地域状況に沿った独自の評価で質の高い介護施設を目指す
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
情報を整理して評価する②
- 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントについて、現場のコンサルティングの実例を踏まえお伝えする。
- まずは複数回にわたり、介護施設の稼働率向上について具体策を交えたポイントを解説する。
施設評価シートの例(イベント、立地)
前回、施設評価シートを用いた競合他社の情報整理について、有料老人ホームの評価基準例を示した。
今回はシートの評価基準のうち、「イベント」「立地」「サービス(介護保険外サービス)」「設備」について評価基準の例を挙げていく。
なお、施設評価シートに「価格」という基準があったが、地域施設の価格帯をリストアップし、最低価格★5、最高価格★1、最多価格帯★3として振り分けると、貴地域の状況に沿った独自の評価基準を設けることができる。
イベント
★★★★★・・毎日個別レクがあり、外出イベントの実績がある。(1泊旅行など)
★★★★・・・毎日個別レクがある。
★★★・・・・毎日集団レクがある、もしくは定期的な個別レクがある。
★★・・・・・定期的に集団レクがある。
★・・・・・・特に何もなし。
立地
★★★★★・・駅5分圏内。病院、スーパーマーケット、公園が1分以内にある。
★★★★・・・駅10分圏内。スーパーマーケット5分以内、平地にある。
★★★・・・・駅15分圏内。平地にある。
★★・・・・・駅20分圏内。住宅地にある。
★・・・・・・駅30分以上。坂が多く外出に不便。近くに買い物するところがない。
「イベント」の充実は重要だが、顧客満足に繋がらなければ意味がない。
つまり、大々的で派手な集団レクやイベントを実施すればよいのではなく、むしろ派手さはなくても、個別の要望に応じて細かいニーズの達成に力を注ぐ施設の方が評価は高い。
「立地」に関しては、良い介護に立地は関係ないと言いつつも、利便性が高い方が優位にあることは、間違いない。立地の不利を何で補うかが施設運営の重要な視点となる。
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施設評価シートの例(介護保険外サービス、設備)
評価基準の「サービス」と「設備」である。以下の基準を参考にしていただきたい。
介護保険外サービス
★★★★★・・司法書士や弁護士と提携し、財産や権利擁護などのバックアップがある。
★★★★・・・介護保険外サービスが充実し、専属のコンシェルジュが配置されている。
★★★・・・・介護保険外サービスがいくつか準備されている。(包括支給)
★★・・・・・介護保険外サービスがいくつか準備されている。(出来高)
★・・・・・・特に保険外サービスなし。
設備
★★★★★・・居室内風呂、キッチン完備。共用部設備が充実している。
★★★★・・・居室内風呂、キッチン完備。共用部は基本的な食堂、機械浴がある。
★★★・・・・居室内洗面、トイレあり。共用部が充実している。
★★・・・・・居室内洗面、トイレあり。共用部は基本的な食堂のみである。
★・・・・・・居室内洗面、トイレ共有。共用部は食堂のみである。
介護事業所におけるサービスとは、本来であれば根本的な介護サービスの質を表わすものではあるが、外部から容易に確認できないため、介護保険外サービスの内容に絞っている。
介護保険外サービスに注力することは、施設運営にとって大きな手間であり、費用かスタッフの努力のどちらかを費やさねばならない。そこに力を注ぐことができる運営体制をもつ施設は、質の高い介護施設として評価をするべきである。
「設備」に関しては、外装の綺麗さも重要であるが、介護サービスの質とリンクされるものが主な評価の対象となるべきである。
つまり、自立を促す設備になっているのか、単なる収容所となっているのかでは、そこで暮らす利用者の生活の質に大きく関わってくる。特に、有料老人ホームを対象とした場合、なお重要な基準となる。
これらの評価で大切なことは、細かい評価基準を設けることではなく、どこかに基準を置いて同じ基準で比較していくことにある。評価の正確性に疑問があったとしても、まず、基準を設け比較することをお勧めする。
次回からは、実践準備編から実践編へ移り、顧客獲得につながる資料作成の方法を学んでいく。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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