病院・診療所の地震保険:損害補償率の低さと必要な運転資金確保
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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
各地で発生している自然災害(地震など)により被害を受けられた地域の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
病院・診療所には特有の震災リスクがありますが、現在の一般的な地震保険では、病院・診療所の備えとして課題があります。日本の地震保険そのものについての課題もさることながら、医療機関の場合は特に、通常の住宅や商業施設とは異なる特有のリスクを抱えています。患者の安全確保や医療機器の損傷防止はもちろんのこと、地震後の医療提供体制の維持が求められます。しかし、一般的な地震保険では、建物や設備の損害に対する補償は限られており、実際に病院・診療所に発生する損害額に対して十分ではないことが多いのです。
本レポートでは、病院・診療所の地震保険について課題を整理し、今後不可欠となる「新しい備えの形」についてご紹介します。
病院で3,700万円の被害、その裏にある「目に見えない損失」
2025年12月に発生した青森県東方沖を震源とする地震で、むつ総合病院にてスプリンクラー破損による浸水被害があったことが公表されました。地震発生の直後にスプリンクラーから水が噴き出し、患者も含めて「ずぶぬれ」になりながら避難させた、一部の病床が水浸しとなり、患者約40人が近くのほかの病院や診療所に移る事態となったと、報道されました。この事例は、私たちに大きな教訓を与えました。
公表された病院の被害額は12月11日時点で約3,700万円。これは天井の張り替えや医療機器の交換費用ですので、既存の地震保険で補償できる領域です。
しかし、経営にとってより深刻なのは、公表されていない「目に見えない損失(逸失利益)」のほうです。
- 入院収益の消失:病院の36名の患者様が転院。たとえ一部復旧しても、患者様が戻るまでの期間、その病床の売上はゼロになります。
- 外来機能の制限:病棟閉鎖に伴うスペース転用などで、外来収益も減少します。
- 止まらない人件費:これが最大のリスクです。売上が止まっても、医師・看護師への給与や固定費の支払いは待ってくれません。
建物が改修されるまでの数ヶ月間、病院を存続させるための「運転資金」をどう確保するか。BCP(事業継続計画)の最重要課題ですが、実効性のあるBCP計画が本当に策定されているか、現実の震災を前に不安に思われた医療機関は少なくないのではないでしょうか。
地震保険の補償率はわずか27%、日本と世界との大きな差
実は、日本の災害への備えは、世界的に見て十分とは言えません。スイス再保険のデータによると、能登半島地震が発生した2024年において、経済損失のうち保険で補償された範囲はわずか27%でした。米国(54%)や英国(71%)と比較しても、日本の補償範囲がいかに狭いかが分かります。
さらに従来の火災保険契約では、付帯された事業中断特約の制度で「事業中断による利益減少」の認定や計算が大変複雑です。そのため支払窓口での手続き負担に膨大な時間がかかり(東日本大震災では1年以上かかったケースも)、「キャッシュが必要な時に、保険金が届かない」のが現実です。これが、これまでの日本の地震保険の現実であり、加入者にとっての大きなリスクでした。
地震保険の「損害調査」から、パラメトリック型への転換
こうした背景から、現在、損害保険業界全体で大きなパラダイムシフトが起きています。
欧米と同様、「損害調査を行わず、観測されたデータ(震度など)に基づいて即座に支払う」という、パラメトリック型の仕組みが主流になりつつあります。従来の損害調査に基づく保険とは異なり、地震発生時の震度や地震の規模など、客観的なデータに基づいて迅速に保険金が支払われるので、支払いまでの時間を大幅に短縮できます。
大手損保各社も限定的にこの仕組みを導入し始めていますが、私ども株式会社日本経営リスクマネジメントがご提案する「日本BCP地震補償共済」は、まさにこの最新のトレンドを採用した、病院・診療所・介護福祉施設にとって最適な仕組みです。日本BCP地震補償共済会が設立されて以降、多数のお問い合わせを頂いております。
地震への備え「日本BCP地震補償共済」
この新たな保険の考え方は、特に地震リスクが高い地域の病院・診療所・介護福祉施設にとって欠かせない備えです。地震後の混乱期において必要な資金を速やかに受け取れることで、医療・介護サービスの復旧に集中できるからです。
日本BCP地震補償共済の補償内容など概要をご紹介します。
- 無条件加入:地域や築年数、耐震基準に関係なく、賃貸物件でも加入が可能です。
- 迅速な支払:損害調査を待つ必要がないため、速やかに共済金をお支払いします。
- 定額の補償:建物の被害状況に関わらず、気象庁が発表する「震度」に応じて定額でお支払いします。
- 使途は自由:受け取った共済金は、修繕費だけでなく、スタッフの給与など固定費や運転資金、患者様受け入れ再開までのつなぎ資金として自由にご活用いただけます。
| 支払対象 | 震度観測地点で震度6強以上を観測し損害が発生した場合 |
| 共済金額 | 1口あたり 1,000万円 |
| 共済掛金 | 1口あたり 年間掛金 30万円~40万円(一部地域を除く) |
| 共 済 金 | 震度7で共済金額の100% 、 震度6強で共済金額の50% |
日本BCP地震補償共済の特長は、従来の地震保険のように損害の程度により補償額が変動するのではなく、地震の震度や発生地点に基づいて予め定められた補償額が支払われることです(迅速な支払いが可能)。
そして日本BCP地震補償共済は、被害の有無を問わず「震度」に応じて支払われるため、通常の保険では補償されない間接的な損失、例えば営業停止による収入減少などもカバーできます。さらに、地震・津波リスクが高い地域でも、古い施設(旧耐震基準)や賃貸物件でも加入が可能なのです。
病院・診療所の地震への備えまとめ
病院や診療所は、地震などの自然災害に直面した際にも医療を止めるわけにはいきません。損害調査の結果によっては十分な補償を得られないとか、迅速に保険金を受け取れないといったリスクを軽減するためには、地震保険の補償内容を見直すとともに、地震に強い施設の設計や運営資金の確保が不可欠です。
まずは、今の保険契約内容を確認し、必要に応じて補償の見直しを行うことをお勧めします。また、「日本BCP地震補償共済」など新しい保険商品や共済制度を検討し、実際の災害時にどのような支援が受けられるのかを理解することが重要です。
万が一の事態に備えるために、今すぐ行動を起こしましょう。病院の安全を確保し、地域の医療を守るための第一歩を踏み出してください。
医療・介護施設向けの地震保険共済
このレポートの解説:株式会社日本経営リスクマネジメント
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。




