組織開発コンサルティングレポートVol.007「管理職研修で一番学んだのは社長だった」
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業種
企業経営
- 種別 レポート
管理職のマインドを高める 解説
株式会社日本経営 副部長 株式会社ミライバ 取締役 / 江畑 直樹
管理職の能力開発研修で見えてきたものは何か?
ある企業で、管理職の能力開発に向けた研修を月に一回、一年がかりで行うことになりました。
第一回目のテーマは、管理職一人ひとりの気持ちに寄り添い、状況や心境を理解することです。現在抱えている気がかりや問題意識、不安について、全員から意見を挙げていただきました。
「会社」「部署」「自分」のそれぞれに対する問題意識や不安を3色の付箋に書き出してシェアをする方法を取りました。
様々な意見が挙げられましたが、その多くは全員が共感できるものでした。
代表的な意見として出てきたのは、次のようなものです。
- 役員が一枚岩になっていない
- 役員からの明確な方針が打ち出されずに困惑している
- 部署間の意思疎通と情報連携が取れていない
- リーダークラスが育っていない
- 部下を引っ張ることが難しい
- 人間関係に悩んでいる
- リーダーとしての自信が失われている
管理職全員で気がかりや問題意識をシェアして、どうであったかの感想を伺ってみると、次のような意見が出てきました。
- 自分だけじゃないことが分かった。みんな同じような苦労を抱えている
- 他の意見がなるほどと思えるものであったり、確かにと共感できるものが多かった
- 管理職は皆大きなものを引き受けていることがわかった
- このワークをやっただけで、距離が近づけた気がする、私たちは仲間だ
- 不安を吐き出せてスッキリした、とても安心した感覚になる
この第一回目の研修には、社長も参加していました。これら管理職の感想を聞いて、次のようなことを仰いました。
みんなに大変な苦労をかけていることが分かった。
この研修を通して、私がみんなのことをよく理解しなければならないことを学ばされた。本当に苦しい中、現場を支えてくれてありがとう。
これからもよろしく頼む。
私たちの心は一つだ。
この言葉に、管理職全員が心を動かされました。トップの偉大さに気づかれた様子でした。
不安と混乱に満ちた時代を生き抜くために、問われるものは何か?
VUCAワールドは、答えが見えず、過去のやり方が通用しない時代です。
VUCA(ブーカ)とは
・V:Volatility(変動性)
・U:Uncertainty(不確実性)
・C:Complexity(複雑性)
・A:Ambiguity(曖昧性)
チャレンジしては失敗を繰り返し、可能性の種を模索し続けなければなりません。現場を統括する管理職には重いプレッシャーがのしかかります。
このような状況で忘れてはならないことは、相互サポートしあえる仲間の存在です。
問題を各々が一人で抱え込んでしまうと、状況を打開する道を見いだすことが難しくなります。大変な状況にあるからこそ、みんなで状況をシェアしあい、支え合い、協力し合い、共にチャレンジすることが必要です。
管理職は組織の要です。管理職が大きなチャレンジをできるように、トップや幹部は管理職をバックアップするため、「気持ちを整える場」「関係を紡ぐ場」「コミットメントを明確にする場」などの機会を作ることが重要といえます。
VUCAに飲み込まれず、むしろ波に乗っていけるように、前を向いて一歩を踏み出せる機会を作ってみて下さい。
このレポートの解説者
江畑 直樹(えばた なおき)
株式会社日本経営 副部長 株式会社ミライバ 取締役
2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事する。約2年間にわたる医療・福祉のグループ法人への出向を含め、これまでに100以上の医療法人、社会福祉法人の支援実績を有する。
2018年に株式会社ミライバを設立し、組織の風土改革や次世代リーダーの育成、幹部・管理職の視座の向上等をテーマとする組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。
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