新たなフレームワーク/チームパフォーマンスを高める組織強化の方法論vol.02
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業種
病院・診療所・歯科
介護福祉施設
企業経営
- 種別 レポート
チームパフォーマンスを測る新たなフレームワーク
株式会社日本経営 / 取締役 橋本 竜也
本稿は、株式会社ビジネスパブリッシング「月間人事マネジメント6月号」に「チームパフォーマンスを高める組織強化の方法論<2>チームパフォーマンスを測る新たなフレームワーク」として掲載されたものです。
チームパフォーマンスを何で捉えるか
100チームで開催されるサッカー大会があるとする。
Aチームは総勢50人でメンバーは全国からスカウトした優秀な選手ばかり。
Bチームは20人でメンバーは初心者も含む一般的な選手中心。
結果、Aチームはベスト16、Bチームはベスト32。
さて、どちらのチームの監督が優秀だろうか。
実績でいえばAチームが上だが、メンバーの優秀さからするともっと上に行けたはずである。Bチームはベスト32に食い込めたこと自体が大健闘だといえる。
持てる力をより発揮したのはBチームのほうではないか。
成果や実績は目に見えやすいが、必ずしもそれがリーダーの優秀さや、チーム力の高さとは限らない。成果や実績は、市場や景気、戦略などあらゆる影響を受ける。
チームマネジメントで大事なことは、そのチームが本来持っている力を最大限引き出すことである。もしチームが最大の力を発揮しても成果が出ないのであれば、それは戦略や商品性、組織構造などが悪いのかもしれないし、メンバーの限界なのかもしれない。
つまり、チームパフォーマンス(TP)を成果や業績だけで捉えようとすると、見誤る恐れがある。メンバーが「成果につながる行動をどれだけ主体的に発揮しているか」で捉える必要がある。
これは簡単ではないが、真に力のあるリーダーの見極めやチームの健全性を把握するうえで重要であり、人事部においても今後さらに重要性が高まる視点だ。
成果につながる2つの分野、8つの主体的行動
組織行動論の分野にproactive behaviorという概念がある。
Grant & Ashford(2008)は、これを「個人が自分自身や環境に影響を及ぼすような積極的行動であり、未来志向の行動」と定義した。
当社ではこうした先行研究に、コンサルティングで蓄積してきたノウハウを加え、チームの成果につながる8つの主体的行動を定義している。これらの主体的行動は、自己向上分野とチーム向上分野に大別される。
これらの行動をメンバーが高いレベルで発揮しているほど、チームとしての成果や目標達成を実現する可能性が高い。これは、読者の皆さんもイメージできるのではないだろうか。
それでは、1つひとつの行動について具体的に紹介しよう。
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自己向上分野の4つの行動
チームで仕事をしているとはいえ、ぶら下がりメンバーばかりでは、成果を実現できない。
自己向上分野は、自分の仕事をより良くしようという主体的行動である。
定義とポイントは次の通り。
1.顧客貢献行動
顧客に対して自分ができる最大限の貢献をしようとする行動。
常に意識していないと、事務的になったり、ほどほどで済ませてしまったりすることすらある。顧客を常に意識した行動ができているかがポイント。間接部門等では、従業員や取引先などが顧客と捉えられるが、部門内で顧客の定義がされていなければ、この行動は発揮されにくい。
2.最善行動
自分の仕事に全力で取り組み、最善を尽くす行動。
仕事では慣れや妥協を退け、手を抜かずに自分の仕事を高い意識でやり切っているかがポイント。
3.プロセス改善行動
仕事のプロセスをより良くするための行動。
良い結果を出すには、良いプロセスが必要であり、その進め方や段取り、効率性などに問題意識を持ち、少しでも良くなるよう改善に取り組んでいるかがポイント。
4.クリエイティブ行動
自分の仕事に新たな視点やアイデアを取り入れようとする行動。
決まった通りにただ仕事をするのではなく、情報を収集したり、アイデアを交換したりしながら、仕事をランクアップさせていこうとしているかがポイント。
ところで、医師、設計士、税理士など専門性が高い職種のチームは、明らかに「自己向上分野」の点数が高い。専門職のマネジメントの難しさともいえるが、専門職はそもそも自己向上に熱心であり、次に紹介するチーム向上分野の行動を促していけば、チームとして非常に高いパフォーマンスの発揮が期待できる。
なお、一般的なチームはチーム向上分野のほうが高いので、自己向上分野の行動を促すことがポイントになる。
チーム向上分野の4つの行動
チーム全体の力を高めそれを自分の仕事に活かしていくことで、チームは活性化し、成果につながっていく。
チーム向上分野はメンバーが当事者意識を持ってチームに関わる主体的行動である。
定義とポイントは次の通り。
1. チーム力活用行動
メンバーの力を活かしてより良い仕事をするためのコミュニケーション行動。
メンバーの強みやノウハウを自分の仕事に活かせることがチームで仕事をするメリットであり、自分の仕事を高めるポイント。
2.チーム運営向上行動
チームの運営や活動をより良くするための行動。
チームを向上させる責任は管理職や会社だけでなく、メンバー1人ひとりにもあるという意識で行動しているかがポイント。
3.メンバー支援行動
自分以外のメンバーの仕事がより良くなるために、出し惜しみせずに自ら支援や提案をする行動。
相談されれば協力するレベルではなく、周囲に関心を払い、進んで支援や提案、アドバイスをすることがポイント。特に専門職等では、自分のノウハウや情報を進んで提供することがチームを機能させるうえで非常に重要になる。
4.発信行動
自分の意見や考えをチーム内で進んで発信する行動。
ただ発言するのではなく、価値の伴った内容を提言できているか。また、たとえ反対意見があったとしても、自分の考えを偽りなく伝えられているかがポイント。
チームパフォーマンスをどう測るか
TPは、主体的行動の発揮度合で捉えるべきだが、あくまで「チームの成果につながる」主体的行動を捉える必要がある。その意味で、前述の8つの行動は、チームによって求められる成果が様々だとしても共通する、重点的な主体的行動に絞り込まれている。
TPは「行動」なので、8つの着眼でメンバーを観察すれば、ある程度の把握はできる。より数値的に把握するのであれば、アンケート調査が基本となる。
上記の各行動の定義を実践しているかを問う質問(例:「自分の仕事に他のメンバーの強みやノウハウを活か していますか?」)を作成すれば、簡易な測定は可能である。
なお、当社ではTPを手軽でありながら的確に把握できるサービスNaviLightを提供している。興味があれば試していただきたい。
チームパフォーマンスを上げていくには?
TPを上げるために行動自体を促しても、そう簡単には結果は出ない。
例えば、「もっと意見を出して」と促しても、そう簡単には発言量が増えないのは、多くの人が体験済みだろう。行動は心理要因に強い影響を受けているからである。
大事なことは、「行動したい」「行動が制限されていない」と感じることである。
先の例で言えば、「意見を言いたい」「意見を言ってもいいんだ」とメンバーが感じることである。
ここに、従来の指示・命令のマネジメントの限界がある。
TPが高いチームを作るためには、行動を引き出す心理要因のマネジメントが必要なのである。
次回は8つの行動要因に影響を与えることが検証できている9つの心理要因とそのマネジメントのポイントを紹介する。
このレポートの解説者
橋本竜也(はしもと たつや)
株式会社 日本経営 取締役
入社以来、人事コンサルティング部門にて、一貫して病院・企業の人事制度改革に携わる。2006年には調剤薬局に出向し、収益改善と組織改革を実現。コンサルティングにおいては、人事改革、組織改革のほか、赤字病院の経営再建にも従事。2013年1月福岡オフィス長に就任。2017年10月より株式会社日本経営取締役。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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