真の病院DX「DX=D×CX」が始まった!~デジタルによる医療職代替を認める令和8年度診療報酬改定?~
-
業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
レポート要約
- デジタルが「労働力」として認められる:ICT活用で看護配置の1割減少を容認し、AI・RPA導入により医療クラーク1人を「1.3人分」と換算する制度が開始される。
- 「D×CX」による人手不足の解消:単なるデジタル化(D)ではなく、2040年問題を見据えた組織変革(CX)こそが、患者受け入れ制限を防ぐ「真の病院DX」となる。
- 事務職の「高付加価値化」が戦略のカギ:DXで捻出した余力をリ・スキリングに充て、一般事務を「AIを使いこなす医師事務作業補助者(医療クラーク)」へ転換し、医療職の負担を劇的に軽減する。
デジタル投資が医療職員配置に認められ始めた?
2026年1月23日には令和8年度診療報酬改定の短冊(※ⅰ)が示されました。その中で私が病院DXという文脈で注目したのは、「ICT等の活用による看護業務効率化の推進」と「医師事務作業補助体制加算の見直し」です。
前者については、ICT機器等の活用により看護要員の業務を軽減したうえで、適切に患者の看護を行うことができる体制がある場合は、看護職員に対する看護師の比率等について、1割以内の減少である場合は、入院基本料等の基準を満たすとするものです。
後者は、ICT機器等を活用した医師事務作業の業務効率化・負担軽減に取り組む医療機関について、医師事務作業補助者の人員配置基準を柔軟化するというものです。これらをイメージ画像としてNotebookLMで生成すると、それぞれ以下のようになります。
■ICT活用による看護配置基準の柔軟化

■生成AI・RPAのみなし人員配置基準化

両者のポイントは、見守りセンサーや情報共有端末、さらには生成AIやRPAを医療職の人員配置とみなすような人員配置基準の緩和措置が含まれている点です。医師事務作業補助体制加算では1.3人換算とされており、看護配置基準では看護職員に対する看護師の比率等について、1割以内の減少であれば、ICT投資によって許容するという内容となっています。
いよいよCX(組織変革)を伴う真の病院DXが始まった
弊社お役立ち情報の下記レポートのように2022年より弊社では「DX=D×CX」(デジタル化×組織変革)と定義して、真の病院DX支援を推進してきました。
■医療DXとは?取り組み事例からみるDXの必要性と進め方
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-quality-89023/
今回の短冊で示されたデジタル化を条件とした医療職の人員配置基準の緩和は、まさにCX(組織変革)を伴う真のDXとなります。
また、下記レポートで詳述していますが、「2040年問題」と呼ばれる生産年齢人口の減少は、医療現場において看護配置基準を下回ることにより、“働き手不足”が原因となって患者受け入れを制限しなければならなくなることを指します。
■第75回 日本病院学会ランチョンセミナーレポート
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-organization-quality-improvement-124052/
前述した「ICT等の活用による看護業務効率化の推進」は、その看護配置充足率の緩和という、病院経営の最大の痛み(ペイン)へダイレクトに作用します。
やはりデジタル化×医療クラークへの職種転換が有効!
さらに、弊社お役立ち情報の下記レポートなどで主張してきたように、事務職のDXとしてはデジタル化で事務職の業務負担を軽減し、その後、リ・スキリングと配置転換を行い、“事務職⇒医師事務作業補助者(医療クラーク)へ職種転換”することが有効です。
■DXが職種転換を実現する?~令和6年度診療報酬改定から推察する病院DXの未来~
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-finance-organization-quality-107566/
今回の「医師事務作業補助体制加算の見直し」は、まさにこの取り組みへダイレクトに影響します。生成AIやRPAを広く活用している場合には、医師事務作業補助者1人を1.3人として配置人数に算入することになっています。これは“デジタルの活用により配置人員を3割増し”とみなす強力な推進策です。
弊社では、こうした複数のレポートでの論考を踏まえて、事務職の病院DXを重視し、バックオフィス領域へのERP導入支援やRPA導入支援、さらには医師事務作業補助者(医療クラーク)への職種転換を目的とした医師事務作業補助者研修(32時間)としてのeラーニングサービスやクラーク養成講座という実技研修も提供しています。また、職種転換や配置転換を円滑に進めるための人事制度構築支援も整備して参りました。
●弊社病院DX支援特設サイト
●ERPと弊社クラウド人事評価システムのAPI連携事例
今回の診療報酬改定での「医師事務作業補助体制加算の見直し」は、これまで弊社が主張してきた病院の事務職DXを後押しするものです。
それに加えて「ICT等の活用による看護業務効率化の推進」もあわせて考えれば、これまで医療職の人員配置基準によって組織変革(CX)に制限がかかっていて、真のDXを進められなかった病院において、その制限を取り払われ始めたことを示します。
そのほか「多職種が専門性を発揮して病棟において協働する体制に係る評価」も新設されています。これはDXの成果である“患者経験価値(PX)向上”のカギとなる“多職種協働型組織の推進策”です。
これらの政策を俯瞰して見れば、“2026年度は真の病院DX元年”になると考えます。ぜひ経営者の責務として、中長期的な事業計画から逆算した、真の病院DXを加速させるべきでしょう。
Q&A 例
Q1:AIやRPAを導入して医師事務作業補助者を「1.3人」として算定できることは、病院の経営数値にどのような影響がありますか?
A1:少ない実人員で上位の加算区分を維持できるため、採用コストの抑制と収益の最大化を同時に実現できます。これは、深刻な人手不足への対応だけでなく、人件費率の適正化と高い診療報酬(加算)の獲得を両立させる「強力な推進策」となります。
Q2:ICT活用による看護配置基準の「1割減」の容認は、現場の「患者受け入れ制限」をどう解消しますか?
A2:採用数が基準に満たない場合でも、ICTで安全性を担保することを条件に、病床を閉鎖せず稼働し続けることが可能になります。今回の改定では、見守りセンサー、音声入力、情報共有端末(ICT)を導入し、業務効率化と看護の質が担保された体制であれば、看護師比率等の基準を1割以内で減じても入院基本料等の基準を満たすものとされました。これにより、病院経営の最大の悩みである「働き手不足による病床稼働制限」というペインにダイレクトに作用し、地域医療の維持が可能となります。
「医師マネジメント専門サイト」もご活用ください
※ⅰ)中央社会保険医療協議会 総会(第644回)「総-2個別改定項目について(その1)」(2026年1月23日閲覧)

本稿の執筆者
太田昇蔵(おおた しょうぞう)
株式会社日本経営 部長
【略歴】
大規模民間急性期病院の医事課を経て、2007年入社。電子カルテなど医療情報システム導入支援を経て、2012年病院経営コンサルティング部門に異動。
医師人事制度と他院ベンチマークデータ・診療科別原価計算を組み合わせて「医師マネジメントシステム」と定義し高次化。現在、医師マネジメントが特に求められる医師数の多いグループ病院・中核病院のコンサルティングを統括。
また、医療情報システム導入支援および組織人事コンサルティング経験を踏まえて、「DX=D×CX」(デジタル化×組織変革)と定義して真の病院DX支援も推進。
その他、優良病院とヘルスケアスタートアップの共創イベント『病院経営イノベーションピッチ』を発案し、その企画・運営責任者としても取り組んでいる。
・第1回病院経営イノベーションピッチ
【学位・登録】
・2005年 西南学院大学大学院経営学研究科博士前期課程修了
・2017年 グロービス経営大学院MBAコース修了
・2023年~ 総務省:経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー
【論文・寄稿】
・データドリブンアプローチのための病院DX人材育成(2025年)
・建築費高騰時代に,建て替えを実現するための病院DXの活用(2025年)
・タスクシフティングのための事務作業効率化(2020年)
・事務長は病院IT化を幹部職員育成の場に活かすべき(2014年)
・中小規模病院での組織マネジメントの脆弱性がHIS導入への障壁となる(2012年)
【講演等】
・産経新聞社主催「地域医療DX戦略フォーラム」基調講演(2026年)
・第10回JCHO地域医療総合医学会 ランチョンセミナー(2025年)
・第75回 日本病院学会 ランチョンセミナー(2025年)
以上
株式会社日本経営
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。


