」が生まれます。
8か月を通して、私たちは「向き合う」ことにチャレンジし、迫ることができたと思っています。涙がこぼれ、感動が生まれるシーンが数々ありました。
「次世代介護経営者・経営幹部養成塾」未来の介護リーダーのためのプログラム
「対話」することで気づきが生まれ、言語化できるという経験
― 事務局長の宇野さんにとって、全体を通して神回を挙げるとすれば、どの回が印象に残っていますか?
宇野 毎回講師として登壇される方々が、想いを持っている方、輝いている方々ばかりなので、リーダー像として大きな学びがあると思います。しかし、最初は凄すぎて塾生の皆さまの現実とはギャップを感じられるかもしれません。
そんな不安の中で、カリキュラム第3回「経営と向き合う」。それまでの強烈なインプットを踏まえて、自法人のリソースを棚卸しし、自分たちの現在地がどこで、どこに向かうのかを再設定します。自分事にして「向き合う」ことで、再び走り出すことができる。この第3回が、全体の背骨になる重要な分岐点だったと思います。
― 宇野さんは塾生の皆さまとの面談フォローもずっとされているのですよね?
宇野 ご面談フォローはご希望される方だけなのですが、今期からカリキュラムが変わり、面談のご希望も明らかに増えました。毎月、多い方では1時間半もの面談となることもありました。
塾生の皆さまは、さらに自法人の経営者の方とも面談をするのですが、そちらは3時間もの面談になった方もおられます。しかし「対話」することで気づきが生まれ、言語化できるようになります。
経営者にとって最も大切な資質の一つが「対話」だと、私は思っています。学ぶだけでなく、そこから対話を重ねていくご経験をされたことは、この先の経営にとって、大きな財産になると確信しています。
そして、カリキュラム最後の卒業式では、「未来への展望」をお一人ずつご発表。「学んだ言葉」ではなく、「ご自身の言葉」で発表される方が多かったという肌感があります。
送り出されたことへの感謝が、場を特別なものにする
― 確かに、卒業式は毎回感動的ですね。なぜあんなに感動してしまうのでしょうか?

宇野 塾生の皆さまからの声を振り返ってみると、「この塾を経て、法人のことが好きになった。もともと愛着はあったが、もっと好きになった」といった感想を、よくいただきます。好きになるということは、「自分事」以外の何ものでもありません。法人や働く仲間のことを、自分自身に重ねて同じ気持ちになることができたのであれば、こんなに嬉しいことはありませんね。
それから、卒業式はやはり特別な場です。誰に向かって、どのようなメッセージを発信するのか、皆さま本当に悩みに悩んでギリギリまで発表内容を練られています。
実は、入塾にあたり、送り出す側の経営層の方々からは、塾生の皆さまに「願い」を書いていただきます。「自分の役割を権限委譲したい」「経営を一緒に考える話し相手になってほしい」「次世代の支えになる人脈を作ってきてほしい」など、なかなか面と向かって言えない「願い」を、託されます。
卒業式は、そんな願いに対して、答える場にもなっています。お一人おひとりが、期待されて送り出してくださったことに感謝や恩の気持ちがあって、そういう気持ちで参加してくださるので、毎回の学びの場が、本当に特別なものになっていると思います。
事業を立て直すということは、自分自身を立て直すということ
― 第6期の挑戦は、塾生の皆さまに支えられて大成功だったようです。第7期が始まりますが、カリキュラムの改善は何かお考えですか?
江畑氏 さすがに海外人材の活用については、避けられないテーマになっていると思います。第7期では、海外人材の活用についても、織り込みたいと思っています。
「次世代介護経営者・経営幹部養成塾」で、私たちが最も大切だと考えていることは、経営者という立場で経営をするのではなく、自分自身がそうなりたいと思っている、本当の自分と重ねて、経営に向き合えるようになっていただきたい、ということです。
環境がこんなにも変わっている中で、いまのままでよいと思っておられる経営者の方はおられないでしょう。しかし、それを吐き出す場もなく、先の見通しが立たないのにお一人で背負われている。
そんな状況を打開し、事業を立て直すということは、どうご自身を立て直すかということと、イコールだと思います。そこに向き合ってこそ、「意識と行動に変化がでる」のだと思います。心の底から「こうなりたい」という願いのある経営に、挑戦していけるのだと思います。
― 「次世代介護経営者・経営幹部養成塾」が、何を目指して何に挑戦しているのかが、垣間見えたような気がします。本日は、ありがとうございます。

次世代介護経営者・経営幹部養成塾
未来の介護リーダーのためのプログラム