利用者の課題からみる介護施設の「売り」
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業種
介護福祉施設
- 種別 ホワイトペーパー
介護事業所の「売り」とは
- 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントを現場のコンサルティングの実例を踏まえお伝えする。
- 営業活動を優位に行い成果につなげるための「売り」とはどのようなものであるべきかを考える。
選ばれる介護事業所が提供するサービスとは
前回は、「売り」のある介護事業所の例として、「リハビリ特化型施設」や「イベントやレクリエーションを頻繁に行っている」施設を挙げた。
確かに、そのような「売り」が充実していれば利用者にとっての付加価値は高いだろう。しかし、そのような環境を整えることは簡単なことではない。
では、そのような準備をすることのできない事業所は「売り」を明確にすることを諦めなければならないのだろうか。果たして、ここで挙げたような「売り」は本当に利用者が介護サービスを選ぶ基準の最優先に上げられるものなのだろうか。
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利用者が介護事業所に求めるもの
介護サービスとは、利用者のできないことを補助するサービスである。
そもそも、残念ながら、介護サービスの利用者は積極的に介護サービスを受けたいとは思っていない。
人は、わざわざお金を払って、自分の恥ずかしい姿をさらしてまで、他人の世話になりながら生活をしたいとは思わないものだ。
しかし、それでも介護サービスを受けるのは、自分や家族ではどうしても解決できない課題があるからである。であれば、何とか最低限、できないところだけ手伝ってもらうことで、あとは自分の力で自分の生活を続けていこうと考えているのが、介護サービスの利用者なのである。
そのような利用者に、私たち介護事業者が伝えるべきことは何だろうか。
介護は何でもやりますよ、楽しいイベントもありますよ、最新の設備が整っていますよ、と伝えることだろうか。そうではなく、あなたのお困りごとはこうですよね、うちのサービスならその部分の解決には自信がありますよ、だから安心して自分らしい暮らしを続けてくださいね、と伝えることではないのだろうか。
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施設の「売り」の本質
そのように考えると、介護サービスの「売り」とは、実現困難な高尚なサービスである必要はないことに気づくはずである。
それどころか、例えば、認知症対応に困っている、家の段差でつまずいてしまう、一人では栄養管理ができない、ベッドから起き上がれない、などの要介護者固有の課題解決が「売り」となると分かれば、私たちの施設でも十分に自信を持って取り組むことができる、と思えるのではないだろうか。
また、そこからさらに一歩発展して、自分の手で絵を描きたい、家族と暮らしたい、たまに畑の様子を見に行きたいなどの生きる目的を達成させるための支援などとなれば、テーマによってはさらに得意、自信がある、成果実績があることなどが、自事業所の職員にも十分に素養が備わっていることにも気づくはずなのである。
つまり、「売り」がない、「売り」をつくれないと考えている事業所で行うべきことは、まず介護事業所にとっての本質的な「売り」とは何かを再認識することである。
そして、「売り」の本質を理解したとき、私たちの事業所にないとは限らない、作ることができるかもしれない、ということにも気づくことではないだろうか。
少なくとも、所属する職員が何を得意とし、どのようなケアの工夫をしているかを知らずして、「売り」がないなどとは言えないことに気づくはずである。
そして、そのことに気づくことができれば、いよいよ自事業所の「売り」を見つけ、形にする取り組みにつなげていくことが容易にできるようになるのである。
次回は、これら介護事業所に必要な「売り」の本質を捉えたうえで、実際に自事業所の中から材料を集め、まとめ、外に堂々と打ち出すことのできる「売り」を作成していく方法について掘り下げていく。
特に、自事業所には「売り」がない、近隣との差別化に勝てるような要素がないと諦めかけている方にこそ、打ち出すべきことが見つかっていくような内容である。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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