入院率の管理とは?介護現場の早期発見・早期対応で稼働率向上に繋げる
-
業種
介護福祉施設
- 種別 ホワイトペーパー
営業管理(営業に関わる数字の管理)/中編
- 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントを現場のコンサルティングの実例を踏まえお伝えする。
- 営業活動の取り組みを数字管理の側面から捉えて考える。
- 稼働率を下げる要因となる「入院率」の管理とは。
入所施設の稼働率を下げる「入院率」の管理とは
特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどの入所系介護事業所の場合、入院率に注視し管理することは非常に重要である。
入院率とは、利用者の延べ利用日数に対する入院者の入院日数の割合を指すことが多く、ここでもその意味で使用する。
これらの介護事業所においては、入院者が出るということは、居室が押さえられているにもかかわらず介護保険収入が絶たれてしまうことを意味し、場合によっては退所者が出てしまうよりもリカバリーが難しい課題となることがある(同じ入所系の介護事業所でも、サービスによっては介護老人保健施設のように「入院=契約解除」となる施設もあり、入院率のカウント自体が不要な場合もある)。
入院率を管理し、何らかの対策によって入院者数を減少させることができるようになれば、稼働率向上を含めた施設運営にとって、非常に大きなプラスとなり得るのである。
PR:問題は山積しているが、まず第一に稼働率の問題がある。
(会計事務所・コンサルタント・マーケティング会社など同業の方はお断りします)
利用者が入院することは不可避なのか
介護現場において入院率の管理は、数字を把握することはできても、減少させたり、コントロールすることは非常に難しいとされ、稼働率向上のための施策として上げられることは非常に少ない。
なぜなら、高齢利用者が入院に至ることは「仕方のないこと」として解釈されがちであるためである。
強いて言うならば骨折、褥瘡など外科的な入院は介護側の努力で防げるものとして対策を組むが、肺炎や尿路感染症などの内科的な入院に対しては毎年の数字を比較して減少させようという意欲に欠く場合が多いようである。
果たして本当に、特に内科的な入院に対して介護現場の取り組めることはなく、稼働率向上の取り組みとして時間をかけることが無駄でしかないのだろうか。
PR:大人気!「労務管理の勘所」を無料でダウンロードできます。
平均介護度4.9で2年間入院者を出さなかった特別養護老人ホーム
入所系の介護事業所における入院率の抑制は、内科系の要因のものも含めて、実は決して不可能なことではない。
実際、長野にある有名な特別養護老人ホームにおいては、30床規模ではあるが、平均介護度4.9という状況の中で2年間入院者を出さなかったという実績を持つ。それも決して偶然の産物ではなく、狙って管理をした結果であるというのだ。
果たして、そのような管理をどのようにして実現させたのであろうか。
入院率の低下につながる介護現場の取り組み
当事者に状況をうかがうと、取り組みとしては至ってシンプルだとの返答を受けた。
とにかく、早期発見・早期対応をすること、とのこと。だが、そのレベルが高いのだ。
通常であれば、バイタルの異常や言動の変化などにより介護職から看護職へ相談となるものが、もっと些細な変化(ちょっとした顔色、仕草、食欲の変化など)から異変に気づき、対応につなげているというのだ。裏を返すと、介護職員の気づきの力が高い、利用者への関心が深い結果であるとも言える。
指導や仕組みによっては、そのような介護職員を育成することが可能であるということの証左であると言えよう。
ここではスペースが足らずにそのような介護職員を育成するポイントのすべてを述べられないが、少なくとも言えることは、誰もが変化に気づきやすいよう、日々の細かなデータを比較できる仕組みを作り上げたこと、職員の成長や変化に対し過度な期待をせずに仕組みで成果が出るような形を整えた結果であると言えるのである。
利用者ごとの食事量、バイタル、排泄、言動などの情報が総合的に管理され、何をすればどの数字が変わったか、どの数字がどこに影響するのかを確認し積み上げていく先に、入院率を低下させる要因の発見があるということなのである。
稼働率に関わる数字の管理について、次回は最終回として、稼働率向上に対し重要な指標である、見学からの成約率、特定の紹介元からの紹介率などについて考察する。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。