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競争力の差/チームパフォーマンスを高める組織強化の方法論vol.01

  • 業種 病院・診療所・歯科
    介護福祉施設
    企業経営
  • 種別 レポート

チーム力の差が競争力の差になる時代

株式会社日本経営 / 取締役 橋本 竜也

本稿は、株式会社ビジネスパブリッシング「月間人事マネジメント5月号」に「チームパフォーマンスを高める組織強化の方法論<1>チーム力の差が競争力の差になる時代」として掲載されたものです。

チームパフォーマンス重視の時代へ

 今や多くの仕事がチーム単位で動くことが主流となっている。

例えば個々のスキルに依存するイメージのある営業でさえも、情報やノウハウを共有し、連携して組織的に行動しなければ、商談の機会を失ったり、期待した成果を挙げられなかったりする。

まさに、チーム力の差が、企業競争力の差になる時代といえよう。私たちはこれまで以上にチーム力に注目し、それを高めることに力を注いでいく必要がある。

では、うまく機能しているチームでは、メンバーがどのように行動していると想像されるだろうか。

よく相談し合っている、遠慮せずに意見を言い合っている、ノウハウを共有している、切磋琢磨している、といったことかもしれない。いずれも、成果の実現に向けて、メンバーが主体的に行動している状態である。

チーム力とは、こうしたメンバーの主体的行動を最大限に引き出す力であり、それが最大限に発揮されているチームは、チームパフォーマンス(TP)が高いといえる。本連載では、TPを高めるための方法論をお伝えしていく。

TP向上のための方法論を掘り下げることが重要なのは、個人の主体的行動の総和が、単純にTPの高さにはならないからである。

このような経験はないだろうか。

「研修で動機づけたが部署に戻ったら今まで通り受け身的だった」
「1人ひとりに話を聞くと誰もが前向きだが、会議になるとみんな下を向いてしまう」
「能力の高い社員を異動させたが、異動先では力を発揮できていない」

これは、個人の行動がチームの雰囲気や関係性に影響を受けることによって起きる現象である。個人パフォーマンスの最大化に取り組んでも、それを活かすチームの土壌がなければ、結局TPは上がらない。

そのことは、これまでのHRM領域で取り組んできたコンピテンシー開発や上司部下面談、モチベーション支援等の個人アプローチの限界ともいえる。

これらはいずれも非常に有用であるが、個人の行動力をいかに高めようとも、それを発揮させるチームの土壌を開発しなければ効果が発揮できないのである。

そこで、これからの人事部門にはTPを高めるための土壌づくりをするノウハウが重要であり、この連載を通じてぜひTP開発力を高めていただきたい。

TPを発揮しきれているのは30%

 当社ではメンバーのアンケートによってTPを見える化するWebツール(NaviLight)を提供している。その結果を集約すると、TPを最大限に発揮しているチームは、およそ30%しかなく、チームマネジメントがいかに難しいかを表している

「悪くはないが、良くもない」というチームが非常に多く、そのストレスは、リーダーたる管理職が強く受けている。

「チームがまとまらない」
「部下がどこか元気がない」
「成果が上がらない」

漠然としたチームのまずさを感じながらも、どうしてよいか分からない。会社からはチームをまとめ、成果を挙げることを求められ、部下からは良き上司であることを求められる。

環境要因としては、働き方改革、価値観の多様化、人手不足などがチームマネジメントを困難にしている。まさにリーダー受難の時代である。こんな状態を放置していたら、リーダーは疲弊しきってしまう。

本人も周囲もリーダーの「前提」を変える

 リーダー受難の時代を乗り越えるために提案したいのは,リーダーに対する「前提」を変えることである。変えるべきは、リーダー自身および、組織やメンバーの期待のどちらにも共通する、具体的には以下のような前提だ。

「リーダーは答えを知っている」
「リーダーは1人で解決策を考え出すべきである」
「失敗は許されない」
「価値観を一致させなければならない」

これらの前提を改め、リーダーにだって分からないことがある、苦手なことがある、失敗することもある。このように捉え直すことが、TPの高いチーム作りにおいては重要だ。

なぜなら、上記のような前提があるとメンバーの主体性が失われるからだ。リーダーに過度に依存してしまい、チームの課題を評論家的に捉えがちになる。

成果につながる戦略がある程度明確な時代は、管理と徹底のマネジメントでメンバーを「やらせきる」ことで成果が実現できた。

しかし、今は先の見通しが立てにくいし、不測の変化も多く、市場環境も激しく動く。リーダーはメンバーの主体的行動を引き出し力を活かせなければ、成果を挙げられないだろう。

そのためには、メンバーの意識を「must(しなければならない)」から「will(したい)」に変えていく必要がある。

上記の前提を変えるというのは、メンバーのwillを引き出すために重要なのだ。

人事部門においても「やらせきるリーダー」から「引き出しきるリーダー」へ、人材像の転換が必要かもしれない。

リーダーにはメンバーの力を引き出していくことを求め、そのスキルを習得してもらう。メンバーには主体的行動の発揮を求めていく。

こうしたことにより、人事部は戦略遂行度の高い組織作りから、実力の高いチーム作りの役割を担うようになっていくだろう。

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TPを高めるカギは「自分の問題だ」という認識

 Willと主体的行動を引き出す「引き出し型のマネジメント」が目指すのは、チームに関するあらゆることを「誰かの問題」ではなく「私たちの問題」だとメンバーが捉えるようにすることである。これが、TPを高めるカギだ。

うまくいっていないチームからは、「上司が悪い」「部下がふがいない」「あの人が自分勝手だ」といった発言が出てくる。原因を自分以外に求めて「不毛な犯人探し」が行われている。

チームの状態は、誰か1人だけの影響を受けてできあがっていることなどない。メンバー全員が多かれ少なかれ影響を与えている。あえて犯人を探すのであれば、全員が共犯である。

残念ながら、人事部門が意図せずに犯人探しに加担していることもある。

ES調査で「部門の改善点があれば教えてください」「働きやすい職場にするには何があればよいですか」といった質問を入れたり、若手との面談で「上司はきちんと指導してくれますか」と聞いたりすることがその典型だ。これらの設問は、他者を前提としてしまっている。

対してTPが高いチームは「私たちの問題」と捉える。メンバーの問いは自分に向かう。

「部門をよくするために自分は何ができるだろうか」
「上司の指導を活かすためにどんな意識を持ったらいいだろうか」

つまり、「問い」がポイントになる。自分に向かう問いが主体者への気づきをもたらす。チームの課題が自分事になっていったとき、1人ひとりの主体性は高まっていく。

引き出し型のマネジメントと聞いて、「甘い」と感じた方もいるかもしれない。しかし引き出し型のマネジメントは、居心地のいいチームを作ることではない。

なぜなら「問い」が自分に向かうからである。TPの高いチームは、適度に緊張感があるチームでもあると知っておいていただきたい。

次回からは、チームの成果につながる主体的行動の具体的な内容、それらを引き出すチームの状態、その状態を生み出すための具体論について連載を重ねていく。

このレポートの解説者

橋本竜也(はしもと たつや)
株式会社 日本経営 取締役

入社以来、人事コンサルティング部門にて、一貫して病院・企業の人事制度改革に携わる。2006年には調剤薬局に出向し、収益改善と組織改革を実現。コンサルティングにおいては、人事改革、組織改革のほか、赤字病院の経営再建にも従事。2013年1月福岡オフィス長に就任。2017年10月より株式会社日本経営取締役。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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