トップレポート/経営者が考える、いま一番大事なこと
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経営者が考える、いま一番大事なこと
株式会社日本経営ホールディングス / 取締役 先崎 浩
コロナ以前の世界には戻らない
緊急事態宣言が9月30日まで延長されたものの、第5波が落ち着きはじめたところです。これから秋冬を迎えるにあたって、第6、第7波とまだまだ予断は許さないところですが、少しずつ日常生活に戻りつつあります。
ここ数年は、地震・台風・大雨といった天災続きでした。このコロナ禍は天災時の復興とは異なり、まだ全力疾走出来るような状態ではありませんが、感染拡大防止を保ちつつ経済状態も正常化していかなければなりません。
そういった中、「なかなかアクセルが踏み込めず、どうすれば良いか?」というご相談をいただくことがあります。その際、経営者が考えなければならないポイントが幾つかあるのだと思います。
足元をよくよく見よ
先ず第1は、今までのやり方や過去の成功体験が通用しなくなる時代だということです。コロナ禍の収束後はパラダイムシフトが起こると予想され、正に発想の転換が求められます。
第2は、脚下照顧です。元々は禅宗の語であり、「自分の足元をよくよく見よ」という意です。コロナ感染拡大により、多くの企業でテレワークが導入されました。当社でも在宅勤務の推奨に舵を切ったところ、「移動時間が短縮された」「Web会議が増え、多くの顧客とのコミュニケーションが密になった」など社員からも概ね好評です。しかしその一方で、在宅勤務に大きなストレスを抱える社員も散見されました。
社内アンケートでも「過半数は快適」と高評価だった一方で、「3分の1は不安・ストレスが増した」という意見があり、若年層より中高年層の方がその傾向が強くありました。
本来ならば職場で顔を合わせて気づけるものが、テレワークではコミュニケーションが極小化してしまい、難しくなります。さらに新入社員に至っては、新しい職場でどう居場所をつくるのか、仕事にどうやり甲斐を体験してもらうのか。このような切実な問題があります。発想を転換して思い切って舵を切るだけではなく、足元をよくよく見なければなりません。
使命感を再確認する
先行きが見えない中、経営者の皆さんも非常に悩ましい舵取りを強いられていますが、不安に思う気持ちは社員・職員も同じ状況です。「足元を見る」にも通じることですが、世の中が変化するからこそ、「自分達の仕事に対する考え方、向き合い方」を自問する、またとないチャンスになります。
ピーター・ドラッカーの『プロフェッショナルの条件』の中に西洋の有名な寓話があります。
ある建築現場で三人の石工に『今、何をしているの?』と尋ねたところ、
- 一人目の石工は『石を切っているんだ。見ればわかるだろう』と答えた。
- 二人目は『お金を稼いでいるんだ。生活があるんでね』と答えた。
- 三人目は『みんなで神様にお祈りするために、教会を建てているんだ』と答えた。
この「三人目」は、一人目、二人目といったいどこが違うのでしょうか?
これはやっている作業は同じでも、仕事の目的や意義をハッキリと意識し、『何のために』『誰のために』という使命感で、大きな違いが出るということです。
企業には社会的責任があります。それは事業を通じて、社会をより良い方向に変えていく。人が働くうえで最も大切なのは、「使命感や遣り甲斐を持つこと」です。自分はこの時代に生まれてきて、何のために生きるのか。人生の意味、自分のゴールを考えることです。いまこそ、トップ自らのメッセージが、皆にとって勇気と動機づけになります。
顧客・社会が求めていることは、なにか?
『何のために』『誰のために』という原点・使命感を仲間と共に再確認する中で、経営者は第3に、次のことを考えなければなりません。
いま顧客が求めていることは、なにか? 社会が求めていることは、なにか?
これをいま一度、見直す必要があります。平時の経営においては、それほど意識しなくてもよかったかもしれません。しかし、環境変化に対応・適応するということの意味は、顧客の求めるもの、社会が求めるものが変化するということです。
例えば以下のような仮説から、自問自答を試みて下さい。
- コロナ禍で、今までのやり方が通用するのか?
- 過去の成功体験やデータで、考えたり判断したりしていないか?
- 新型コロナウィルスが収束し、パラダイムシフトになるような変化の芽はなにか?
- 世の中がいくら変化しても、必要とされるものは生き残るか?
- いま、何が必要なのか?
- 社員がいま、何を求めているか? 社員の本音はなにか?
- 顧客がいま、何を求めているか? 何を止め、何を始めているか?
周知を集めるために、何を問うのか
これらの自問自答で、見出した方針や戦略を、社員・職員の皆さんにぜひ発信してみて下さい。
なぜなら、「それをやってやろう」という気がなければ、実践力は産み出されないからです。自己実現やチームの目標達成など、何にでも例えることができますが、先ずなりたい自分や組織をイメージしなければ、それを到達しようと思えないのです。強い意志と明確なゴールが、組織にも個人にも必要だと思います。
厳しい環境の中、企業・組織が一枚岩となって結束し、この苦境を乗り越えていくための舵取りを、是非、実践いただければと思います。
このレポートの解説者
先崎 浩(せんざき ひろし)
株式会社日本経営ホールディングス 取締役
1994年日本経営に入社。医療機関のコンサルティグを中心として、財務・経営指導、経営改善、戦略立案などの多種多様な経営ニーズに応え、全国の国立大学をはじめ公的病院から民間病院まで多数の指導実績。神戸大学大学院法学研究科前期課程修了。2017年12月より現職。(公社)日本医業経営コンサルタント協会会員 認定登録 医業経営コンサルタント登録番号第7165号。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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