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病院・クリニックの資金繰り計画、コロナ危機を乗り越える

  • 業種 病院・診療所・歯科
    介護福祉施設
  • 種別 レポート

コロナ禍における病院・クリニックの資金調達Vol.1

コロナ禍における医療機関の資金調達 解説

日本経営グループ 資金調達支援センター(医療法人・社会福祉法人)
甲斐田誠一郎

現預金はいつまで持つか

2020年3月の月次試算表、2020年4月の収益実績を踏まえ、まず考えなければならないことは、「コロナによる減収が続いた場合、いつまで現預金が持つか」です。

コロナによる減収はいつまで続くのか、現時点においてそれは誰にも分かりません。
また、減収の理由や程度によっても変わってくるでしょう。
ただ、大切なことは、一定の見通しを立ててシミュレーションしておくことです

参考として、減収の理由別に「収益回復までの期間」を以下に示しました。
これは弊社がこれまで再生事業に取り組んできた経験から示したものです。
1つの目安としてお考えください。

収益が回復するまでの期間(目安)

患者の減少による減収

3~6ヶ月

外来・通所・訪問事業の事業縮小による減収

6~9ヶ月

病棟閉鎖による減収

9~12ヶ月

まずは2020年4月の収益実績をもとに、5月以降の月次の収益の見通しを立ててください。患者数は4月実績をもとにし、1日あたりの単価は、2020年3月と2020年4月の実績を比較して診療報酬改定の影響も検証しておくと良いでしょう。

次に費用です、3~4月の支出で、医療消耗品など平時より明らかに増えているものがあれば、それを5月以降の見通しに加えておきましょう。それほど大きな支出がない場合は昨年実績で良いと思います。

そして2021年3月までの月次の損益計画を立てます。今は大きな見通しを立てる段階なので、シミュレーションを細かく精緻に作成する必要はありません。また収益の回復期間や費用の上乗せの程度に迷った場合は、回復期間は長めに、収益は少なめに、費用は多めに…悲観的に判断してください。

最後に、月次の損益計画をもとに延期できない設備投資を加味して、資金繰り計画を月次で展開していきます。そして現預金が2021年3月まで持つかどうかを確認していきます。

もっと簡便に行う方法は、以下の通りです。

簡便な資金繰りシミュレーション(例)

①収益(2020年4月実績)

2.0億

②費用(2019年4月実績もしくは2020年3月実績)

2.3億

③経常利益(①-②)

▲0.3億

④減価償却費

0.1億

⑤営業キャッシュフロー(③+④)

▲0.2億

⑥金融機関への返済(2020年4月実績)

0.1億

⑦キャッシュフロー(⑤-⑥)

▲0.3億

⑧現預金(2020年3月末)

2.0億

⑨延期できない設備投資

0.2億

⑩資金ショートまでの期間((⑧ー⑨)÷⑦)

6ヶ月

※上記に加えて賞与資金が発生します、資金ショートまでの期間に応じて考慮してください。

先行きが不透明な時は、まずは資金確保が最優先です。
資金調達は様々な選択肢がありますが、手続に時間を要するものや入金が遅いものもあります。シミュレーションして2021年3月まで資金が持たない医療機関は、速やかに資金調達の検討を始めましょう。簡便な方法で6ヶ月以下になる医療機関は急務です。

次の記事:「Vol.2 医療機関の資金調達の選択肢とその特徴」

このレポートの解説者

甲斐田誠一郎(かいだ せいいちろう)
株式会社 日本経営

大学卒業後、外資系コンサルティングファーム、国内金融機関にて主に金融・不動産業務に従事。その後、外資系ファンドの日本代表、東日本大震災事業者再生支援機構を経て、2014年日本経営グループに入社。入社後は、病院・介護施設の再生業務・資金調達支援業務に従事し、2019年に三井住友ファイナンス&リース、日本政策投資銀行とヘルスケアファンド(サンブルーヘルスケア)を設立、ファンド運営に従事。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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