令和8年度診療報酬改定を勝ち抜く収益改善シミュレーション!~多職種シェアリングと看護ICT化がもたらす「真の病院DX」~
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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
レポート要約
- 令和8年度診療報酬改定における財務インパクト:急性期病院B(10対1配置)や看護・多職種協働加算などの新しい基準へ移行することで、1病棟あたり数千万円規模の利益改善が見込める。
- ICT活用による看護配置緩和とコスト削減:見守りカメラやスマートグラス等のデジタル化により看護配置要件が緩和されるため、人員削減による大幅な人件費削減(DX投資の原資)が可能となる。
- 「DX=D×CX」の実践と業務プロセス再構築:真の病院DXを実現するには、単なるデジタル化だけでなく、リーン・マネジメント等を用いた「業務仕分け」により、多職種シェアリングなどの組織変革(CX:Corporate Transformation)を推進することが不可欠である。
2026年2月に令和8年度診療報酬改定の短冊(※ⅰ)を参考に、弊社お役立ち情報で下記レポートを公開しました。
■真の病院DX「DX=D×CX」が始まった!
~デジタルによる医療職代替を認める令和8年度診療報酬改定?~
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-organization-improvement-quality-132130/
今回は、答申も踏まえて、各病院がどのように組織変革(CX)を進めるべきかについて論考したいと思います。
多職種協働型組織への組織変革(CX)が収益向上の重要論点に!
2026年2月13日に令和8年度診療報酬改定の答申(※ⅱ)が出され、弊社のようなコンサルティング会社を含む各方面において診療報酬改定シミュレーションが実施されています。特に「急性期一般入院料1」から「急性期病院B一般入院料+看護・多職種協働加算2」へ移行した場合、入院単価は患者1人あたり1日+24点と収入が増加し、かつ看護人員配置も7対1配置から10対1配置となることから人件費負担も大きく変わります。そこで、各病院でそれぞれ移行シミュレーションが行われていると思います。
たとえば、1病棟45床で病床稼働率85%、看護配置充足率120%、看護職平均年収450万円の前提で試算した場合、純粋に10対1配置へ移行できたとすると1病棟単位の利益改善効果が約4,700万円/年となります。また、病棟が5つある225床の病院では、その5倍の約2億3,500万円/年もの改善効果が見込まれます。このように、大きなインパクトがある改定と言えるでしょう。
このシミュレーションの成果を実現するには、“少ない看護師で業務を遂行できる病棟運営ができるか?”が論点となります。まさに「看護・多職種協働加算」を算定できる多職種協働型組織に移行し、“看護業務の多職種シェアリングができるか?”が成否を分けるポイントです。
2024年に弊社お役立ち情報の下記レポート内の「PX向上のための多職種協働型組織と病院DX」という段落で、多職種協働型組織を実現するための前提としてデジタル化が必須であることをお伝えしました。多職種シェアリングという組織変革を行うには、職種間コミュニケーションを可能とするデジタル化が必要となります。
■生存戦略としての病院DX
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-finance-organization-quality-104201/
デジタル化で看護職員を代替する?
そこで、この論点に関連して冒頭で紹介したレポートの「ICT等の活用による看護業務効率化の推進」が着目されています。前述した移行シミュレーションでは看護配置充足率を120%として試算しましたが、今回の改定ではICT活用をしている場合、法定看護配置から1割の削減が認められるという大きな方針転換がありました。これをイメージ画像としてNotebookLMで生成すると、以下のようになります。
※図解:ICT活用による看護配置基準の柔軟化

そこで、以前から働き手不足でシフト作成がギリギリレベルの看護配置充足率105%の病院が、看護ICT化で95%まで許容されるようになったとします。先ほどと同じ前提条件(45床、稼働率85%、10対1配置、看護職平均年収450万円)で試算すると、約1.9人分の削減効果が見込まれ、人件費として約850万円/年の削減となります。まさに、1病棟単位で約850万円が看護ICT化の投資額目線となってきます。先ほどと同様にイメージをAIで画像化すると以下のようになります。
※図解:看護ICTの経済効果(1病棟単位)

答申や過去の中医協総会での検討(※ⅲ)を見れば、見守り・記録・情報共有に有用なICT機器等として、見守りカメラとスマートグラスの連携、チャットツールやインカムの導入などが挙げられています。デジタル化によって看護配置充足率を10%程度下げることができ、約850万円/年の削減が可能であるならば、デジタル投資を検討できる金額感だと思います。このように“ヒトをデジタルで代替する”ことが、真の狙いだと理解できます。
点数誘導で“DX”と“多職種シェアリング”を推進!
冒頭で紹介した2026年2月に公開したレポートでは、短冊の内容を踏まえて「医師事務作業補助体制加算の見直し」をもとに、“デジタル化×医療クラークへの職種転換”を軸に解説を行いました。その後、答申で具体的な点数が明らかになり、実際の人員数を前提にシミュレーションを行うと、“「急性期一般入院料1」から「急性期病院B一般入院料+看護・多職種協働加算2」への移行”や“「ICT等の活用による看護業務効率化の推進」による看護配置充足率緩和”がもたらす財務的なインパクトが際立ってきます。
弊社お役立ち情報の下記レポートのように2022年より株式会社日本経営では「DX=D×CX」(デジタル化×組織変革)と定義して、真の病院DX支援を推進してきました。
■医療DXとは?取り組み事例からみるDXの必要性と進め方
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-quality-89023/
令和8年度診療報酬改定で示されたデジタル化を条件とした医療職の人員配置基準の緩和は、まさにCX(組織変革)を伴う真のDXとなります。そして、診療報酬改定シミュレーションでの財務的なインパクトを考えると、まさにそれを政策で強固に推し進めていると言えます。
デジタル化する業務を特定し人件費換算して進める!
それでは具体的にどのように進めるべきでしょうか?前掲の「生存戦略としての病院DX」というレポートの「コスト構造変革のための事務業務の仕分と病院DX」という段落で詳述していますが、やはり“業務仕分けがカギ”になります。
病棟機能転換と看護配置充足率緩和のシミュレーションの双方において、看護職員数の削減による人件費削減効果が大きな財務的インパクトとなっています。つまり“ヒトをデジタルで代替できなければ、デジタル投資分の費用が嵩む”ということになります。これは、過去のレポートで繰り返し主張してきたように、人件費換算の投資対効果を実現しなければ、病院DXの成果であるコスト構造変革につながりません。そのため、人員削減につながる業務改善こそが重要な論点となります。
業務改善×DXが必須に!
株式会社日本経営では、リーン・マネジメントによる看護業務効率化支援を行っています。リーン・マネジメントは、1980年代にアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らによって開発されたマネジメント手法です。トヨタ生産方式の理論を取り入れ、現場の声、能力を最大限に引き出しながら、科学的なPDCAサイクルを展開していきます。リーン・マネジメントでは、まずVSM(バリューストリームマッピング)というツールで、顧客価値を可視化します。そしてVSMから逆算してワークフロー図を作成し、内部プロセスを最適化していきます。まさに、こうしたワークフロー図を作成し、業務仕分けとそれを踏まえたシステム構成図を作成して取り組むことが重要です。
■株式会社日本経営:看護部業務改善事例集(リーン・コンサルティング)
https://nkgr.co.jp/wp-content/uploads/2025/06/c0a21b1a6f5eebd93393d577e0d768aa.pdf
こうした“患者価値⇒内部プロセスを逆算して見直す”ことで、“業務プロセスを再構築し、配置人員数を最適化”させることが必要でしょう。
また、下記レポートでも考察しましたが、リーン・コンサルティングのステップは、BSC(※ⅳ)の4つの視点と酷似しています。今回は病院DXに限って論考していますが、BSCと連動することで医師を含む組織マネジメントへの展開も考えられます。
■BSCを活かした医師マネジメント
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-organization-95184/
なお、株式会社日本経営では従来独立して業務提供を行っていた「病院DX支援」と「リーン・コンサルティング」について、令和8年度診療報酬改定も踏まえ、融合して取り組むことを決めました。リーン・コンサルティングで業務分析・業務仕分けを行い、そこにデジタル化支援を組み合わせて業務プロセスを代替し、医療クラークへ職種転換(リスキリング)するなど、一体的に取り組むことで真の組織変革ができるのだと思います。まさにVUCAな時代の下でのOODAループ(※ⅴ)として、会計年度中であっても方針や組織構造を変えるスピード感が重要なのだと思います。なお、株式会社日本経営では、生成AIの進展により採用方針の抜本的な変革も進めています。このように我々も組織変革を進めています。
今回の診療報酬改定を概観すれば、病院ではさらにスピード感を持った組織変革とデジタル化で、真の病院DXを進めていくことが求められていると言えるでしょう。
Q&A 例
Q1:令和8年度の診療報酬改定において、病棟の収益向上を実現するための重要なポイントは何ですか?
A1:「多職種協働型組織」への移行と、それに伴う「看護業務の多職種シェアリング」を実現することです。看護・多職種協働加算の算定や、ICT活用による看護配置基準の緩和を経営に活かすことが求められます。
Q2:看護業務のICT化(デジタル化)を導入すると、具体的にどのような財務メリットが見込めますか?
A2:レポート内の前提条件(45床、稼働率85%、10対1配置)でのシミュレーションによれば、ICT化で看護配置充足率を105%から95%に緩和できた場合、約1.9人分の人員削減となり、年間約850万円の人件費削減効果(DX投資の原資)が見込めます。
Q3:病院DXを単なるシステム導入で終わらせず、実際のコスト削減に繋げるためには何が必要ですか?
A3:リーン・マネジメントの手法などを活用した「業務仕分け」を行い、人員削減や業務の最適化に直結させる組織変革(CX)が必要です。デジタル化と医療クラークへの職種転換などを一体的に進めることが成功のカギとなります。
「医師マネジメント専門サイト」もご活用ください
※ⅰ)中央社会保険医療協議会 総会(第644回)「総-2個別改定項目について(その1)」(2026年1月23日閲覧)年1月23日閲覧)
※ⅱ)中央社会保険医療協議会 総会(第647回)「総-1個別改定項目について」(2026年3月4日閲覧)
※ⅲ)中央社会保険医療協議会 総会(第624回)「総-7入院について(その4)」(2026年3月4日閲覧)
※ⅳ)出所:グロービス経営大学院 MBA用語集「バランスト・スコアカード(BSC)」
※ⅴ)出所:グロービス経営大学院 MBA用語集「VUCA」

本稿の執筆者
太田昇蔵(おおた しょうぞう)
株式会社日本経営 部長
【略歴】
大規模民間急性期病院の医事課を経て、2007年入社。電子カルテなど医療情報システム導入支援を経て、2012年病院経営コンサルティング部門に異動。
医師人事制度と他院ベンチマークデータ・診療科別原価計算を組み合わせて「医師マネジメントシステム」と定義し高次化。現在、医師マネジメントが特に求められる医師数の多いグループ病院・中核病院のコンサルティングを統括。
また、医療情報システム導入支援および組織人事コンサルティング経験を踏まえて、「DX=D×CX」(デジタル化×組織変革)と定義して真の病院DX支援も推進。
その他、優良病院とヘルスケアスタートアップの共創イベント『病院経営イノベーションピッチ』を発案し、その企画・運営責任者としても取り組んでいる。
・第1回病院経営イノベーションピッチ
【学位・登録】
・2005年 西南学院大学大学院経営学研究科博士前期課程修了
・2017年 グロービス経営大学院MBAコース修了
・2023年~ 総務省:経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー
【論文・寄稿】
・データドリブンアプローチのための病院DX人材育成(2025年)
・建築費高騰時代に,建て替えを実現するための病院DXの活用(2025年)
・タスクシフティングのための事務作業効率化(2020年)
・事務長は病院IT化を幹部職員育成の場に活かすべき(2014年)
・中小規模病院での組織マネジメントの脆弱性がHIS導入への障壁となる(2012年)
【講演等】
・産経新聞社主催「地域医療DX戦略フォーラム」基調講演(2026年)
・第10回JCHO地域医療総合医学会 ランチョンセミナー(2025年)
・第75回 日本病院学会 ランチョンセミナー(2025年)
以上
株式会社日本経営
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