病院を変える一歩は、私たち自身の内側にある

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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
7月27日(日)、「病院経営者・後継者塾」のご卒業生、病院経営者・経営幹部23名が集まり、上半期を振り返り、下半期の方向性を見定めるセッションを開催しました。ここでは、その場で見えてきた気づきや感想をお伝えします。
なぜ「内側」を見つめるのか
今回のプログラムは以下の流れで進めました。
- 経営層が抱える課題を洗い出す
- その課題の本質を探求する
- 本質を踏まえ、これから向き合うべきテーマを明らかにする
ここで大切にしたのは、単なる「問題の分析」ではありません。
人間関係のトラブル、職員のモチベーション低下、後継者育成の停滞──病院において繰り返し現れる課題の多くは、表面的に見ると制度や仕組みの不備に見えます。しかし本質的には、経営層の思考パターンや組織に深く根付いた風土、さらには無意識の習慣がつくり出していることが少なくありません。
だからこそ、「外側ではなく内側を見つめ直すこと」が必要になるのです。
内側を見つめることは容易ではない
とはいえ、自分たちの内側に原因を見出すのは簡単なことではありません。
経営層にとっては、自らが長年築き上げてきた前提や判断の枠組みを問い直すことになります。
管理職層にとっては、「責任ある立場だから自分が背負って当然」「部下のために自分が耐えるのは仕方ない」といった思い込みに気付くことが求められます。
いずれも、これまで当たり前のように信じてきたことを見直す作業であり、ときに痛みを伴います。なぜなら長年の経験や成功体験に基づく「当たり前」を見直すことは、自分自身のアイデンティティに触れる痛みを伴うものになるためです。だからこそ、多くの組織は「制度の不備」「人材の不足」といった外側の要因に問題を帰属させがちです。
けれども、組織の深層にある無意識のパターンを解きほぐし、自分たちの内側を丁寧に見直すことでしか、本当の意味での変容は起こりません。これは決して容易なことではありませんが、そこにこそ可能性が眠っているのです。
参加者の気づき
今回のセッションでも、参加者からは次のような声が寄せられました。
- 「なぜ問題が起こるのか、なぜモチベーションが上がらないのか、その根底を探る必要を実感した」
- 「経営者の“当たり前”という思い込みが、職場環境を悪化させる要因になっていると気付いた」
- 「責任ある立場だから耐えて当然という思い込みが、自分にも周囲にも存在していた」
- 「部長の献身がかえって職員の成長を阻んでいる可能性に気付かされた」
いずれも「自分たち自身の内側に課題がある」と受け止めた言葉でした。外側に原因を探すのではなく、自らの内側を見つめ直すこと。容易ではないけれど、その一歩を踏み出した瞬間に、新たな可能性が確かに息づき始めることを、参加者全員で感じ取る場となりました。
内省と対話が生む可能性
今回の会は、日本経営が主催する「病院経営者・後継者塾」の卒業生を対象に実施したものです。視座が高く、責任ある立場の方々が集い、互いの気づきを分かち合いながら内省を深めることで、多くの可能性が生まれました。
「自分の内側を見直すこと」は孤独で苦しい作業になりがちです。しかし、同じ立場にある仲間とともに語り、耳を傾け合い、問いを重ねていくことで、安心して自らを振り返ることができるのです。その積み重ねが、病院の組織文化を根本から変えていく力となります。
今後のご案内
病院経営者・後継者塾は、2026年5月から始まる第8期の募集を開始しています。すでに定員の半分以上が埋まっていますので、ご関心のある方はぜひお早めにお問い合わせください。
また、今回のセッションで用いたアプローチは「組織開発」と呼ばれる手法に基づいています。病院の内側に根付く課題と向き合い、文化や風土そのものをどう変えていくか──そうした問いに向き合う学びです。
9月16日には、病院での実践事例をもとにした組織開発講座「新時代の進化する組織」を開催します(アーカイブ配信あり)。病院の未来をともに探りたい方は、ぜひご参加ください。
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本稿の執筆者

江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 代表取締役
2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事した後、2018年に株式会社ミライバを設立。組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。

宇野明人(うの あきひと)
株式会社日本経営
介護福祉コンサルティング部 チームリーダー
2020年、日本経営に入社。福祉・介護事業所や行政を中心にコンサルティングを行い、人事制度の構築・採用力強化・研修の企画実施・部門別採算制度の導入・地域包括ケアシステムの推進支援などに取り組む。定量面と定性面の両側面を重視した実践的な支援を特徴としている。
また、医療・福祉事業所の経営者および経営幹部を対象とした養成講座のコーディネーター・講師を務め、これまでに延べ100名以上の卒業生を輩出している。
株式会社ミライバ/株式会社日本経営
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