改正労働施策総合推進法が成立!ペイシェントハラスメントへの対策が義務化へ/約3分で耳ラーニング

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業種
病院・診療所・歯科
介護福祉施設
- 種別 レポート
2025年6月、カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラと呼ばれる、顧客や利用者などからの著しい迷惑行為への対策をすべての事業者に義務づける労働施策総合推進法の改正が行われました。
この法改正では、医療現場で深刻な課題となっているペイシェントハラスメント、通称ペイハラも新たに対象に含まれました。患者さんやそのご家族からのハラスメントに対して、医療機関が組織として対応することが、法律で明確に求められるようになりました。
施行は、公布日から1年6カ月以内の予定です。
職員を守るための具体的な対応が義務に
これまでのパワーハラスメント対策は、職場内の上司や同僚など、内部の関係者間での行為を対象としていましたが、今回の改正によって、対象が外部の第三者にまで広がり、患者さんやご家族の行為も含まれるようになります。これにより、医療機関には、職員を守るための具体的な対応を取ることが、法的な義務として課されることになります。
迷惑行為を見過ごすことなく、組織として対応するための体制を
厚生労働省が示した法案の要綱から、事業者に求められる措置として、4点が示されています。
まず1つ目は、「ペイハラを許さない」という方針を明確にし、それを院内掲示やウェブサイトなどを通じて、職員や患者さんに広く周知することです。2つ目は、相談に適切に対応できる体制を整えることです。相談窓口を設け、担当者を定め、さらに相談を受けたあとの対応手順をあらかじめ明確にしておくことが求められます。3つ目は、実際にハラスメントが発生した場合の対応です。事実関係をできるだけ早く正確に確認し、被害に遭った職員に対しては、産業医による面談や業務上の配慮など、必要なケアを行うことが求められます。そして4つ目は、相談した職員のプライバシーを守ることです。あわせて、相談したことを理由に不利益な扱いを受けないよう、明確なルールを定めて職員に周知する必要があります。
この法改正を受けて、医療機関には、迷惑行為を見過ごすことなく、組織として対応するための体制づくりが求められています。
職員の安心と安全を守り、質の高い医療を提供し続ける
職員がひとりで悩みを抱え込まないよう、相談しやすい環境や支援体制を整えること。さらに、迷惑行為への対応マニュアルを作成し、研修を通じてその内容をしっかり共有すること。こうした取り組みは、職員の安心と安全を守るだけでなく、今後も質の高い医療を安定して提供し続けるために重要です。
病院の人事制度・組織開発と言えば、日本経営!
今回の解説
馬渡美智(まわたり みさと)
株式会社日本経営 組織人事コンサルタント
従業員数500名規模の事業所で、総務・人事業務に従事した後、日本経営入社。労務管理体制の調査・整備業務、組織活性化支援、人事制度の導入・運用支援、管理職研修、職員研修等に従事している。自治体の医療人材の流出入に関する調査も実施。社会福祉協議会、各種団体等での講演やセミナーも多数行っている。社内においては、子育てをしながら経営コンサルタントとして働くモデル人材として活躍。社会保険労務士有資格者。
株式会社日本経営
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