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戦略と現場を繋ぐ改善とは!?現場任せが赤字を招く!経営企画室が主導する「看護部起点」の病院改革

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

なぜ、看護部の改善が「病院経営」の最優先事項なのか

日本の病院経営はかつてない危機に瀕しています。物価高騰や人件費の増大により、全国の病院の大多数が医業収支で赤字に陥っており、これまでの「現場の気合と根性」による対応はもはや限界を迎えています。

病院スタッフの約半数を占め、人件費においても最大の割合を担う看護部門は、経営へのインパクトが最も大きい組織です。それゆえに、多くの経営層や事務方が「看護部の改善」を急務と考えていますが、実態はどうでしょうか。

「改善は現場(看護部)で考えてやっておいて」という丸投げのオーダーや、充足率などの数字だけを突きつける管理。良かれと思って行っているこれらの関わりが、実は現場の「しんどさ」とのギャップを生み、さらなる疲弊と離職を招いているケースが少なくありません。

人が減っても収益・質・やりがいを高め続けるためには、事務方が現場の「伴走者」となり、共に改革を推進する体制が不可欠です。本レポートでは、看護部と事務方の間に横たわる「認識のギャップ」を解消し、最短8ヶ月で劇的な成果を上げるための“勝ちパターン”を、成功事例を交えて解説します。

1.「現場任せ」では失敗する。改善を止める3つの誤解

病院改革が進まない背景には、経営側と現場側の「コミュニケーションギャップ」が潜んでいます。良かれと思って投げかけた言葉が、「現場への丸投げ」として受け取られているかもしれません。

ここで注目すべきは、現場の「忙しさ」を放置することで、本来得られるはずの収益をどれほど「放棄」しているかという点です。例えば、わずか15床の入院受け入れ制限が発生している場合、試算では年間約3億円もの増収機会を逃していることになります。

① サポート不足(現場丸投げ型)

「自分たちで考えて動いてほしい」という期待が、現場では「何もしてくれない」という不信感に変わります。他部門との調整や予算確保など、経営側にしかできない「障害の除去」が欠かせません

② 感情の乖離(データ偏重型)

充足率や稼働率といった数字だけで現場を追い詰めると、現場は「自分たちのしんどさを分かっていない」と心を閉ざします。数字の背景にある、業務の「ムダ」や「中断」という実態を、共に見る姿勢が必要です

③ 評価の欠如(支援不在型)

改善活動を「やって当たり前」とし、評価やインセンティブに反映させなければ、活動は一過性で終わります。経営層が関心を寄せ、予算や人員面で投資する姿勢を見せることが、継続的な文化をつくります

2. リーン生産方式を応用した「勝ちパターン」のステップ

日本経営が提唱するのは、トヨタ自動車の「リーン生産方式」を医療現場に最適化した手法です。約8ヶ月で確実な成果を出し、かつ「自走する組織」を構築するステップをご紹介します。

ステップ1:現地現物による課題の洗い出し(1ヶ月目)

まずは経営層や事務方が、1日を通して現場にムダがないかを「観察」することから始めます。

医療現場によくあるムダの例

  • ムダ①作りすぎ(数ヶ月先までの予約受入れ(または予約管理)、回しきれない複数プロジェクト、読み手を考慮しない過度な記録、定時後に集中する記録業務)
  • ムダ②待ち(折り返し電話・申し送り待ち、待ち時間中に別の業務が発生、業務中断の多発)
  • ムダ③運搬(物品をの頻回な取り出し・返却、病棟ごとに異なる収納ルール、倉庫とカートの往復)
  • ムダ④加工(院内紹介・外来受診ルールが病棟ごとに異なる、すべてが3重チェック、常に確認待ちの状態)
  • ムダ⑤在庫(山積みの備品、探すのに時間がかかる、在庫切れに気づかない)
  • ムダ⑥動作(患者情報を一覧表示できない・情報収集しにくい電子カルテ、記録を取りにステーションへ戻る)
  • ムダ⑦不良(オーダーや記録の不備、正しく伝達されない情報、確認のため繋がるまで電話する)
  • ムダ⑧スキルのミスマッチ(物品補充や管理、薬のカウント・管理・セット・投薬、運搬などの看護師免許が不要な業務に従事)

ステップ2:バリューストリームマップ(VSM)の作成(1〜2ヶ月目)

「自分たちがしんどい」ではなく、「患者さんにとって何が不具合か」という視点で業務フローを可視化します。患者視点に立つことで、職種間の壁を超えた合意形成がスムーズになります。

ステップ3:改善推進体制の構築(2~3ヶ月目)

特定の誰かに負担をかけないよう、役割を定義します。経営企画室が「事務局」として伴走する、共創型体制をここで確立します。

  • スポンサー(経営層):障害の除去、リスク管理、予算支援
  • プロセスオーナー(師長):現場の導入責任、設計・企画
  • チャンピオン(主任クラス):活動の推進役

ステップ4:3ヶ月1クールのPDCAサイクル(2〜7ヶ月目)

大きなテーマを細分化し、まずは3ヶ月で「小さな成功体験」を積みます。進捗は「赤(相談必要)」「青(順調)」の信号機方式で管理し、経営側がタイムリーに支援できる仕組みを整えます。

ステップ5:全体発表会による文化の水平展開(8ヶ月目)

看護部で出た成果を、リハビリ、薬局、事務など他部門へ波及させます。これが「病院全体の変革」への第一歩となります。

3.看護師100人で年間6,000時間の創出も可能に!改革が生む「3つの価値」

事務方が伴走する改革は、単なる精神論ではなく、圧倒的な「事実(数字)」として成果に表れます。

成果の柱具体的な成功事例(実績値)
① 経営成果の最大化【200床規模 A病院】
事務方によるデータ分析支援の結果、月10.8時間の時間外削減に成功
年間で約3,700万円相当の余力を創出
② 質の向上と安全確保【900床規模 B病院】
業務フローの徹底的な見直しにより稼働率が約5%向上
年間で約16億円の増収効果を達成
③ 職員の定着【650床規模 C病院】
ムダの徹底排除により、離職率が5.5%改善
合わせて業務の効率化が進み、
看護師100人規模の組織換算で年間約6,000時間(※)もの「本来のケア時間」を創出やりがいの向上にも直結
(※1人1日15分のムダ改善を想定した理論値)

4. まとめ:病院経営の未来は、現場との「対話」から始まる

「人が減っても続く病院」とは、職員一人ひとりが無駄な業務から解放され、専門性を発揮できる組織です。

経営企画室の役割は、現場を管理することではなく、現場と共に「ありたい姿」を描き、その実現を強力にバックアップすることにあります。まずは1時間、現場を歩き、看護師の皆さんと「キャッチボール(対話)」をすることから始めてみませんか?


個別の状況に合わせた改善手法の検討や、伴走支援のご相談も承っておりますので
お気軽にお問い合わせください

本稿の監修者

兄井 利昌(あにい としまさ)
株式会社日本経営 業務プロセス改善コンサルティング部 部長

米国認定リーンコンサルタント。これまで100床〜300床規模の病院の人事制度改革に携わる。人事制度を単なる管理のツールではなく、組織が期待する職員を引き上げ、更なる貢献を引き出す仕組みとするコンサルティングを行っている。また、研修など職員教育の領域では、それぞれの組織に合わせた研修を設計し、再現性と実効性を重視した研修を行っている。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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