民間金融機関(保証協会)の融資の特徴と融資を受けるポイント
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業種
病院・診療所・歯科
介護福祉施設
- 種別 レポート
コロナ禍における病院・クリニックの資金調達Vol.6
コロナ禍における病院・クリニックの資金調達 解説
日本経営グループ 資金調達支援センター(医療法人・社会福祉法人)
甲斐田誠一郎
資金調達の選択肢と第2次補正予算
過去の記事「医療機関の資金調達の選択肢とその特徴」で、コロナ禍における医療機関の資金調達の選択肢として、4つの選択肢をご紹介しました(福祉医療機構、日本政策金融公庫、商工中金、民間金融機関(保証協会))。
6月20日に令和2年度第2次補正予算が成立し、これにより4つの選択肢(福祉医療機構、日本政策金融公庫、商工中金、民間金融機関(保証協会))の制度内容は、より拡充されることとなりました(拡充内容を赤字にて表記しています)。各機関から制度の変更内容が発表され次第、本稿でお伝えさせていただきます。
民間金融機関(保証協会)の融資の特徴
民間金融機関(保証協会)とは、信用保証協会付きで民間金融機関から資金調達を受けることです。信用保証協会付きの場合は民間金融機関のリスクがなくなることから、融資を受けやすくなります。
医療機関の場合、対象となる法人は常用に雇用している従業員300名以下、個人の場合は100名以下となります。
融資の種類としては、「セーフティネット4号」、「セーフティネット5号」、「危機関連保証」の3種類があります。セーフティネット5号は当初、医療機関は対象外でしたが、現在は対象です。また、既に信用保証協会による保証を受けていても、今回の制度では別枠として利用することができます。
セーフティネット4号、セーフティネット5号、危機関連保証の3種類ともに、それぞれ融資の上限金額は2.8億円(無担保8,000万円)、返済期間は10年以内、金利・保証料は融資額3,000万円まではゼロ(6月20日に成立した第2次補正予算で4,000万円に拡充)、3,000万円以上は民間金融機関との協議事項となります。
セーフティネット4号・5号は併用できますが、合算で2.8億円が上限となります。したがって、セーフティネット4号・5号で2.8億円、危機関連保証で2.8億円、合計5.6億円が融資の上限金額となります。
セーフティネット4号、セーフティネット5号、危機関連保証の主な違いは、収益の減少割合と保証割合の2つです。
セーフティネット4号 | 収益の減少20%以上・保証割合100% |
セーフティネット5号 | 収益の減少5%以上・保証割合80% |
危機関連保障 | 収益の減少15%以上・保証割合100% |
収益が「5%以上15%未満減少」した場合は「保証割合80%のセーフティネット5号」、収益が「15%以上減少」した場合は「保証割合100%の危機関連保証」を優先的に利用、収益が「20%以上減少」した場合は「保証割合100%のセーフティネット5号と危機関連保証を併用」する形になってくるでしょう。
保証協会で融資を受けるポイント
保証協会で融資を受ける条件は、収益の減少に加えて、本店(個人の場合は主たる事業所)の所在地を管轄する市町村長の認定を受ける必要があります。この認定をもらうためには、要件に該当する法人が市区町村役場へ出向き、所定の用紙に記入したものに市区町村長の承認印をもらう必要があります。各市区町村で混雑具合が大きく異なることから、すぐに認定をもらえたという事例もあれば、認定まで1~2ヶ月要したという事例もあります。
認定を受けてからは、民間金融機関および各都道府県にある信用保証協会のどちらでも相談に応じてくれます。
また、都道府県独自枠の保証制度を設定している地域がありますのでご注意ください。
現在、金融庁の要請を受けて、民間金融機関は既存の借入金(プロパー融資)について、「審査なしでの3か月の条件変更、条件変更手数料の免除、事業計画は業況が落ち着いてから後の対応で可、事前連絡があって延滞する場合は信用情報機関に登録しない」等の柔軟な対応を図っています。既に取引がありますので、保証協会の融資に比べて、手続が簡便でスピードある対応を期待できます。
次の記事:「Vol.7 コロナ禍における医療機関の経営計画の査定」
このレポートの解説者
甲斐田誠一郎(かいだ せいいちろう)
株式会社 日本経営
大学卒業後、外資系コンサルティングファーム、国内金融機関にて主に金融・不動産業務に従事。その後、外資系ファンドの日本代表、東日本大震災事業者再生支援機構を経て、2014年日本経営グループに入社。入社後は、病院・介護施設の再生業務・資金調達支援業務に従事し、2019年に三井住友ファイナンス&リース、日本政策投資銀行とヘルスケアファンド(サンブルーヘルスケア)を設立、ファンド運営に従事。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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