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「賃上げ」を「成長への投資」に変える!2026年介護報酬の臨時改定・活用戦略

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

はじめに:給与を上げたのに、なぜ現場の不満は消えないのか?

最低賃金の引き上げに伴うベースアップの実施や、処遇改善加算の適切な分配など、人手不足が深刻化する中、多くの法人が可能な限りの処遇改善に取り組んでいます。しかし、そうした努力とは裏腹に、現場からは「これだけしか上がらないのか」といった落胆の声が聞かれ、期待したようなモチベーション向上につながらないケースが後を絶ちません。

介護業界では人手不足を背景とした倒産件数が過去最多を更新し、賃金水準の向上は喫緊の課題となっています。一方で、「給与アップ」という対症療法だけでは、職員の不満を本質的に解消することは困難です。

本レポートでは、2026年介護報酬の臨時改定の動向を整理するとともに、賃上げを単なるコスト増に終わらせず、健全な組織成長に向けた「投資」に変えるための人事戦略について解説します。

1.2026年介護報酬の臨時改定の概要と「経営姿勢」を問う算定要件

今回の改定の最大の狙いは、他産業との賃金格差(月給平均で約7万円の差)を是正し、人材流入を促進することにあります。

最大1.9万円の賃上げ支援と上乗せ要件

2026年介護報酬の臨時改定に伴う支援パッケージでは、介護従事者の処遇改善に向け、最大1.9万円の賃上げを可能とする段階的な支援が示されています※。

①幅広い職種への支援: 1.0万円(看護師、ケアマネ、事務職なども対象)

②生産性向上・協働化の支援: 0.5万円(ICT活用や人員配置基準の特例適用など、生産性向上に取り組む事業所が対象)

③職場環境改善の支援: 0.4万円(上記①②の全額を人件費に充当する場合などの追加支援)

※出典:厚生労働省「令和7年度・8年度 介護従事者の処遇改善に向けた支援パッケージ」(令和6年11月公表資料など)

注.令和7年度予算案および今後の介護報酬の臨時改定に向けた方針として示されているものです。最終的な運用ルールや詳細な算定要件は、今後の社会保障審議会などの議論を経て決定されます。(2026年2月26日現在)

※出典を元に弊社にて作成

ここで注意すべきは、この上乗せ支援が「生産性向上」や「ICT活用」を要件としている点です。これまでの「一律の分配」ではなく、国の進める改革に法人がどう向き合うかを問う、いわば経営姿勢を試す仕組みへと変化しています。

2.組織を腐らせる「納得感の欠如」と不満の正体

なぜ、給与を上げても不満が生じるのでしょうか。その背景には、報酬の「額」そのものよりも、他者と比較した際の「納得感」が優先されるという心理的メカニズムがあります。

かつて心理学者のフレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」によれば、給与は「衛生要因」に位置づけられます。不足すれば強い不満を引き起こしますが、それだけで「やる気(動機づけ)」を維持し続けるのは難しいとされています。つまり、給与アップはあくまで不満を一時的に和らげる処置に過ぎず、本質的な意欲の源泉(納得感)にはなりにくいという特性があるのです。

「相対的剥奪感」が健全な価値観を蝕む

職員が抱く不満の多くは、給与の絶対額ではなく、他者と比較した際の「納得感の欠如」に起因します。「なぜ、自分と同じ、あるいは自分より貢献度の低いスタッフと同じ昇給額なのか」という不公平感は、やがて「頑張っても報われない」という心理的な疲弊を招きます。

2026年介護報酬の臨時改定による加算を、単なる給与の上乗せだけで解決しようとすると、次第に「もらって当たり前」という権利意識が強まり、要求がエスカレートする中毒症状を引き起こしかねません。

優秀な人材から去っていくリスク

納得感が欠如した職場では、現状維持を受け入れる職員が留まる一方で、そのシワ寄せを背負うハイパフォーマー(優秀層)ほど、正当に評価されない状況に失望し、静かに組織を去っていきます。良かれと思って実施した「一律の賃上げ」が、結果として組織の質を低下させてしまう。この「副作用」には、細心の注意が必要です。

3. 2026年介護報酬の臨時改定を機に進めるべき「人事制度」の再構築

賃上げを組織の推進力に変えるためには、経営理念と人事制度、および処遇を1本のストーリーでつなぐことが不可欠です。

① 役割の明確化と「適材適所」の配置

かつて主流だった「年功序列型」の賃金制度は、採用時の賃金を低く抑え、長く勤めることで昇給額がリーダー層が現場のフォローに追われ、本来の管理業務や育成が後回しになってはいませんか?等級ごとに求める役割(マネジメント、品質管理、若手育成など)を改めて定義し、「法人として何を期待しているか」を明確に共有することがスタート地点となります。

② メリハリのある賃金体系への移行

年功による自動昇給を見直し、役割の大きさと貢献度に応じた報酬構造に整えます。

  • 昇給構造の最適化: 一般職のまま一定の習熟水準に達した場合は昇給を緩やかにし、原資を確保する。
  • 上位役割への還元: 責任ある立場や高い専門性を発揮する職員には、手厚い報酬設定を行い、キャリアアップの動機づけとする。

③ 価値観を反映した「プロセス評価」の導入

技術や効率だけでなく、「法人が大切にしている価値観(理念)」に基づいた行動を評価項目に組み込みます。これにより、「正しい行動をとる人が正当に報われる」という組織文化を醸成します。

4.まとめ:2040年を見据えた「地盤固め」の好機に

2040年に向けて生産年齢人口が急減する中、選ばれる法人であり続けるためには、2026年介護報酬の臨時改定というタイミングで「組織の足腰」を鍛え直せるかが鍵となります。

改定による増収分を、単なるコスト増と捉えるか、それとも自律的に動く組織へと生まれ変わるための「投資」と捉えるか。その選択が、法人の未来を左右します。本レポートで解説した通り、人事制度改革は単なる賃金表の改定ではありません。
「人件費シミュレーシ2026年介護報酬の臨時改定への対応や貴法人の状況に応じた人事制度の見直しについて、お悩みやご質問がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

本稿の執筆者

尾花 龍(おばな りゅう)/株式会社日本経営介護福祉コンサルティング部

介護福祉事業所を中心にコンサルティング実績を有している。『「誰もがその人らしく暮らすことを選択できる」社会の実現に貢献する』というMissionのもと、日々コンサルティングに従事している。特に、人事制度構築や考課者研修など、組織機能改善を得意分野としている。従事したテーマは多岐にわたり、「法人の未来を創る」をモットーとし、各法人の実情に即した制度構築の実現を目指し支援している。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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