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新しい優秀なリーダー像とは/チームパフォーマンスを高める組織強化の方法論vol.05

  • 業種 病院・診療所・歯科
    介護福祉施設
    企業経営
  • 種別 レポート

新しい優秀なリーダー像とは

株式会社日本経営 / 取締役 橋本 竜也

本稿は、株式会社ビジネスパブリッシング「月間人事マネジメント9月号」に「チームパフォーマンスを高める組織強化の方法論<5>新しい優秀なリーダー像とは」として掲載されたものです。

新しい優秀なリーダー像とは

 第1回で、「リーダーの前提を変える」必要があるとお伝えした。
その前提として、「リーダーは答えを知っている」「リーダーは1人で問題解決策を考え出すべきである」という前提を挙げた。

私たちは、新型コロナウイルスという脅威にさらされている。
4・5月には学校の閉鎖、企業活動の自粛、緊急事態宣言への対応と、次々と経験したことのない外部環境の変化に直面した。これらの危機的状況に一握りのリーダーの力だけで対応できた企業がどれほどあっただろうか。

弊社でも、現場からの提言や情報提供がなければ、急速なテレワークへの移行や顧客訪問体制の変更など実現できなかった。

そして今なお、多くの企業が経営の危機に直面している。
メンバーの力を引き出せるリーダーや主体的に行動するチームがいかに重要であるかを企業は実感しているであろうし、人事部門も、そうしたリーダーやチームの育成の必要性を認識していると思われる。

指示型リーダーから引き出し型リーダーへ

ビジネスの世界においても、前例や過去の経験では通用しない、誰もが答えや正解が分からない状況にさらされている。そのようなとき、リーダーだけが考え、適切な指示を出すというのは、そもそも無理であろう。

メンバーが事態に対して当事者意識を持ち、意見や提案が自主的に挙がる、メンバー同士がお互いに情報やノウハウを交換し合うようなチームでなければ、成果を実現できない。

リーダーとは「チームの目的・目標を設定し、メンバーの力を活かして、それを実現する者」である。いつの時代でもリーダーは成果を求められる。これは変わらない。

しかし、その手段には変化が必要だ。これまでの優秀なリーダー像は、問題解決力があり、適切な指示と徹底した進捗管理をする指示型がイメージされた。

対して、今求められているのは、メンバーの力を引き出し、1人ではできないことを実現する引き出し型のリーダーだろう。人事部門としても、引き出し型のリーダーの育成に力を注ぎたい(図表)。

図表 リーダー像は「指示型」から「引き出し型」へ

これまでこれから
経営環境ある程度予見可能で、過去の経験や成功パターンが有用。ベストプラクティスやベンチマークを多用。 予見が難しく変化も劇的。
”想定外”が頻繁に起こる。
チーム指示命令を正確かつ速やかに実行する。 一人ひとりが自分で考え、判断し、連携する。
リーダー的確な指示と命令により、戦略を徹底して実行させる。 メンバーのアイデアや意見を引き出し、チームとしてのパフォーマンスを発揮させる。

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引き出し型リーダー3つのマインドセット

 引き出し型のリーダーにとって重要なのは、対話スキルである。ただし、メンバーに「あなたの意見は?」と問えば答えてもらえるというほど話は単純ではない。

対話スキルとは、簡潔にいえば「自分のナラティブ(物語・価値観)と相手のナラティブの間に橋を架ける技術」である。その方法論は奥深く、本連載では取り上げきれないため、関連する書籍などでぜひ実践力を高めていただきたい。

こうしたスキルに加え、チームパフォーマンス(TP)を高める引き出し型のマネジメントの実践では、リーダーのマインドセットがより重要である。なぜなら、メンバーが「やりたい!」と思えるチームの雰囲気の醸成が欠かせないからである。

これはリーダーのマインドセットの影響が大きく、特に「目的志向」「前向きさ」「メンバー信頼」は重要である。

目的志向

 人は目的があって行動する。
「何のためにするのか」を納得できているほど、主体的に行動できる。だからリーダーは、自分自身の行動が常に目的志向であるべきだし、メンバーにもその目的を伝える努力をしなければならない。

日常的な指示においても同様である。
「この資料をまとめてくれ」という指示に目的があるだろうか。

私たちは多くの場面において目的を省略して、すべきことだけを伝えがちである。
TPの高いチームでは、目的確認が頻繁に行われている。リーダーはそのように仕向けていくべきであり、自分自身が目的志向であることが必要だ。

さらに、その目的はより高次のほうが、メンバーの主体的行動のレベルも上がる。

レンガ積み職人の話をご存じだろうか。レンガを積んでいる職人に何をしているかを問うと、

Aは「レンガを積んでいる」
Bは「家を作っている」
Cは「住む人の幸せを作っている」

と答えたという話だ。これほど意識が違えば、レンガの積み方も変わってくるので、目的意識が重要だという話である。

かつて、多くの日本人はB・Cを答えたが、今は、Aと逆転しているとも聞く。
では、なぜ日本人はAと答えるようになったのか。

それは、職務分担と責任の明確化が進んだ結果、自分の仕事だけをする傾向が強まったからではないか。もちろん、職務分担や責任の明確化は重要だが、本来は目的を共有したうえで進める必要がある。それがおろそかになっているとパフォーマンスは高まらない。

また、共有すべきはできる限り高次の目的が望ましい。「レンガを積んでいる」ではチームにならな い。「家を作っている」「幸せを作っている」という次元での目的共有があってこそ、職務が分担されてもチームは機能するのである。

前向きさ

 前向きさとは、物事を肯定的に捉える技術である。
エリスは、事実そのものが感情や行動に影響を与えるのではなく、その事実をどう解釈するかに影響を受けると説いた。ABC理論として有名だが、この事実の解釈の仕方を前向きにすることで、行動は変えられる。

悲観的な捉え方をした場合は、

“その反対から見てみる”
“合理的に考えを検証する”
“あえて良い面を見出す”

ということが前向きさの技術になる。よく「最悪だ」と簡単に言う人がいるが、「最悪がそうそうあるはずがない」と考え直すのが合理的な検証である。

私たちの研究では、行動を促す心理要因の「チャレンジ精神」が、チームの雰囲気に影響を受けることを明らかにしている。リーダーが事態を前向きに捉え、メンバーに発信していけば、チーム全体のチャレンジ精神を高めていくことも可能になる。

逆にいえば、リーダーがいつも悲観的、否定的、後ろ向きだと、メンバーのチャレンジ精神は失われ、行動はどんどん消極的になってしまう。

メンバー信頼

 メンバーを信頼していなければ、相手も自分を信頼してくれない。
従ってメンバーを信頼することが、引き出し型マネジメントの大前提だが、さらに重要なのは、メンバーが、“自分たちは信頼されていると感じること”である。

従来からある多くの管理手法やそのツールは、メンバーに「あなたを信じていない」というメッセージを発し続けている。

指示型マネジメントには(本当はそう思っていなかったとしても)不信を生んでしまうデメリットがある。信頼されていると実感する最も簡単な方法は、“相談”である。

TPが高いチームのリーダーは、よくメンバ ーに相談している。相談を受けた側は必要とされている実感が高まり、信頼感を持つようになるのだ。

リーダーだけがチームの雰囲気を作るわけではないが、リーダーの影響は大きい。これからのリーダーにはぜひ、上記 3 つのマインドセットを備えるよう導いていきたい。

このレポートの解説者

橋本竜也(はしもと たつや)
株式会社 日本経営 取締役

入社以来、人事コンサルティング部門にて、一貫して病院・企業の人事制度改革に携わる。2006年には調剤薬局に出向し、収益改善と組織改革を実現。コンサルティングにおいては、人事改革、組織改革のほか、赤字病院の経営再建にも従事。2013年1月福岡オフィス長に就任。2017年10月より株式会社日本経営取締役。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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