施設見学者のニーズに応えられる価値あるサービスの提供
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
介護福祉施設の見学者に対応する心構え/後編
- 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントについて、現場のコンサルティングの実例を踏まえお伝えする。
- 3回にわたり、見学対応の心構えについてお伝えする。
- 今回は見学対応のポイントについて考察する。
見学対応を行う上でおさえるべきポイント
前回、見学対応の具体的な手順についてお伝えする中で、まずは施設内の決められたルートを回る前に面談室に案内し、見学者の悩み事をトコトン聞くべきである、と記載した。見学者のニーズを知るところから見学はスタートするためである。何はともあれ、この部分が見学における最重要ポイントとなるため、ここではその掘り下げを行っていく。
見学対応の契約クロージングにおける効果が高いことは、第19回でお伝えしている。
(通所サービスなどで見学を行っていない場合も、体験利用を行っている場合はそちらに読み換えていただいていい。ポイントとなる部分は同じである)
そこでは、見学を見直せば営業活動数回分の効果に匹敵し、時間効率が高いという理由を述べたが、もうひとつ大きな理由がある。見学対応は、見学者の介護サービスに対する費用対効果の印象を見直していただける最後にして最大のチャンスだからなのである。
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介護福祉施設を選ぶ条件は外観や立地だけではない
介護サービスが高額か、安価かは、絶対的な価値観でいえば払えるか、払えないかで決まるので、払えないというものを覆すのは難しく、諦めざるを得ないことも多い。しかし、払えるとなった場合には、価値観は相対的なものに移行する。
つまり、同じサービスを比較して、よりコストパフォーマンスの高い方を選ぶという考え方になる。そうなった場合には、自サービスを選択してもらう可能性は大きく広がるはずである。
ところが現実にはここでも同様に、すぐに諦めてしまうケースがある。他施設と比較して費用が高いから、立地が悪いから、建物が古いから、条件が悪いので仕方がない、という諦めである。
これは、本当に諦めざるを得ない状況なのだろうか。
管理者にせよ、相談員にせよ、そのような考え方に囚われていては、確かに費用の安い、新設の、駅近の施設には勝てないだろう。
しかし、ここでそのおかしさに気付かなければならない。
なぜ、介護サービスの価値観が、外観や、立地で決められなければならないのか。
諸条件が悪かろうと、費用面で負けていようと、10万円支払っても20万円分の価値のあるサービスを受けられれば、十分に費用対効果の高いサービスを受けられたことになるのではないか。介護サービスの利用者が利用料を支払っても満足するサービスの本質とは、そこにあるのではないのか。
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利用者の期待は何か
見学対応の話題に戻ろう。
介護サービスにおける営業活動とは、数あるサービスから自施設を選んでもらうための取り組みであるが、その本質とは、費用対効果の高さを伝えることにある。同じ金額を支払ったとしても、もしくはむしろ高い費用だったとしても、得られるものは自施設の方がはるかに大きいということを伝えたいのである。
見学とは、言葉で伝えてきたそれらのことを、実際に見ていただくことで(体験利用であれば実際にサービスを受けることで)実感してもらえる最大の機会なのである。
はたして、見学対応においては、そのことを意識しながら取り組むことができているだろうか。
もし、これまでに自サービスが、お支払いする費用以上の価値があるということを伝えられていないのであれば、ただちにそれを見学で伝えていかなければならない。
では、介護サービスにおいて費用以上の価値とはどのように示すものなのか。それは単純で、「期待通りか、それを超える」サービスを行うことに他ならない。複雑なことはなにもないのである。
超えるべき「期待」とはなにか。
それは、施設に来た見学者が持っているものである。そしてそれを徹底的に確認しましょう、というのが、見学前に面談を行うということなのである。
逆に言うと、施設を見に来た方が、今何に困っていて、介護サービスを使うのに何が不安で、施設を利用するとどのような効果を期待していて、それが費用を払ってでも受けたいと思えるものなのか、などの「期待」が分からない状況では、ウチにくればそれが解決する、お金を払うだけの価値がある、と伝えることをできようがないのである。
期待を満足させられるサービスを提供できるか
見学とは、よく商品の品定めのための、ウインドウショッピングのように喩えられることがあるが、介護サービスの場合は実際にはそのように軽いものではない。
利用者となる方とその家族の人生を左右するくらいの、重要な選択肢の場面なのである。そのような場面で、高額な費用を払うだけの価値があるサービスであることを示すにはどうすればよいのか。
立地や、設備の良さをアピールすれば良いのか。それとも、今困っていることを聞き、その解決策があることを伝え、具体的なサービスとはどのようなものか、気になっているところを実際に見に行く方が良いのか。
後者の方が、見学という機会を利用して、見学者(利用者)が支払う費用以上の価値を得られることを伝え、数ある同業のサービスの中から選んでもらう可能性を広げる方策になっていることが、お分かりになっただろうか。
次回からは、営業技術の面から少し離れ、数字を含む営業管理の考え方について触れていく。やると決めたことをやりきるためには何を用いて何を確認すべきなのかを考えていく。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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