急性期病院のMSWへのアプローチ方法
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
営業先の特徴を知る
- 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントについて、現場のコンサルティングの実例を踏まえお伝えする。
- また、介護施設の稼働率向上について具体策を交えたポイントについても解説する。
- 営業訪問先の特徴を知り、別個の対策を考える。第1回目は病院への営業のポイントについて考察する。
急性期病院への営業
「病院」と言っても複数のタイプがあり、例えば「急性期病院」と「回復期リハビリテーション病棟」では営業を行う際のポイントが異なる。
急性期病院とは、病気を発症したことで健康状態が悪化した場合にかかる病院である。急性期病院の患者は症状が変化しやすく、入れ替わるスパンが短いことがあるため、まめな連携が必須となる。
急性期病院からは、どのくらいの人数が介護事業所への入居見込みとなるのか。
例えば、平均200~400名の入院者がいる急性期病院で平均入院期間が14日だと考えると、ひと月のうちに400名から800名の患者が退院または転院している計算になる。
仮に、患者の半数が高齢者だとして、最低でも200名/月の対象者がいることになる。大半(9割程度)が自宅復帰されるとしても、残りの1割、つまり毎月20名が施設を検討している可能性がある。
この数字はあくまでも仮定でしかないが、いずれにせよ分母が大きく、時間を割いて訪問するに値するだけの可能性を秘めた先であることは間違いない。
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MSW(医療ソーシャル・ワーカー)へのアプローチ方法
入院患者が退院する際に、ほぼ必ずと言っていいほど仲介に入って退院調整を行うのがMSWである。我々の顧客である高齢者の情報が一手に集まるため、MSWへの営業は効果的といえる。
MSWは、情報が一手に集まってくる分、多忙な職種である。朝から晩まで申し送りやカンファレンス、書類作成、家族対応に追われてしまうことが多い。
また、退院患者の行き先を決めることも非常に骨の折れる仕事となる。
患者の家族が「この施設がいい」と早々に決めてくれれば、業務は楽になる。
しかし、患者の家族が、退院期限が迫るギリギリまで悩むと、医師、看護師から早く決めてほしいと急かされ、良い施設の紹介を求められる。そのため、介護施設からの営業はMSWの救世主にもなりえる可能性を秘めているのだ。
世の中には、介護施設紹介業者も多くいるため、そこで事足りるという見方もあるが、紹介業者は紹介料が必要なため高額案件が主となる。
患者にとって本当にフラットな紹介をしていくためには、地域の相談員の存在は重要となるのである。
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「地域の相談員」としての営業はどこにでも応用可能
MSWへの営業方法としては、特別な営業のコツがあるわけではない。ここまでのシリーズで述べてきたような「地域の相談員」として、先方のお役立ちを意識した、聞き込み主体の短い訪問が効果的である。
その代わり、困ったことがあると聞くことができれば、全力で解決するように取り組む。
それは、病院であろうと居宅のケアマネジャーであろうとスタンスが変わるものではない。
なお、上図は自施設のみのアピールを行った際に紹介してもらえる人数のイメージ図である。
比率はあくまでイメージでしかないが、現場の肌実感に即したものでもある。
20名の介護施設検討者がいたとして、通常の営業活動では、自施設に紹介してもらえるような案件となるのは1名程度でしかない。
「地域の相談員」として営業訪問をする以上、無理に自施設を紹介してしまうのはNGである。
あくまで「(営業ではなく)MSWのサポートです」という形を取る。もしすぐにご紹介いただけない場合は、挨拶のみで辞去し、翌週また同じタイミングで訪問する。その繰り返しとなる。
ちなみに、主に県や市が運営している公的病院では、公平性を保つ意味で、偏った入居案内は行わないことが多い。そのうえ1件の紹介があったとしても、簡単に入居につながるとは限らない。
上図の、通常営業の肌感覚であらわすとすれば、更に下がって施設検討者40名につき1件しか入居とならない感覚となる。
しかし、「地域の相談員」としての営業を行っていれば、条件が合う10件全てについて自施設で対応できる案件として扱うことができるようになる。
すると、見学契約率が50%であったとしても、月5件の入居者が確保できることとなる。
当然、自施設に合致しない利用者については他施設に紹介をすることで、地域内における公平性も保たれることになる。
今回は急性期病院のMSWに絞った営業に関する話題だったが、急性期病院への営業の実際ではMSWに限らないアプローチ先が出てくる。
次回は、急性期病院におけるその他の担当者に対する営業手法について解説する。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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